あの有識者会議、ヒアリングに協力した21名は「女性天皇」についてどう語ったのか

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ヒアリングは5回にわたり21名が協力した(画像は『内閣官房』PDFのスクリーンショット)
ヒアリングは5回にわたり21名が協力した(画像は『内閣官房』PDFのスクリーンショット)

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する2021年の有識者会議において、5回の会議にわたり専門家らを招いて行われたヒアリング。「女性天皇」について、どのような方からどのような発言があったのか。要点部分を抜粋してみた。



■第2回会議(2021年4月8日)

岩井 克己氏(ジャーナリスト)

正統な親王がおられるのに、それを無視して内親王が継承権を持たれると、悠仁親王殿下が即位される可能性がなくなる。これは非常にいろいろな議論が出てくるだろうし、ある意味では正統性争い、あるいは疑念が残るという、非常に避けなければならない事態につながるのではないかという不安がある

 

笠原 英彦氏(慶應義塾大学教授)

皇位継承資格を男系女子まで拡大し、内親王に限り皇位継承資格を認めるべきと考える。わが国は古来、男系女子に皇位継承資格を認めてきた伝統があり、これは、古来、10 代 8 方の女性天皇が誕生しているという歴史的事実がある。逆に男系男子に限定されたのは、明治 22 年制定の明治皇室典範以降の短い期間にすぎない。

 

国民の強い要望により直系長子を最優先し、歴史上 10 代8方在位した女性天皇の先例に従い、天皇の子である内親王に皇位継承資格を認めることが想定される。憲法第 14 条の謳う男女平等にもかない、国民に分かりやすく、いわゆる帝王学を修得することが期待される。

 

櫻井 よしこ氏(ジャーナリスト・公益財団法人国家基本問題研究所理事長)

皇位継承資格について。我が国の天皇の地位は、長い歴史の中で一度の例外もなく男系が継承してきた。歴史の中では皇位継承の危機に直面したことも多々あったが、先人たちはその度に課題を解決し、男系で皇位をつないできた。

 

女系天皇を容認するとしたら、それは皇室が変質し、皇室の歴史が終焉に向かうことだと危惧する。したがって、反対である。

 

新田 均氏(皇學館大学教授)

皇統に属する男系の男子との婚姻を前提とする場合以外は皇統の断絶となるため、女性の天皇の継承は不可である。

 

祭祀が神に通じるためには、祭り主は祭神と父系で結ばれていなければならない。たとえ、天皇が祈っても父系でつながっていなければ祭祀は通じない。だからこそ、皇祖の祭り主は皇統に属する男系の男子でなければならないのである。

 

八木 秀次氏(麗澤大学教授)

皇位の継承資格については、男系継承は皇位継承の確立した原理と言える。天皇としての正統性、皇族としての正統性は、初代天皇以来の純粋な男系の血統に連なっていることにあると考える。

 

男系継承は譲り得ない皇位継承の原理であり、その安全装置としての傍系継承や傍系皇族の存在の意義を考えるべきである。

 

■第3回会議(2021年4月21日)

今谷 明氏(国際日本文化研究センター名誉教授)

内親王・女王に皇位継承資格を認めることをどのように考えるか。その場合、継承順位をどうするか。現在の私の立場は、女系は国民的な議論も必要で、すぐに慌てて結論を出すよりも、しばらく国民的な議論を続けた方がいいという立場で、いずれ悠仁様が成人されて御結婚され、あるいは、践祚、即位されて、相当の日数が経っても皇子が生まれないという段階になってからどうするかというのを決めなきゃいけないというふうに思っている。

 

しかし、その準備として、もし女系にする場合は、ヨーロッパのどういう国の先例、あるいは伝統を使うかというようなことが問題となる。ヨーロッパでも差異があるようなので研究が必要であると。やはり、ヨーロッパの王室の歴史に詳しい方を、こうしたヒアリングでお呼びになって議論された方がいいんじゃないかと私などは思う。

 

所 功氏(京都産業大学名誉教授)

男系の男子を優先して、男系の女子まで容認しておく必要がある、と考えている。現に今上陛下の次に秋篠宮様がおられ、更に悠仁様がおられるから、よほどの事態が生じない限り、2代先までは男系男子で続いていける。とはいえ、今から考えておくべきは、悠仁様が結婚されて、お子様をなされるということについての配慮である。

