最高裁判事経験者2名が「女性天皇」推し 皇室典範改正は有識者会議の座長次第なのでは…?【前編】

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元最高御裁判所判事の園部逸夫氏は、2005年に小泉政権下で「女性天皇の容認を」と訴えた有識者会議のメンバー(画像は『文芸春秋digital』のスクリーンショット)
元最高裁判所判事の園部逸夫氏は、2005年に小泉政権下で「女性天皇の容認を」と訴えた有識者会議のメンバー(画像は『文芸春秋digital』のスクリーンショット)

秋篠宮家に長男の悠仁さまが誕生する1年以上前の、2005年1月から小泉政権下で開催された「皇室典範に関する有識者会議」。そこで座長代理を務めた元最高裁判所判事の園部逸夫(93歳)が今、改めて「女性天皇を認めるように」と強く訴えておられることを『文藝春秋digital』が紹介している。



こうなると気になるのは、園部氏を含まない6名(座長:清家篤氏)をメンバーとする、2021年(令和3年)の有識者会議がまとめた「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」だ。なぜなら、同じく元最高裁判所判事である岡部喜代子氏も、そこのヒアリングで女性天皇に道を開くよう提言しておられたからだ。

当時のヒアリングの内容や有識者会議の議事録は、PDFファイルになって『内閣官房』HPで公開されている。園部氏の話題で改めてそれを紐解いてみたところ、ふと「これは最初から結論ありきの会議だったのでは」という疑問がわいてしまった。

岸田内閣総理大臣に手渡された最終報告書には、20名を超えるヒアリング協力者の声や国民の世論に耳を傾ける必要があるとしていたメンバーたちの声が、きちんと反映されているのだろうか、と不思議に感じるのだ。

 

■2021年(令和3年)の有識者会議のメンバー

メンバーはこの6名に加え、政府側から毎回数名が出席していた。

(敬称略)
大橋 真由美  上智大学法学部教授
清家 篤    日本私立学校振興・共済事業団理事長・慶應義塾学事顧問
冨田 哲郎   東日本旅客鉄道株式会社取締役会長
中江 有里   女優・作家・歌手
細谷 雄一   慶應義塾大学法学部教授
宮崎 緑    千葉商科大学教授・国際教養学部長

 

■ヒアリングに協力した人たち

ヒアリングは5回にわたり21名が協力した(画像は『内閣官房』PDFのスクリーンショット)
ヒアリングは5回にわたり21名が協力した(画像は『内閣官房』PDFのスクリーンショット)

有識者会議の第1回において、メンバ―からは「ヒアリングを行う対象者については、法律、政治、歴史、文化、宗教、家族法などの専門家ばかりでなく、多くの女性、若者、そして一般国民の感覚を表現してくれる方からも意見を聞いた方が良い」という意見が続々と出されたとのこと。

また、そのヒアリングで得られた内容について後ほど有識者会議で討論することになるが、その際は「国民にどのように受け入れられるかという視点を大切に、国民の中にある様々な考え方を、しっかり認識しながら議論していきたい」との発言があったという。

最初から結論ありきの会議にしてほしくない、ヒアリングに協力してくれた人たちの思いを無駄にしたくない、そんな思いが伝わってくるが、最終的なヒアリングの人選は清家篤座長に一任されるということだった。



 

■有識者会議のメンバーだけは名を伏せた上で発言

議事録を見て驚いたのは、ヒアリングに協力した皆さんは実名を明らかにして発言されているというのに、有識者メンバーだけは誰が何を発言したのか全くわからないようになっていること。

ちょっと理不尽で強引な男尊女卑ともとれる発言があっても、発言者の名前が明かされていないのだ。また、会議の外での他言も無用と決まったそうだ。

 

■ヒアリング協力者の「女性天皇」に関する考え方

容認あるいは検討してもよい(〇)
否定あるいは現時点では認めない(✕)
悠仁さまがいらっしゃる現時点でそれを考えるのは控えたい(△)

※敬称略
=第2回会議=
岩井 克己 ジャーナリスト(△)
笠原 英彦 慶應義塾大学教授(〇)
櫻井 よしこ ジャーナリスト・公益財団法人国家基本問題研究所理事長(✕)
新田 均 皇學館大学教授(✕)
八木 秀次 麗澤大学教授(✕)

 

=第3回会議=
今谷 明 国際日本文化研究センター名誉教授(〇)
所 功 京都産業大学名誉教授(〇)
古川 隆久 日本大学文理学部教授(〇)
本郷 恵子 東京大学史料編纂所所長(〇)

 

=第4回会議=
岡部 喜代子 元最高裁判所判事(〇)
大石 眞 京都大学名誉教授(〇)
宍戸 常寿 東京大学教授(〇)
百地 章 国士舘大学特任教授(✕)

 

第5回会議=
君塚 直隆 関東学院大学国際文化学部教授(〇)
曽根 香奈子 公益社団法人日本青年会議所監事(✕)
橋本 有生 早稲田大学法学学術院准教授(〇)
都倉 武之 慶應義塾大学准教授(△)

 

=第6回会議=
綿矢 りさ 小説家(〇)
半井 小絵 気象予報士・女優(✕)
里中 満智子 マンガ家(〇)
松本 久史 國學院大學教授(✕)

 

これを集計すると…

容認/検討してもよいのでは(〇)=12人
否定/現時点では認めない(✕)=7人
悠仁さまがいらっしゃる現時点でそれを考えるのは控えたい(△)=2人

それぞれの方が、ヒアリングで「女性天皇」についてどのようなことを発言されたのか、発言の要点部分を抜粋してみた。1名からは、2006年の紀子さまのご懐妊において、男児の産み分けが行われていたことを思わせる発言もあったので、是非ともこちらのページでご確認を…!

