「科学とは何か、論文は何のためにあるのか」 トンボ相論文の一連の問題を通して、みんなで考えてみませんか? もちろん論文著者も含めて

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秋篠宮家の長男・悠仁さまによる論文『赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―』。

ご存じの通り、かれこれ3ヶ月にわたり多くの方から「トンボの学名や図の番号に誤りがある」「オス・メスの記載が正しくない」「自作自演の放虫による観察日記でしかない」「画像に捏造の疑惑がある。オリジナル画像の開示を」「こんな杜撰な論文では東大はおろか、受け入れる大学があるのか」といった疑義を唱える声があがっている。

お祖父様やお父様と同様に生物学者を目指すのであれば、あのような論文は一旦撤回し、内容の精査や修正をすみやかに行ったほうがよいと思われるが、筆頭著者である悠仁さまや宮内庁、そして国立科学博物館は問題をほぼ放置のままだ。

しかし「日本学術会議」は、科学者の行動規範について以下のように述べている。

このような知的活動を担う科学者は、学問の自由の下に、特定の権威や組織の利害から独立して自らの専門的な判断により真理を探究するという権利を享受すると共に、専門家として社会の負託に応える重大な責務を有する。特に、科学活動とその成果が広大で深遠な影響を人類に与える現代において、社会は科学者が常に倫理的な判断と行動を為すことを求めている。

(2006 年10 月3日制定、 2013年1月25日改訂)

この点を、トンボ論文の著者3名は、いかがお考えになられているのだろうか。

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『トンボ論文写真No.66「本当に7月2日の撮影ですか? 穂ばらみ期に見えますが」と農業従事者さまより』、そして『イネを熟知し、水田の生き物たちと毎日を過ごす農家さんが熱く語る! 「イネとトンボは日本の国柄です」』という記事でご紹介させていただいた長野県在住の農業従事者・MKさん。

そのMKさんは、科学への素養もお持ちとのことで、さまざまな指摘がなされているトンボ論文について、ご自身の営農経験をもとにたいへん力のこもった考察を寄せてくださった。可能な限り論理性と正確性を大切にと、論文風の書き方でまとめてくださっている。

皆様も是非ともお読みいただき、あらためて「科学とは何か。論文とは何のためにあるのか」という視点から、この一連の問題について考える拠りどころにしていただければと思う。

 

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論文『赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―』における水稲および水田に関する記述・記載の問題点

 

1.はじめに

標記論文*1は,都会の中に存在する赤坂御用地という多様な環境を持つ緑地について,棲息および飛来するトンボについての調査が継続的になされ,その結果がまとめられた価値のある論文である.その一方で,論文のサブタイトルには「多様な環境と人の手による維持管理」とある.調査地域内にある水田およびそこで育てられているイネは,トンボの生息環境として重要な位置を占めていることは確実であるが,標記論文にはそれらについての記載に著者の調査および認識の不足であろうと考えられる箇所が見受けられる.本稿ではイネの生育と水田の管理,およびトンボとの関わりについての内容について指摘する.

 

2. No.66の画像の撮影時期について

2-1. No.66のイネの生育ステージ

標記論文のNo.66 の画像(以下No.66と略称)に写った植物はイネである.葉舌と葉耳の形状がそれを示している.また,このイネは生育ステージの上では「穂ばらみ期*3 *4 *5」に当たると考えられる下記のようないくつかの特徴を持っている.

