最高裁判事経験者2名が「女性天皇」推し 皇室典範改正は有識者会議の座長次第なのでは…?【後編】
『文藝春秋digital』によると、小泉政権下の2005年1月から開催された「皇室典範に関する有識者会議」で座長代理を務め、皇室典範の女系・女帝容認の改正を提言した元最高裁判所判事の園部逸夫(93歳)が今、改めて「女性天皇を認めるように」と強く訴えておられるようだ。
【前編】では、2021年に行われた「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議で、ヒアリングに協力した21名の方々がどのように考えておられるか、それぞれの回答から「女性天皇」に関する部分を抜粋して紹介してみた。【後編】では、それについて有識者会議のメンバーがどのような討論を交わし、最終報告書を作成したのか、となる。
■ヒアリングの後は有識者会議のメンバーだけで
5回にわたり各方面の専門家ら21名を対象に行われたヒアリング。そこで得られた意見は、なんと過半数となる12名が「女性天皇を容認する/そろそろ認める時期にきているのではないか/いずれは検討するべきなのでは」などと考えていることがわかった。
また「女性宮家」「男系・女系」といった性に偏りのある表現をやめ、男女に関係なく天皇の長子に継いでもらうという意見があったほか、複数名から「2005年の皇室典範改正案はとてもよいものだった。再び注目してみてはどうか」という意見が出されていた。
さらに「国民の意識そのものも変化している」とし、主権である国民に敬愛される皇室を目指すためにも、世論調査や国民の声にも目や耳を向けた方がよいとする意見が多いことも印象的だった。
これらを踏まえて、いよいよ会議は第7回へと突入。実は第1回の有識者会議において、「ヒアリングで得られた内容について討論する際は、国民にどのように受け入れられるかという視点を大切に、国民の中にある様々な考え方をしっかり認識しながら議論していきたい」といった意見がメンバーから上がっていたが、どうなることやら…。
■「皇位継承順位」に異論は許さない…?
ヒアリングで得られた意見を元に、有識者会議のメンバー同士で討論することになる第7回と第8回。そこでは予想外に活発な意見が飛び交ったようで、メンバーが男系男子論者だけではないことに不安でも覚えたのか、清家篤座長は第7回目の総括として「これからの議論を進める前提となる考え方」なるものを申し伝えた。「現在の皇位継承順位をゆるがせにしてはならない」を繰り返し、ビシッとくぎを刺したのだ。
続く第8回の有識者会議。前回の最後に、清家篤座長から「現在の皇位継承順位をゆるがせにしてはならない」と告げられたメンバーたちだが、それと女性天皇容認の検討はまた別の話だ。「できるだけ早い時期に男系女子の天皇も容認する制度を作っておくべきでは?」と考えるメンバーは複数いたようだ。
悠仁さまはあと数年で20代になられるが、皇室典範が現在のままであると「男の子を産まなければ大変なことに…」と強いプレッシャーがかかり、女性たちが悠仁さまとの結婚をためらう心配がある。悠仁さまにお子様が生まれない、あるいは女の子ばかりだった時に再びこうした会議を持てばいい、というものでもないだろう。
その第8回の会議の最後、清家篤座長は「前回までの議論をもう一度確認する」として、現在の皇位継承順位による皇位継承の流れを「ゆるがせにしてはならないということは、改めて確認された」とまたしても述べた。
何度でも繰り返された「ゆるがせにしてはならない」のフレーズ。男系女子の女性天皇論がよい感じに盛り上がると、ひょっとしたら皇位継承の流れにも影響が…と懸念しておられるのだろうか。第9回・会議では【女性皇族に婚姻後も皇室に残っていただくことについて】【皇族との養子縁組について】の2点についてのみ討論された。
■清家座長は強い口調で…
第10回の会議、議事録は非常に興味深いものだった。メンバーからは疑問、提案を含め活発な意見が出され、実りある会議にしたいという真剣さや気迫が感じられるのだ。
だが、おそらくこれも清家篤座長の発言であろう、「まず一番大切なこととして、現在の皇位の継承の流れをゆるがせにしないということ」として始まり、「男系女子の皇位継承を認める、女系の皇位継承を認める、あるいは、旧宮家の方々の皇位継承を認める、というような議論までしてきたわけではない」とピシャリ。
報告書の作成も迫っており、語調にもけっこう強いものを感じるが、そのせいか第11回と第12回の会議において「女性天皇」の話題はいっさい封印され、会議はいよいよ報告書の提出となる第13回目を迎えた。
■報告書を内閣に提出
ついに2021年(令和3年)12月22日、清家篤座長から岸田内閣総理大臣に「報告書」が手渡された。やはり「悠仁親王殿下までの皇位継承が前提」として始められた会議であり、議事録には残っているものの「小泉政権下で開催された2005年のあの有識者会議による皇室典範改正案はすばらしい。再び紐解いて検討してみたい」といった文言は、もちろんどこにも含まれない報告書となった。
ヒアリングの中では、皇位継承のルールについて悠仁親王殿下までは変えるべきでないとの意見がほとんどを占め、現時点において直ちに変更すべきとの意見は一つのみでありました。
もしもヒアリング対象者も有識者会議のメンバーと同様に「発言内容は公表しますが名前は伏せられます」としてもらえたなら、ひょっとしたら「1つのみ」では済まなかったかも…?