 

幸いにして今の規定どおりに男系男子が続けられるような男子が3代先に生まれられれば、それで良いわけである。 けれども、悠仁様の結婚相手は必ず男子の生まれる方を求めなければならないという制約の下で、果たしてそれが可能なのかどうか。

 

おそらくお妃探しは数年先に始まるとすれば、やはり当面は男系男子で行けるにせよ、3代先については、もし女子だけしかお生まれにならなくても、その方にお継ぎいただけるような余地というか、可能性を開いておかないと先が見通せないと思われる。

 

古川 隆久氏(日本大学文理学部教授)

女系天皇を認めるかどうかということだと思うが、これについて私は賛成する。皇位継承順位についても長子優先がいいと思うが、全体としてここについては、私は2005 年の有識者会議の報告書が非常によくできていると思うので、基本的にこれに賛成ということになる。

 

ただ、ルールの適用は、このルールをちゃんとやるためには皇室典範の改正が必要だと思うが、原則は皇室典範改正後に生まれた方から適用すべきだろうというふうに思う。その理由はそこにも書いたように、今、既にお生まれになっている皇族の方々は、今の制度を前提に人生設計されていると思うので。

 

ただし、ちょっとそれでは間に合わないという場合は、御本人の同意が得られたらその部分から適用するということはあり得ると考える。その後も女性天皇・女系天皇に対する国民の支持率は非常に高い。7割、8割という、7割を超えているということである。

 

本郷 恵子氏(東京大学史料編纂所所長)

内親王とか女王に皇位継承資格を認めることは、もうこれは自然な流れではないだろうか。単純にいなくなってしまうというだけではなくて、現在の社会的な状況、男女をめぐる、女性の社会進出とか、家族に対する感覚というものを考えれば、やはり女性にも皇位継承資格を認めてよろしいんではないかと。その場合に継承順位は最も分かりやすいやり方で直系長子優先というのがよろしいんじゃないかと思う。

 

皇位継承順位についても、男子がいない場合に女子がということではなくて、男女を問わず長子優先ということで考える。



 

■第4回会議(2021年5月10日)

岡部 喜代子氏(元最高裁判所判事)

女系天皇は憲法違反であるとの説を採ることができない。というのは、平成 17年の「皇室典範に関する有識者会議」報告書に記載されているとおり、「憲法において規定されている皇位の世襲の原則は、天皇の血統に属する者が皇位を継承することを定めたもので、男子や男系であることまでを求めるものではなく、女子や女系の皇族が皇位を継承することは憲法の上では可能」と考える。また、立法者の意思もそのようであったと理解している。

 

皇位継承は世襲であり、つまり、皇位継承の根拠というのは血縁ということになる。これは、血縁には原則として人智が及ばないということが求められているからである。生まれながらにして天皇になるべく決定され、その資格があるということになるわけである。そして、そのような者として育てられていく。こういうことで、世襲というものが皇位継承の正当性として認められているということになるのだと理解している。

 

そして世襲を要求されているのであれば、血の濃いほうが皇位に近いと考えるのが自然である。血の濃さという点について見れば、男女の区別はない。血の濃い女性皇族と、非常に血の薄い男性皇族を比べたとき、血の濃い女性皇族に親愛の情を抱き、また尊敬の念を持つのが国民一般の気持ちであり、これが皇位の根拠であるとすれば、そのような人が天皇になるというのは、天皇制の支持の基盤ということが言えるのではないか。

 

大石 眞氏(京都大学名誉教授)

持続的に、あるいは継続的に資格者を確保するという制度上の要請に応えるには、やっぱり皇統に属する男系男子という要件をどうするかという問題に踏み込むか、あるいはもう一つの、嫡出あるいは嫡男系嫡出という、そこに限定されている要件について考え直すほかはないということになる。

 

男系男子というところの問題、あるいは嫡出というところに踏み込まざるを得ないと思う。もちろん、この第1の要件については、従来から議論があるように、男系の女子への拡大、これは最小限の拡大になるが、もう少し広げると、およそ女系皇子孫への拡大ということが考えられる。

 

