【皇室、徒然なるままに】第74話:弁護士もいろいろ… 費用負担その他 裁判 Part III 西村 泰一

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物損事故を起こした件の裁判で、一審の判決に不服があった私は控訴。相変わらず弁護士を頼るでもなく、二審は東京高等裁判所で行われた。一審の判決で言い渡された損害賠償金70万円が、約50万円にまで減額されたことは嬉しかった。

そして裁判所は、訴訟費用の負担割合も決めてくださったが…。

■裁判 Part I『もしも訴えられたら』はこちらから!

■裁判 Part Ⅱ『上級審への旅立ち』はこちらから!

 

【訴訟費用の負担割合は裁判官が決める】

民事裁判の判決には、判決本文とは別に訴訟費用の負担割合が記されている。

確か一審の裁判官は、私が4割、相手方が6割で「それぞれ負担しなさい」とおっしゃっていたと思うが、二審では私が3割,相手方が7割に変わっていたと記憶している。

民事裁判というのは要するにお金のやりとりで、一審の判決で「被告は原告に150万円支払え」と書けば、なぜそうなのかを法的に説明する義務が裁判官にはある。

しかしこの「訴訟費用の負担割合」については、裁判官が自らの職権で決めてよく、なぜそういう割合にしたのかを説明する義務もない。むしろ、裁判官がこの訴訟自体を「どちらがどれだけ悪い」と見ているかを、掛け値のない形で吐露しているとも言える。

私が引き起こした物損事故で、責任は100%私にあり、原告に科は全く無く、完全な被害者である。しかし損害賠償の金額を異様につり上げ、強気で私にふっかけてきて訴訟沙汰になったという事実を裁判官は悪質だと感じ、それでこういう負担割合になったと考える。



【訴訟費用に含まれるもの】

では、弁護士費用とは別にかかる「訴訟費用」とはなんであろうか? これは「民事訴訟費用等に関する法律」により、極めて厳格に定められていることがわかった。なお弁護士費用はそこに含まれない。

例えば裁判を起こすにあたっては、訴状を提出しなければならないが、これには自分で購入して印紙を貼らなければならない。この印紙代は訴訟費用に含まれる。

それから私や原告の弁護士は、裁判所に出廷するたびに日当が払われる。たとえば訴訟費用の確定のために裁判所に赴いても日当は発生しない。一審では5回出廷し、一回あたりの日当は3,000円くらいだったと思うので、1万5千円の訴訟費用が私のほうで発生していることになる。

また、判決の文書を郵送していただく費用も訴訟費用に含まれる…ざっとこんな具合である。

判決には訴訟費用の負担割合が記載され、たとえば負担比率が私が0で相手方が10となったとすると、そういった私の側の訴訟費用も全て相手方が負担しなければいけなくなる。

判決で言い渡された損害賠償額を被告は支払う法的義務を負う。そして訴訟費用の負担割合は既に判決に明記されている。通常は双方の簡単な話し合いの末に決済が行われるというので、私もそのつもりで、裁判がすべて終わった後に相手の弁護士さんに「訴訟費用はどうしましょうか?」と尋ねた。

ところが彼は「訴訟費用ってなんのこと?」と私を小馬鹿にしたような言い方をなさる。そこで私も、それ相応の対応をさせていただくことにした。

 

訴訟費用確定処分申し立て】

それは訴訟費用確定処分の申し立てをすることであった。私は土浦の裁判所に「訴訟費用額確定処分申立書」という書類を提出。すると裁判所は判決時に示された訴訟費用の負担割合を元に、原告・被告の具体的な負担金額をそれぞれ確定してくださる。これを以て法的強制力も発生するのである。

例えば私のほうで発生した訴訟費用が5万円、相手方のほうも同額の5万円の計10万円だったとしよう。もしも裁判所が示した訴訟費用の負担割合が、私が3で相手方が7なら、私が3万円、相手方は7万円を負担することに。そこで裁判所は、相手方に2万円を私に支払うよう命じることになる。

この命令を無視すると、何と差し押さえという話になる。結局この件では、実際には相手方から私に対して1万円ちょっとの額が支払われた。めでたし、めでたしである。

 

【複雑な書類作成は読解力がないと大変!

ところで、その「訴訟費用額確定処分申立書」を提出したのは私の側だけだった。そこには詳細な計算書も含まれ、弁護士を雇わなかったことから私は自分で作成して提出した。計算方法については、前記の法律が厳格に規定しているので、それに従うだけの話である。

その申し立てが受理されると、続いては相手方も同様の計算書を提出することを求められることになる。そこで、その弁護士さんが作成にあたられたが、これがひどくメチャクチャであった。裁判所の事務の方も、両者を見比べて「これじゃ、どちらが弁護士かわかったものではありませんね」と嘆息しておられた。

計算書は最終的には裁判所の事務の方が作り直すというが、相手方の弁護士は、なぜちゃんとした計算書を作成できなかったのであろうか?