(1) 止め葉
「止め葉」とは,鞘の中から次の葉が出ていない様子を表す用語である.イネは分げつ期から幼穂形成期*3 *4 *5まで,葉の付け根の葉舌の中から次の葉を伸長させるが,出穂・開花期には葉舌から葉ではなく穂を出すことから,出てくる最後の葉,という意味で止め葉と呼ばれている(図1).外観上,止め葉の状態になるのは幼穂形成期と呼ばれる出穂の25日前頃である*5

(2) 茎のふくらみ
No.66には茎(鞘)の太さが場所によって大きく異なり,下の方が太く上に行くほど細くなっている茎がいくつか見られる.茎(鞘)の中の穂が大きく育つと,それを包む鞘が細長い紡錘形になるためである.出穂30日ほど前にはイネの穂首節が分化して,栄養成長から生殖成長へと移行する.穂首節に頴花(もみ)が分化するのは出穂25日前であり,そこから穂は葉鞘の中でだんだんに成長していく.この時期を幼穂形成期と呼ぶ*3.やがて鞘の中にある穂が長さ10cmほどに成長すると、穂を包む鞘の中央が膨らんでくる.このように,茎の太さが場所により異なることも穂ばらみ期の特徴である.

(3) もみ(頴花)
No.66の茎の中の1本からは,鞘の横が開いてもみ(頴花)と考えられるものが顔を覗かせている.また,中央に写った茎には,中にもみ(頴花)の存在を示すと思われる形が透けて見えている.これはあと数日すると穂が出る(穂ばらみ期の後期)という状態であることを示している.

(4) 茎の食害
No.66の画像中には,食害された茎が写っている.もしこの食害がニカメイチュウによるものであれば,葉や茎が広く褐変するはずであるが,それが見られないことと,側方から食害されていることから,これはクサキリのなかまによるものと考えられる*7.クサキリは幼体の間は草むらなどで生活し,出穂が近づく頃に水田にやってきてイネの茎を食害する.筆者の経験においても圃場での被害は畔際に多い.クサキリによる食害は分げつ期のイネには見られないことも合わせて,このイネの画像は穂ばらみ期,あるいは出穂直前であると考えられる.

 

2-2. 暦日上の撮影時期についての考察

No.66が撮影された2022年8月の水田の様子については,テレビ報道(テレ東BIZ)により赤坂御用地内と思われる出穂直前(1~2日前)のイネの様子が映し出されている.同じ水田の中でも場所による水温や日当たりの関係で穂の出方が数日ずれることもある.上記映像に写った田の端の方のイネの生育ステージは少しだけ遅く,「走り穂」と呼ばれる穂の出始めの状態にもあるように見える.

これらから,この水田のイネの出穂は8月7日~10日ころであっただろうと考えられる.その12日前から数日前までであるとすれば, No.66が撮影されたのは7月25日から8月3日頃であると推定される.多少の誤差を見込んだとしても,7月20日以前であるとは考えられない.

 

2-3. トンボが羽化する茎上の位置について
7月上旬以前であれば,イネは分げつ期に当たり,茎はまだ短い状態である.イネの茎は分げつ期には扇状に広がっており,No.66のように平行に上を向いてはいないのが普通である.アキアカネは水面からある程度離れた場所で羽化する.イネの分げつ期には斜めに伸びた茎より葉の出ている付近まで登ってから羽化がおこなわれる.その様子はアキアカネの羽化の様子を撮影した神戸のトンボ/No. 851. 水田で羽化するアキアカネ.2022.6.25の画像*9でも見ることができる.

対するにNo.66は,もしそこで羽化したとするならば,茎の途中まで登ったところで殻から出てきたことになる.茎が長いから葉の位置まで登らなくて済んだのだろうと考えられる.したがって,羽化であるとするならば,茎の伸びた時期,すなわち穂ばらみ期あるいはその近くのイネの姿であると結論できる.加えて,No.66のようにイネの茎がほぼ垂直に立つのは,穂ばらみ期後期の出穂より少し前の頃である.このことからもNo.66は7月下旬~8月上旬ころの撮影であろうと考えられる.

図1: イネの茎葉のつくり(模式図)
右の図で葉鞘の中の穂についてはその一部を描いてある.穂の小さいうちは外からは見えないが葉鞘が膨らんでくることで中に穂があることがわかる.出穂間際になると図のように淡く透けて見えてくる*6

 

2-4. No.66の撮影時期についての考察のまとめ

No.66が撮影されたのは杏水田とされている.上記報道が表町水田であったとしても,両水田とも同様の水管理がなされている,との記述から,イネもほぼ同じステージで生育していると考えられる.以上より,7月2日とされるNo.66の撮影日時は正しいのか疑問である.