宍戸 常寿氏(東京大学教授)

一般に憲法第2条の定める世襲は女性を排除するものではないと解されている。したがって、皇室典範の改正により、内親王・女王に皇位継承資格を認めることは可能であると考える。

 

進んで、国事行為及びそれに準ずる活動は女性の天皇でも可能であり、また、日本国の象徴及び日本国民統合の象徴としての役割が、女性が天皇になることを妨げるものではないと考える。したがって、皇位継承者数が限られている現状に照らして、国家制度としての天皇制を維持する前提を採る以上、内親王・女王に皇位継承資格を認めることに賛成する。

 

百地 章氏(国士舘大学特任教授)

安定的な皇位継承をいかにして確保すべきか。この問題を考える際にはまず原理原則を明らかにすべきである。すなわち皇室の伝統と憲法を基に考察すべきであって、男系か女系かなどといった無原則な議論や思い付きからは正しい解決策は得られないと思われる。皇室の伝統は言うまでもなく男系、126 代の天皇は全て男系である。

 

■第5回会議(2021年5月31日)

君塚 直隆氏(関東学院大学国際文化学部教授)

男系男子のみに皇位継承資格を与えるということについては、それからもちろん、俗に言う臣籍降下、皇室典範第 12 条に当たるが、皇族の女性が皇族以外の男性と結婚した場合は皇室を離れなければいけないと。これはもちろん改正しなければいけない。一切廃止するべきだ。

 

内親王・女王にはもちろん皇位継承資格を認めていくべきだというふうに思っている。

 

1979 年にスウェーデンでいわゆる絶対的長子相続制、男女を問わず第一子が優先される継承法にしていこうというふうになった。実は北欧でも 20 世紀の終わりまで女性に継承権がなかった。それが 1953 年にデンマークで女性にも継承権を与えようということになり、憲法が改正され、ご存じのとおり、今現在のマルグレーテ2世女王陛下が 1972 年から即位されているわけだが、もちろん国民から絶大な信頼を寄せられている。

 

曽根 香奈子氏(公益社団法人日本青年会議所監事)

世論に頼りすぎることは、かえって不安定の原因になってしまうのではないかと思う。では、何に頼るべきなのか。私は伝統だと考えた。2000 年以上も続いてきた神武天皇以来の男系継承の伝統は、揺るぎようがないと考えている。やはり皇室にはその伝統を維持していただき、私たち国民は伝統の価値を理解できるように学んでいくというのが本筋だと考えている。

 

橋本 有生氏(早稲田大学法学学術院准教授)

内親王に皇位継承資格を認めるべきであると考えるし、国民意識の変化によっては、女系天皇の可能性も十分に論じる余地があるものと思う。まず、可否について。女性天皇は過去にも存在しており、伝統の観点からも否定されないものと思われる。

 

また、憲法において、天皇が日本国及び日本国民統合の象徴としての役割を担うとされていることに鑑みても、日本国民は男性のみによって構成されているわけではないので、女性天皇が日本国の象徴として活動することが不合理であるとは思われない。

 

次に皇位継承順位について。継承には相応の準備期間が必要であるので、その観点から、継承者はなるべく早い時期に決定されるのが望ましいと思う。したがって、長子を優先すべきと考える。

 

男系男子でそのままつないでいくということを決定した現行の皇室典範ができたときと今とでは、国民感情がかなり変わってしまっているというところに着目し、また、直系の承継というものを尊重するという考えも国民の意識の中に根強いというか、あるということを考えたときに、法律、法技術的な問題としては、例えば今、今上陛下がいらっしゃる間に皇室典範を改正するということになれば、そのままそれが効力を発生して、その時代から適用するということは、法律論としてはできるものである。

 

都倉 武之氏(慶應義塾大学准教授)

法理論上、皇位につける方が安定的に存在するようになっても、皇位につく者の正統性に疑問を生じて国論を二分し、極端に言えば、異なる天皇を担ぐ勢力が誕生したりするような事態さえ生じかねない。それが慢性化すれば、皇室に対する「国民の総意」が失われていき、さらにはその疑義も世襲されていくことで、後代では挽回し難い状況を生むことさえ考えられる。

 

