「プリンセス・マサコはこんな素晴らしいのにY染色体至上主義とは…」 ニューヨーク・タイムズも記事に

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「プリンセス・アイコはY遺伝子を持たないという理由で天皇になれない」と呆れる記事(画像は『NYタイムズ』のスクリーンショット)
「プリンセス・アイコはY染色体を持たないというだけの理由で天皇になれない」と呆れる記事(画像は『NYタイムズ』のスクリーンショット)

ご存じの方も多いと思うが、欧州ではこれから先、帝王学を最も国王や女王の近くで学んできた直系長子の王女たちが、続々と「女王」に就任する。にもかかわらず日本には、秋篠宮家の長男・悠仁さままでの皇位継承順位を「ゆるがせにしてはならない」と主張する人たちがいる。

ガチの万世一系・男系男子論に触れるたび、筆者は2つの理由から「それで国際社会から理解を得られるの?」と疑問に感じてしまう。1つ目の理由は、悠仁さまが米国の社会が嫌悪し始めたネポベイビーであること(詳しいことは、数日前の『米国の新ブーム「ネポベイビー批判」を悠仁さまはご存じか』という記事でご確認下さい)。

そして2つ目は、神武天皇以来、皇紀2600年余を万世一系でつないできたという理論を、海外の人たちは信用しているのだろうかという疑問だ。



 

■万世一系で本当に2600年以上も? 

歴史的に見ても、多くの国で皇帝や国王は常に身内や家来による謀反の不安を感じながら生きていた。実際に誘拐、拉致監禁、暗殺が起きた場合の目的は「すり替え」だが、こんなことも多々あったと考えられている。

暗殺、毒殺、島流し、誘拐、監禁などでの「すり替え」

 

病弱、病死を悟られてはなるまいと同年代の孤児を見つけてきての「すり替え」

 

唯一誕生した男児が、実は浮気による「タネ違い」

日本でも遥か昔、高御座の天皇陛下と対話する者は御簾越し、かつ頭を垂れていなければならず、直視など許されなかった。写真も存在せず、血液や遺伝子を調べる技術ももちろんない。

驚くことに明治天皇ですら「すり替わり」説が存在するといい、万系一世、Y染色体は初代・神武天皇につながっていると断言することは専門家でも難しいとのこと。今上陛下まで血がつながっていると言えるのは継体(けいたい)天皇、もしくは欽明(きんめい)天皇あたりから、という説が有力だそうだ。

 

■「プリンセス・マサコは素晴らしい。なのにY染色体の有無が重要とは…」とNYタイムズ

ニューヨーク・タイムズは、秋篠宮妃紀子さまの第3子御懐妊が発覚する少し前となる2005年12月下旬、驚くようなタイトルの記事を配信していた。

『What Japan’s Aiko Lacks: The Royal Y Chromosome(日本の皇位継承において愛子さまに欠けているもの、それはY染色体だ)』

記事は、日本の小泉純一郎首相(当時)が皇位継承に関する皇室典範改正案を国会に提出し、法案が可決されれば皇太子(当時)の長子である愛子さまが次期皇太子となり、やがて女性天皇になるという内容だった。

そのなかで彼らは、皇后雅子さまを「1993年のご結婚以来、男児を産むよう強い圧力を加えられて苦悩し、心を病み、2003 年の暮れごろから公の場に姿を現すことが難しくなってしまった」と伝えるも、「彼女はハーバード大学とオックスフォード大学で教育を受けた元外交官」とその優秀さについて強調している。

おそらくは「子供の頭の良さと人格形成は母親が重要」という社会の通説について言及したかったのだろう。一緒に過ごす時間が多い分、母親が持つ理知性や性格は、子供にしっかりと受け継がれるとよく言う。ところが、日本はY染色体の有無で皇位を決めるような国だった…これにはかなり呆れたことだろう。



 