また,同論文中のアキアカネについての記述には,

杏水田,表町水田,菖蒲池では,羽化が観察され,いずれも6月中下旬ごろで羽化期間は短いようである.7月中旬になると赤坂御用地内では成虫は見られなくなるが,9月中旬になると池に出現するようになる.

とあるが,穂ばらみ期,すなわち7月下旬から8月上旬のいずれかの時期にアキアカネの成虫が調査地内で見つかっていることになり,この記述と矛盾する.更に,この画像が仮に羽化を示すものであれば,羽化の期間が短い,との記述とも矛盾することになる.

 

3.No.66はアキアカネの羽化を示しているか

次いで,No.66の画像が記述どおり羽化を意味しているのかについて検討する.

上述の神戸のトンボ/No. 851. 水田で羽化するアキアカネ.2022.6.25の画像*9によれば,頭部の大きさについて比較すると,ヤゴは成虫の4分の3あるいは5分の4程度である.No.66に写っているヤゴの殻は,ややピントが合っていないが,それでも成虫に合ったピント位置からはそれほど奥まったところにあるとは考えられない.距離による見かけの大きさの違いは僅かであろう.このヤゴの殻は成虫と比較してたいへん小さい.とりわけ頭部で比較すると大きさの差が顕著である.

また,アキアカネのヤゴは,背中に恐竜の背中を思わせるとげがあり,腹部の左右の端にも節ごとにとげが見られる*10 *11*12はずであるのに,それらしいものは見当たらない.また,このヤゴの殻のうち,上に跳ね上がっているように見える部分が翅芽であり,下方に筒状に伸びているのが腹部であると考えられる.腹部の先についている褐色の部分は尾鰓(びさい)であろう*10 *12.これらはアオイトトンボ等の仲間のヤゴの持つからだの特徴と重なる.このことから,画像中の成虫とヤゴ殻の間には関係はなく,殻は別種のものである可能性が高い*11.その場合にはアキアカネに関する記述として「羽化」は適切でない.

また,イネの生育状態から7月末と推測されるが,時期的に論文中に6月と記された主たる羽化時期からは離れている.個体によっては時期外れに羽化するのかもしれない.さらに,神戸のトンボ/1990年代に,神戸そして兵庫県下でも激減! 最普通種のアキアカネ*13の図2によると,全ての個体が高所に移動するのではなく,周囲の林などで暮らして低地に残る成虫もいるようであるから,そういった個体が訪れた可能性もある.いずれにせよ,No.66の説明に羽化と表記することが適切であるかについては疑問であるし,成虫の見られる期間や羽化の期間についてのアキアカネについて記述した箇所にその旨記載すべきである.

一方,2016年9月6日とされるテレビ報道(KYODO NEWS/該当箇所 0:37)*14には,登熟期のイネの手前に,それより遅れた生育ステージを持つイネと思われる植物が写っている.このイネが穂ばらみ期を迎えるまでにはもうしばらく後,場合によっては9月中旬であろうと考えられる.

もし,2022年にも同様な品種や栽培時期の作付けがなされていたのであれば,そのイネの茎で高地から帰ってきた成熟した個体が翅を休めている様子を撮影した可能性もあるが,No.66のアキアカネは腹部に着色が見られないことから未成熟の個体である可能性が高いことから,秋季の撮影ではないと考えられる.

 

4.水田の水管理の記載内容について

続いて,環境について,とりわけ水田についての記述を検討する.論文には,

杏水田(図12)
2015年に造成され,面積は25 m2である.水田の中央には畦があり,2つに分かれている.2016年5月から水田として利用されている.冬季は水が入らないが,4月から10月ごろまでは湛水状態が維持される.

とある.