内親王・女王に皇位継承資格を認めることについて。皇位継承資格を男系女子に拡大する女性天皇は、法的な条件が整えば容認に賛成であり、将来的には皇位継承を長子優先とすることも選択肢であろうと考える。

 

しかし、現行制度の下で過ごしてきた現在の皇族に適用することは、皇族本人の予見可能性などの面からも不適切で、新制度施行前の時点において現存する皇族間においては、新制度下においても男系男子が優先されるべきであると考える。

 

皇位継承資格を女系に拡大することについて。様々な可能性を想定しておくのが政治の責務であり、全ての選択肢の見通しが立たなくなってから改めて女系を容認するのでは、かえって正統性に根深い疑問を生じさせる。

 

■第6回会議(2021年6月7日)

綿矢 りさ氏(小説家)

中学生の頃、百人一首のカルタをしているとき、女性天皇である持統天皇の札を見て、女性の天皇もいらっしゃったのかと思ったことが今も強く印象に残っている。

 

国民の考えも時代により変わっていく中で、象徴としての天皇の存在を考えたときに、女性天皇の誕生を歓迎する風潮もあるかと思う。皇位継承順位に関しては、今既に決まっている継承順位を軽く扱っていいのかという意見もあると思われ、今すぐ決められる問題でもないかもしれない。

 

半井 小絵氏(気象予報士・女優)

内親王・女王が天皇陛下として皇位につかれることは前例がある。ただし、前例に従い、一代限りとして、皇位継承は候補となる男系男子がいらっしゃる場合は、男系男子を優先するということを支持する。

 

女系天皇への拡大は我が国の歴史上ないことである。日本を混乱させる原因となり、許容できないと考える。

 

里中 満智子氏(マンガ家)

女性天皇は歴史上認められてきたし、各女性天皇は立派に務めておられると思う。男系女子に皇位継承資格はあって当然だと思っている。しかし、現代において、結婚なさった場合について、その御夫君やお子様ができた場合のそれぞれのお立場についての取り決めを先にまとめておかないと、波乱を招くと思う。この問題は先に夫、子供の立場について多くの国民の理解を得られなければ、決められないことだと思っている。

 

継承順位については男系男子優先、男系男子が存在しなくなった場合を考えて、いろんなケースごとに準備をしておくことが望ましいと思っている。

 

松本 久史氏(國學院大學教授)

確かに歴史的に、この1代限りの女性皇族というものや、それから当然女帝も存在する。これは十分に認識をしている。それを排除するものではないが、現行の問題、私が考慮するにおいて、やはり現状において、男系の秋篠宮様と悠仁様がいらっしゃる中で、こういう議論を進めていくということに対する若干の抵抗があるということである。現行規定の変更については考えていない。



 

■「男児が生まれるらしい」の情報で皇室典範改正案を国会に提出できず

ヒアリングにおいては、なんと2006年の紀子さまご懐妊が、体外受精を用いた「男女産み分け」によるものだったことを想像させる発言も飛び出していた。

国会提出寸前で親王(男児)御誕生につながる御懐妊があり…という発言も(画像は『内閣官房』PDFのスクリーンショット)
国会提出寸前で親王(男児)御誕生につながる御懐妊があり…という発言も(画像は『内閣官房』PDFのスクリーンショット)

産婦人科で超音波エコー検査により行われる胎児の性別判断。自然妊娠であれば、どう考えても2006年5月になるまで「お腹の子は男児」とわかるわけないというのに、小泉首相は当時の有識者会議でまとめられた皇室典範改正案の国会提出を、遅くとも4月には断念していたという。

当時の国会の会期は6月18日まで。かなり余裕があるというのに、超音波による性別診断も待たず、なぜ早くに断念してしまったのだろう。有識者会議のヒアリングでそう発言した方に他意はないため、敢えてお名前は伏せたいと思う。

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次回の【後編】では、有識者会議のメンバーがヒアリングで得られた意見を受け止め、どのような発言をしたのか、そして報告書はどのようにまとめられていったのかについてとなる。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)



画像および参照
『内閣官房』「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議

『エトセトラ・ジャパン』16年前の「産み分け」疑惑はとっくに英語圏の人々に知られている 元駐日英国大使も天皇・男系男子論を徹底批判