■注目された「2005年の皇室典範改正案」の内容
『Wikinews』を見てみると、2005年、当時の小泉純一郎首相の私的諮問機関として「皇室典範に関する有識者会議」が設けられ、同10月25日、女性天皇、および天皇家の血を引くのが母方のみという女系天皇を認めることを「全会一致で決めた」と記されている。
11月中に最終報告がまとめられ、小泉首相は2006年1月から始まる通常国会にその「皇室典範改正案」を政府として提出するつもりだった。その改正が行われると、当時の天皇の孫娘にあたる敬宮愛子内親王が父親の皇太子に次ぐ皇位継承第2位になり、愛子内親王の子供も皇位継承権をもつことになるとされた。
当時の自民党の第39代幹事長だった武部勤氏もその案に「歓迎します」とコメント。吉川弘之座長は女性天皇・女系天皇を認める理由を「後継者不足」「制度の安定」と説明し、旧皇族の復帰や養子案は排除された。
(その後、なぜ改正案の国会提出を断念せざるを得なくなってしまったのか。詳しいことはこちらのページでどうぞ。)
■【後編】のまとめ
清家座長のパワーが、あらゆる意味で強すぎたように思われる2021年の有識者会議。最初から「結論ありき」だった可能性が高いと噂されるのは、そのあたりが理由であろう。
だが、このときの会議に関わった人の多くについて、言葉の行間からは「今の日本国民は愛子さまを高く評価し、支持している」と理解していらっしゃることが伝わってくる。匿名での発言が全員に許されるなら、もっと自由闊達な意見交換があったのかもしれないとすら思う。
忘れてならないのは、成年皇族になられた愛子さまが見事な初会見を行い、ヤフーニュースのコメント欄が炎上するような秋篠宮家に関する様々な報道があったのは、その有識者会議の「後」だということ。今また同様の会議を行ったら、女性天皇容認派が倍増しているのではないだろうか。
ちなみに清家篤氏は、ここ5年ほどの間に日本私立学校振興・共済事業団理事長、慶應義塾大学客員教授、一橋大学経営協議会委員、同「社会科学の発展を考える円卓会議」委員、全国社会福祉協議会会長、中央共同募金会会長、全国老人クラブ連合会会長と驚くほど多くの立派な肩書きを得ており、なんと昨年には日本赤十字社の社長に就任された。非常にご多忙な方ゆえ、次回の有識者会議・座長は別の方にお願いされるほうがよろしいのではないかと思う。
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(朝比奈ゆかり/エトセトラ)
画像および参照:
・『内閣官房』「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議
・『Wikinews』女性・女系天皇容認へ・政府法案提出の見通し
・『エトセトラ・ジャパン』あの有識者会議、ヒアリングに協力した21名は「女性天皇」についてどう語ったのか
・『エトセトラ・ジャパン』最高裁判事経験者2名が「女性天皇」推し 皇室典範改正は有識者会議の座長次第なのでは…?【前編】
・『内閣官房』「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議「報告書」
・『エトセトラ・ジャパン』16年前の「産み分け」疑惑はとっくに英語圏の人々に知られている 元駐日英国大使も天皇・男系男子論を徹底批判