赤坂御用地の水田とほぼ同様の生育ステージにあると考えられる,皇居における農作業についての2022年9月のテレビ報道(ANN)*15によれば,水田で稲刈りがなされたのは9月6日であり,稲刈り作業の1週間前には落水するなどして,田面は人が支障なく歩ける程度の固さを持たせていたであろうと考えられる.刈り取ったイネ束は水に濡れているようにも,泥が付いているようにも見えない.

稲刈り時に田に水が多く残るようでは,歩きにくいうえに稲束が泥で汚れるなどして作業の妨げになり,また穂に泥がつけば収穫した米に砂が混ざるなどして品質面でも問題が生ずる.したがって,乾いた田面の上での稲刈り作業が必要である(図2).2022年の場合には,遅くとも8月末日までには落水する必要があると考えられる.

農作業の様子をテレビ報道(ANN)*16 から確認すると,陛下は水田中央の畔から一段下がった田面に降りて刈取りをされ,畔に上がられてから職員にイネ束を渡しておられる.また,畔の向こうに見える田面にも水がたまっているようには見えない.これは2019年の報道であるが,赤坂御用地も含め,他の年も水に関する水田の状況は同様であると考えられる.

更に,過去5年間に皇居で稲刈りがおこなわれたのは,報道によると,

2023年 9月 13日    https://www.youtube.com/watch?v=bTGI2_oXX0E

2022年 9月  6日    https://www.youtube.com/watch?v=4Bo7RTFAWV0

2021年 9月 22日    https://www.youtube.com/watch?v=QW5vysLJhy0

2020年 9月 15日    https://www.youtube.com/watch?v=UK-_zRvQ5kk

2019年 9月 19日    https://www.youtube.com/watch?v=SbGafimJXK8

であり,最も遅い2021年でも,1週間前の落水とすれば9月15日である.

一方,2022年8月6日撮影とされている赤坂御用地内と考えられる水田の出穂は,上述のように遅くとも8月7日ころのはずであり,イネの刈り取りの好適期は出穂後30日から45日とされていることから,9月6日から9月20日には稲刈りがなされたであろう.これより赤坂御用地内のイネの生育は皇居とほぼ同時期,あるいは1週間ほど遅れた状態であったと考えられる.ところが,論文中には10月ころまでは湛水が維持される,と記されている.この記述が正しいとすれば,赤坂御用地の水田の稲刈りの時も湛水状態は維持されていたことになる.

報道(NEWSポストセブン)*17に掲載された画像と撮影時期も,上記で検討したことがらを裏付けている.

仮に,赤坂御用地において早生・中生種とは区画を分けて晩成種のイネを育てており,10月に稲刈りをするのであれば,その区画における田植えは5月下旬またはそれ以降となるはずで,それであれば4月に湛水を始めることは考えられない.また,別の区画で品種を分けて作付けしたとしても,環境に関する記載としてひとくくりにすることは適切ではない.加えて,杏水田と表町水田で作付け品種が異なるのであれば,「同様の水管理がされている」とは書かないであろう.また,そのように生育ステージの大きく異なる品種を分けて作付け(管理)したとの記載も同論文中には見当たらない.

アキアカネについて,同論文では,「産卵は杏水田,菖蒲池と心字池のみで確認されている.」としている.アキアカネが産卵するのは9から10月頃と考えられるが,その時水田は落水された状態のはずであり,アキアカネは足跡にたまった水や湿った田面に産卵する様子が見られるだろうと思われる.産卵を確認したのであるから,田面の様子にも気づくはずだと思われるが,そのとき湛水されていたのだろうか.あるいは雨などで水が溜まっていたのかもしれないが,その場合であっても「湛水が維持される」との表現は正しくない.

図2; 湛水管理(6月初旬, 分げつ初期)と落水後(9月中旬, 稲刈り)の圃

 

5.環境としての水田について

この論文のサブタイトルに「多様な環境と人の手による維持管理」とある.論文中に,人の手による管理についての記述があるのは,次の箇所である(原文のまま引用する).