 

■「」「△」も理由はいろいろ

「〇」には複数の理由が添えられていた。象徴天皇にあわせ国民主権であるとして、国民の意識の変化や世論調査などを反映させた方がよいという考え方、さらにヨーロッパの王室などをみならい、男女差別のない社会を目指した方がよいという考え方もあるようだ。

ただし、それをいつ討論するべきかということになると、今上陛下の在位中できるだけ早くという意見もあれば、悠仁さまのお子様からという意見も。また、男女にかかわらず直系長子がよいという考え方も複数名から示された。

また、「△」の方の中には、現時点では悠仁さまがいらっしゃるため、女性天皇について検討するのは悠仁さまに失礼、不遜な話だと考えるというお考えの方と、いずれ悠仁さまに皇子(男子)が生まれなかったら、そのときには男系女子の検討が必要だろうという意見の2種類があるようだ。

 

■男系男子派はどんな人たち?

男系男子にとにかくこだわる、という人たちの年齢はさまざま。そして女性も3人いるようだ。

櫻井 よしこ氏は現在77歳。百地 章氏は76歳。新田 均氏は64歳。八木 秀次氏は60歳で、松本 久史氏は50代半ば。また半井 小絵氏は50歳で曽根 香奈子氏は30代後半だ。

 

■女性3名は赤の他人ではない

公益社団法人・日本青年会議所の美人監事としてメディア露出度も高い曽根香奈子氏だが、その日本青年会議所の事業のひとつに「グローバルリーダー育成塾」がある。2014年あたりから、そこに公益財団法人・国家基本問題研究所の櫻井よしこ理事長が塾頭として就任。講師も同研究所の田久保忠衛副理事長、理事、評議員、客員研究員らが務めていたことがわかっている。

櫻井よしこ氏は日本青年会議所のグローバルリーダー育成塾の塾頭を務めてきた(画像は2015年版パンフットのスクリーンショット)
櫻井よしこ氏は日本青年会議所のグローバルリーダー育成塾の塾頭を務めてきた(画像は2015年版パンフットのスクリーンショット)

そして月刊『Hanada』編集部は2017年9月、「言論テレビ」放送5周年記念の感謝の集いで、同誌編集長、杉田水脈さん、我那覇真子さん、産経新聞記者、大高未貴さん、葛城奈海さん、半井小絵さん、鈴木くにこさん、瀬尾友子さんの“言論さくら組”が櫻井よしこ氏を囲んだことをTwitterで伝えている。

また2018年の正月には、櫻井氏主宰の「言論テレビ」チャンネルが【櫻LIVE】の第272回として、『新春特番:安倍首相に華やかさくら組が迫る! 櫻井よしこ/我那覇真子/半井小絵/田北真樹子』なる動画をYouTubeで公開していた。

さらに櫻井氏が代表となって呼びかけ、2019年には『憲法を国民の手に! 言論人フォーラム』が結成された。その6月の結成会見で司会を務めたのは半井小絵さんだ。姉御肌で面倒見もよさそうな櫻井氏。有識者会議のヒアリングで男系男子論を語ることができる女子として、櫻井氏が半井小絵さんや曽根香奈子さんを清家座長に紹介したということはないのだろうか。



■【前編】のまとめ

いつの時点で討論するべきかで意見は分かれたようだが、ヒアリングに協力しておられた21名のうち、なんと過半数の12名が「女性天皇を容認する/いつかは容認・検討するべき」などと発言していたという事実。しかも、多くの口から国民の意識を反映させたほうがよいという言葉が飛び出していた。

最初から「結論ありき」の会議だったと仮定した場合、女性天皇容認派が予想以上に多いことがわかった瞬間、会議のメンバーたちは「女性天皇容認派の気持ちをどれほど最終報告書に盛り込むことができるのか」と緊張したのではないだろうか。

次回の【後編】では、有識者会議のメンバーがヒアリングで得られた意見を受け止め、どのような発言をしたのか、そして報告書はどのようにまとめられていったのかについてとなる。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)



画像および参照:
『週刊文春digital』女性天皇を認めよ ― 文・園部逸夫(元最高裁判所判事)

『内閣官房』「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議

『Wikipedia』園部逸夫

『Wikinews』女性・女系天皇容認へ・政府法案提出の見通し

『エトセトラ・ジャパン』16年前の「産み分け」疑惑はとっくに英語圏の人々に知られている 元駐日英国大使も天皇・男系男子論を徹底批判

『公益財団法人 国家基本問題研究所』グローバルリーダー育成塾2015

『YouTube』【櫻LIVE】第272回 – 新春特番:安倍首相に華やかさくら組が迫る! 櫻井よしこ/我那覇真子/半井小絵/田北真樹子