■Y染色体は小さくて脆弱というのが世界の常識 

Y染色体にこだわることには、科学的にみてもどれほどの意味があるのだろう。近年、インターネットの検索で「Y染色体」と入力すると、候補のトップは「Y染色体 消滅」とある。ヒトをはじめ哺乳類のY染色体は、X染色体よりもはるかにサイズが小さく脆いということがわかってきたというのだ。

最初はX染色体と同じサイズで同じ遺伝子を持っていたが、進化の初期に退化が起こってしまったというY染色体。どんどん短くなり遺伝子も減って、ますます退化していけば数百万年後には消滅するという説もある。

 

■「女性」「女系」の何が悪い。英リチャード3世遺骨のDNA鑑定に協力したのは…

イギリス中部のレスターで今から10年ほど前、ある駐車場から頭部をめった刺しにされたとみられる人の遺骨が発掘され、レスター大学考古学チームはDNA鑑定の結果、それが1485年に死去した国王・リチャード3世のものだと発表した。

リチャード3世は王位に就いて2年後の「ボズワースの戦い」で惨殺され、遺骨は行方不明とされていたが、それを機にレスター大聖堂に立派な墓が建てられ、厳かなセレモニーとともに遺骨は埋葬された。やっと安らかな眠りにつくことができたのだ。

500年以上前の遺骨のDNA鑑定。それは、リチャード3世の姉からつながるという、母系の直系子孫を名乗るカナダの男性のDNAでついに合致したそうだ。女系天皇(女性天皇の子の天皇即位)に反対する方々に、この「姉」「母系」の直系子孫のDNAが決め手となったという事実を、是非とも知っていただきたいと思う。

 

■海外の王族は「産み分け」での皇位継承をおそらく蔑むだろう

さらに言えば、秋篠宮夫妻が「男女産み分け」という人為的な操作に頼って悠仁さまをご懐妊されたのであれば、自ら男尊女卑、男系男子での皇位継承論を支持したようなものだ。

ところが諸外国の王族は、宗教観もあって殆どが「妊娠は神の恵みによる神秘だ」と捉えているだろう。受精卵の選別による男女産み分けを王族たちがどう受け止めるか、そこまで考えておく必要があったように思う。

 

■まとめ

筆者は、令和の天皇皇后両陛下を心から敬愛している。それは陛下がY染色体をお持ちだからではなく、笑顔を絶やさない中にも昭和天皇が重んじた帝王学をしっかりと受け継ぎ、清廉潔白な気高さを湛え、災害が起きれば被災地を見舞い、弱っている人たちを励まし、勇気づける魔法のような力をお持ちだからだ。

そして両陛下は、徳を積み、学問に励み、国民に心を寄り添わせることの大切さを愛子さまにも説きながら、現在に至っておられるのだろう。愛子さまの立太子が叶えば、両陛下がなさっておられるように、重要なお役目をひとつひとつ丁寧にこなしてくださるだろう。その実現を願っている国民は実に多いはずだ。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)



参考および画像:
『エトセトラ・ジャパン』皇室特権フル活用の進学では国際社会に相手にされない! 米国の新ブーム「ネポベイビー批判」を悠仁さまはご存じか

『エトセトラ・ジャパン』16年前の「産み分け」疑惑はとっくに英語圏の人々に知られている 元駐日英国大使も天皇・男系男子論を徹底批判

『エトセトラ・ジャパン』「男系男子」にこだわれば日本は浮く! 海外の王室では愛子さま世代の王女が次々と女王に

『YouTube』国際日本文化研究センター ― 第2部 過去と現在の皇位継承①「前近代の皇位継承」/日文研特別公開シンポジウム『天皇と皇位継承−過去と現在の視座』

『National Geographic』リチャード3世の遺骨発見、熱狂の理由

『New York Times』 What Japan’s Aiko Lacks: The Royal Y Chromosome

『NHK WEB』平成から令和へ ― 新時代の幕開け「皇室に関する意識調査」