10. 表町池(図 11)
表町池は秋篠宮邸の南側にある池である.2021年から 2022 年にかけて浚渫工事が行われたため,2021 年秋までの環境を記す.
11. 杏水田(図 12)
2015 年に造成され,面積は 25 m2 である.水田の中央には畦があり,2 つに分かれている.2016 年 5 月から水田として利用されている.冬季は水が入らないが,4 月から 10 月ごろまでは湛水状態が維持される.
12. 表町水田(図 13)
水田の広さは 100 m2 ほどで 2020 年に造成され,2021 年 5 月から水田として利用されている.南側にはカエデ類の枝が水田上に伸びており,夏は薄暗くなっている.杏水田と同様の水管理がされている.
13. なまず池(図 14)
なまず池は,1990 年に造成され,水深約 1 m,約 10 m2 の広さである.2000 年から 2016年までは手入れはされず,オオカナダモが繁茂していた.2017 年に池の水を抜き,その後2019 年までに雨水にまかせた水管理になっていた.

これらの「環境」についての記載によると,池については浚渫工事以外にほとんど手が加えられていない状態にあったことがわかる.一方,水田については水管理が記載されている.したがって,ほぼ恒常的に維持管理がなされていた唯一の環境は水田である,ということができる.

御用地に限らず,日本国内に存在する「水田」は人の手による維持管理が必要となる最たる存在であり,様々な農作業や管理が施されている場所である.またそれは,人里,あるいは里山という環境を作り出し,古くよりそれが維持・継承されてきた環境でもある.また,トンボの中でもとりわけアキアカネは,人のイネづくりという営みに適応して,古来より水田とともに棲息・繁栄してきた種であるとされている.

したがって,この論文のサブタイトルが「人の手による維持管理」であるのならば,水田の管理についての期間(時期)を表す数値について上述のような誤り,または説明の不足があることは,このサブタイトルに関して論考するためには大きな問題となっていることを指摘しておく.

 

6.結論

(1) No.66の画像のキャプションに記載された撮影日は,誤記または誤認である可能性が高い.

(2) No.66の画像中のアキアカネについてなされた「羽化」との記載は正しくない可能性が高い.

(3) 杏水田と表町水田が「10月ころまで湛水状態が維持される」というのは正しくない可能性が高い.

(4) 以上から,同調査地域の水田についてはトンボ類の観察が様々な季節に継続的に観察されてはいなかった可能性が高い.

 

7.おわりに

標記論文中,「おわりに」の項には,

また,これらの環境の多くは野放しにされてきたわけではなく,人為的に管理されているものである.人の手が適度に加わって管理されてきたことが,トンボ類の種の多様性の維持に良い方向で影響を与えてきたことも示唆される.ただし,この点については現時点では科学的な評価はむずかしいものと思われる.

(以上,原文のまま引用)と記されている.

「科学的な評価は難しい」ということは,人の手による維持管理がトンボの多様性や維持に影響することが,少なくともこの研究からは明らかにすることができなかったことを示している.それならば,「人の手による維持管理」という文言をサブタイトルに掲げることは適切と言えるだろうか.

仮に全ての種について説明できなかったとしても,水田であれば,ましてや調査期間内に新たに水田としての役割を担うようになったのであれば,そこに新たに棲みついた種もあるはずである.実際に,そのように記載もなされている.水田が2年目に入れば,ふ化したり新たに訪れる種もいるであろうし,そこで定着していく種があれば,それこそ「人の手による維持管理」についてわずかなりとも論じることができる好適な調査対象となるのではないか.

であるにも関わらず,重要な環境の要素である水管理,および管理のために重要な指標となるイネの生育ステージについての誤認ともいうべき記載内容があることは,水田環境についての継続調査がなされていなかった可能性を示唆している.もしそうであったとすれば,それはたいへん残念なことである.