答えは簡単で、彼の読解力では前記の法律を読み解くことができなかったからである。訴訟費用については通常の民事裁判ではけっこう適当にやっているというので、おそらく彼はあの法律を読むのが初めてだったと思われる。

弁護士稼業も読解力がないと大変なのである。司法試験というのは最高の国家資格で、弁護士になると、司法書士として法務局、裁判所、検察庁などに提出する書類の作成にあたることもできる。あの弁護士さんに、そのような仕事が務まるとは到底思えなかった。



【幻の打ち上げパーティー】

裁判関連の話がすべて片付いたので、私としては打ち上げに相手方の弁護士さんと銀座あたりで一晩飲み明かし、クダクダとした愚痴を聞いてあげたいと思った。なのにその弁護士さんからメールが来て、拒絶された。

「もう二度と連絡してこないでほしい」と書いてあり、さらに、私に対する恨みつらみが書き連ねられていた。私としては、先日の試合後の井上尚弥とルイス・ネリみたいに爽やかな別れ方をしたかったのであるが、なかなかうまくいかないものである。

ちなみに所属する法律事務所のホームページで、彼はご自分で「英語と日本語のバイリンガルです」と謳っておられた。

いやはや、恐ろしい。おそらく高校あたりで英語が得意科目だったので、このように仰っているのであろうが、私は内心「バイリンガルじゃなくて、ノーリンガルじゃないの?」と思った次第である。

そういえば、裁判の最中にも変なカタカナ英語を頻発されて、裁判官の方も「はあ?」と言われておられた。困った御仁である。

 

【最初の請求金額の6分の1に】

もう一度、この損害賠償額が確定するまでの過程を振り返ろう。

最初、相手方の弁護士さんから300万円くらいの請求が来た。色々と水増しが疑われる箇所があったので質問するが、弁護士さんは「問答無用」と取り付く島もない。

そんな調子で時間だけが経過し、すると今度は「あまり時間がかかるようなら裁判で…」とおっしゃる。私としては「ご自由に」とお答えして、裁判にしてもらったのである。

まともに話し合いもできない弁護士に無駄な時間を費やすより、裁判官による公平なジャッジを頼ったほうが手っ取り早い。こちらとしても願ったりかなったりであった。

それで裁判になったが、一番驚いたのは300万円だった請求額がいきなり150万円に半減していたこと。「なんだ、弁護士さんも酷い水増しだとわかっていながら、300万円もの額をふっかけてきたわけか!」と、ただ呆れた。

これが一審の判決で70万円くらいに減り、更に二審の判決では50万円にまで減った。最初に損害賠償額として請求された300万円の、実に6分の1の額である。

 

【弁護士は正義の味方とは限らない】

この弁護士さんが所属しているのは、東京のかなり有名な法律事務所の六本木オフィスであった。代表者の方は参議院議員を1期だけなさったことがあり、その折は自民党の茂木派に所属しておられた。

ホームページには「この案件では、これだけのお金を相手に支払わせました。私たちは凄いでしょう?」といった類の自慢話が書いてある。

だが私の例から考えると、要するに「裁判にしますよ」と脅して300万円という高額の損害賠償金をふっかけ、相手からそれをせしめることに成功した、というだけの話なのである。

普通の人は裁判とか弁護士とか出されたら、それだけでビビってしまうと思う。こんなことを言うと、どこかからお叱りを受けるかもしれないが、弁護士というのはつくづく「ヤクザな稼業」だと思う。



(第75話:裁判 Part Ⅳは「後につづく者たちへのシュプレヒコール」です。ご期待ください!)

■第72話:裁判 Part I『もしも訴えられたら』はこちらから!

■第73話:裁判 Part Ⅱ『上級審への旅立ち』はこちらから!

 

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それでは第74話の締めくくりの1曲、Black Veil Bridesの『Bleeders (Official Music Video)』をどうぞ!

(理学博士:西村泰一/画像など編集:エトセトラ)

【皇室、徒然なるままに】のバックナンバーはこちらから。

【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月  洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月  京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月  筑波大学(数学)

画像および参考:
『YouTube』Black Veil Brides – Bleeders (Official Music Video)

『法令検索e-gov』昭和四十六年法律第四十号民事訴訟費用等に関する法律

『裁判所』訴訟費用額確定処分申立書 記載例

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