【皇室・都市伝説を紐解く】16年前の「産み分け」疑惑はとっくに英語圏の人々に知られている 元駐日英国大使も天皇・男系男子論を徹底批判 

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外国人記者クラブを前に「男系男子論はシェイムフルだと言い放った元駐日英国大使のヒュー・コータッツィ卿(画像は『ロゼッタストーン』のスクリーンショット)
外国人記者クラブを前に「男系男子論はシェイムフルだと言い放った元駐日英国大使のヒュー・コータッツィ卿(画像は『ロゼッタストーン』のスクリーンショット)

 

秋篠宮ご夫妻に囁かれている、「男女産み分け」の噂。欧米の人々は「産み分け」のような人為的な妊娠に良い印象を持っていないともいわれるが、秋篠宮家におけるその話が、実はかなり前から英語圏の人々に伝わっていたことをご存じだろうか。



 

■着床前診断を利用する「産み分け」

どうしても男の子がほしい、絶対に女の子でなければ困る ― そういう場合に、体外受精の形を採ることで行われる「産み分け」。いくつもの受精卵(胚)のうち、子供の性別を決める性染色体「X染色体」と「Y染色体」の数で男女を判定し、希望の性別のものを女性の子宮に移植する。着床に成功すれば、その後は自然妊娠と同様に出産を迎えることになるという。

 

■倫理面でまだ許されない産み分け

16年前も現在も、日本は「次は男の子を希望」などという理由での産み分けを認めていない。親に遺伝子変異があることで発症が予想される、先天性魚鱗癬、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、血友病ほかの重篤な病気を回避する目的だけが許されており、申請があった1つ1つのケースについて倫理委員会が慎重に審議する。

近年では、単純に「男の子(女の子)が欲しい」という願望の下、日本にある斡旋業者を通じて海外のクリニックに頼るケースも中にはある。ただし、欧米でも男女産み分けや命の安易な選択は生命倫理の面で問題視されており、ごく一部のクリニックしか請け負っていないのが現状だ。

 

■元・駐日英国大使が男系男子論を批判

日本の天皇・男系男子論を徹底的に批判し、その思いを英語圏に伝えていた元・駐日英国大使のヒュー・コータッツィ(Sir Arthur Henry Hugh Cortazzi)卿をご存じであろうか。

コータッツィ卿は1980~1984年まで駐日英国大使を務めていたなか、日本アジア協会の代表、ロンドン日本協会代表も兼ね、勲一等瑞宝章を受勲して2018年に94歳で亡くなった。日英関係と日本の歴史に関する著書を多数持ち、『ジャパンタイムズ』紙に寄稿することもあったという。

今上陛下は30年ほど前、オックスフォード大学に留学した際のご様子をまとめ、徳仁親王の名で『テムズとともに 英国の二年間』という回顧録を出版されたが、その英訳版を担当したのがコータッツィ卿だった。

 

■コータッツィ卿は批判をあらわに

2006年5月18日、当時82歳だったコータッツィ卿は、「外国人記者クラブ」こと日本外国特派員協会(FCCJ)の会見の場で、愛子さまの立太子が叶わない日本の皇位継承の在り方について質問されると、女性天皇誕生に反対する日本の一部の政治家を批判し、厳しい表情でこう発言されたという。

「小泉純一郎首相は、女性天皇に道を開く皇室典範改正案の今国会提出を断念した。これは非常に残念なことだ。」

 

「天皇における男系男子論は恥ずべきこと。現代の世界において日本のイメージを穢すことにもなる。」

(著作権について厳しい規制が設けられているため、原文となる英語はこちらでご確認いただきたい。)



 

■「産み分け」が噂になった理由

悠仁さまは「予定日よりおよそ20日早く2006年9月6日にご誕生」と報じられたため、当初の出産予定日は9月26日頃だったのだろう。そこから逆算すると、2006年5月には胎児の性別が判明するはずだ。

その時の国会は会期が6月18日までで、改正案提出の断念は、超音波検査で「胎児は本当に男の子なのか」を確認してからでも遅くなかった。なぜそんなに早く断念してしまったのだろう。

いずれも記事は削除済みだが、読売新聞、産経新聞、日刊スポーツなどは、2006年3月までに「小泉首相は皇室典範改正案の今国会提出を断念か」と伝えていた。やはり永田町には、ご懐妊早々「男の子」という噂が流れていたと考えるべきだろうか。

 

■外国人記者たちは産み分けの噂を知っていた

「The Independent」や「The Economist」などで活躍し、『外国人記者が伝えた東日本大震災 ― 雨ニモマケズ』の著書を持つアイルランド人ジャーナリストのデヴィッド・マクニール氏。悠仁様ご誕生当時、特派員として日本で活動されていた同氏も、秋篠宮家における「産み分け」の噂を英語圏の人々に伝えた一人だ。

海外メディアの特派員たちが日本に赴任して驚くのは、日本人の記者たちが皇室関係の陰口をけっこう言っているという事実だったとして、マクニール氏はこんな話を紹介していた。

「ここ半年の間に、“プリンセス・キコの妊娠は不妊治療の方法(体外受精のこと)が採られた”、“性別は誕生の数か月前から知られていた”、“アキシノの母親はじつは有名な芸能人らしい”といった話を聞いた。すべて日本人記者の口からだった。」

 

“Over the last six months, I’ve heard rumors that Prince Hisahito was conceived with the help of fertility doctors, that his sex was known months before his birth and even that his grandmother (Akishino’s mother) is a well-known entertainer—all of this from Japanese journalists.”

 

■日本の言論統制に困惑

そのマクニール氏はある日の午後8時ごろ、日本の民放情報番組から「紀子さまのご懐妊に関し、イギリスの新聞社から派遣されているジャーナリストとして、何かコメントを」と求められたことがあるという。

「英国人のほとんどは日本の皇室に関心がない」「イギリスは現在女性君主だし、日本も女性天皇でよいのでは」「21世紀にあって、まだ男系の血統にこだわるのも…」などと、マクニール氏は正直な気持ちを述べた。

さらに、上皇明仁さまが平成13年の68歳の誕生日会見で、桓武天皇の生母は百済の武寧王の子孫であると続日本紀に記されていると触れたことを思い出した彼は、こう発言した。

「天皇陛下ご自身が、“かつては韓国の血が入ったこともあった”とお話していませんでしたか?」

 

(Hadn’t the current emperor himself admitted on his 68th birthday that there was Korean blood in the imperial line?”

その瞬間にいきなりビデオカメラが切られ、「それはちょっとマズイです」とインタビュアーに話を遮られた。

その後、スタジオのディレクターからの注文だとして「英国の人々は紀子さまの妊娠を喜んでいる。興味深く見守っていきたいという感じで話をしてほしい」と指示され、従ってみたが、結局そのインタビューがオンエアされることはなかったそうだ。

外国人記者クラブの人々の間では、おそらくそんなエピソードも互いにシェアされ、語り継がれたことだろう。それぞれが「日本の言論統制はひどい」と祖国の人々に伝えたとしたら、何とも嘆かわしい話だ。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)



画像および参考:
『Wikipedia』ヒュー・コータッツィ

『ロゼッタ・ストーン』第15 回 “THE THAMES AND I” 皇太子殿下の著書を元在日英国大使が英訳

『THE FREE LIBRARY』Ex-British envoy frowns on opposition to female imperial succession.

『テレ朝news』2006年 悠仁さま誕生 皇族41年ぶりの男の子(2021/10/23)

『エトセトラ・ジャパン』皇族に関する報道規制や言論統制 外国人記者にゴシップを流す日本人記者もいるという事実

『The Asia-Pacific Journal』Still Taboo After All These Years: Japan’s New Imperial Heir and the Media