近年アキアカネの数が激減*9とも評されるほど減少していることについての報告や指摘が各所でなされている.これは筆者も水田の現場において実感してきているところである.これは農業や環境を取り巻く大きな問題の一つであろう.そのような昨今の状況の中にあって,標記論文を読むに当たり,読者が,現在の日本の農業や環境そして文化について,より正しく深い知見と理解を得ていただくことを願うものである.

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皆様は、いかがお感じになられたであろうか。

 

もしかすると、悠仁さまはどこに問題があるのかを把握できていらっしゃらないのかもしれない。あるいは「研究者の指摘以外、聞く耳を持つ必要はない」とお考えなのかもしれない。

しかしMKさんは、いち農業従事者としてのお立場を取られながらも「研究とは真実の追究であり、科学の進歩に寄与する営みであるべきです」として、これほどまでに倫理的で真剣な考察を論文の形式でまとめてくださった。こうした事実を、悠仁さまが真摯に受け止めて下さることを願うばかりである。

(画像編集など:朝比奈ゆかり/エトセトラ)

 

引用文献・参考となる諸事項(本文中の*も)

1)赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―, 秋篠宮悠仁, 飯島 健, 清 拓哉, 2023, Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. A, 49(4), pp. 129–153
https://www.kahaku.go.jp/research/publication/zoology/download/49_4/L_BNMNS_49-4_129.pdf

2)筆者の営農経験

3)庄内・高橋式 イネの生育診断と多収栽培, 高橋保一, 1986, 農山漁村文化協会

4)痛快イネつくり, 井原豊, 1985, 農山漁村文化協会

5)ルーラル電子図書館 穂ばらみ期, 農業技術事典, 農研機構
https://lib.ruralnet.or.jp/nrpd/#koumoku=14943

6)岩船まいすたあ塾テキスト, 水稲栽培の基礎知識, 新潟県関川村役場
http://www.vill.sekikawa.niigata.jp/file/info/norinkanko/umai-kome/maisutajuku-text/iwafune-maisutajuku-text_p1-37.pdf

7) イネの害虫, 奈良県農業開発センター
https://www.pref.nara.jp/16220.htm

8)テレ東 BIZ/宮内庁が初めて音声入り誕生日映像 悠仁さま 16 歳に【皇室ちょっといい話】(70)(2022年9月6日)
https://www.youtube.com/watch?v=L_fImt4xiMg

9)神戸のトンボ/No. 851. 水田で羽化するアキアカネ.2022.6.25.
https://odonata.jp/news/2022/06/25/no-851-%E3%82%A2%E3%82%AD%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%8D%E3%81%8C%E6%B0%B4%E7%94%B0%E3%81%A7%E7%BE%BD%E5%8C%96%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F%EF%BC%8E2022-6-25/

10) yagopedia/図鑑
https://yagopedia.com/idtfy_pic.php

11)エトセトラジャパン/論文写真 No.66 アキアカネのヤゴは全くの別物 腹の先端の穴は内臓を取り出した跡か
https://etcetera-japan.com/photo-55-on-hisahitos-paper-has-many-strange-points

12)神戸のトンボ/小学校高学年・中学生のページ目次/幼虫(ヤゴ)の生活
https://www.odonata.jp/07jhs/larvae/index.html

13)1990 年代に,神戸そして兵庫県下でも激減! 最普通種のアキアカネ, 神戸のトンボ,2017
https://www.odonata.jp/04topics/Sympetrum_frequens/index.html

14)KYODO NEWS/悠仁さま 10 歳に 田んぼ作りにいそしむ
https://www.youtube.com/watch?v=-DmUGWRygdI

15)ANNnewsCH/天皇陛下がお稲刈り かまを手に 20 株を収穫 作柄は去年より良好(2022年 9 月 6 日)
https://www.youtube.com/watch?v=4Bo7RTFAWV0

16)ANNnewsCH/陛下が即位後初の稲刈り 実った稲一株ずつ丁寧に(19/09/19)
https://www.youtube.com/watch?v=I5vmzd91oYw

17)NEWS ポストセブン/昭和時代から受け継がれる「皇室の稲作」収穫されたお米はどうする?
https://www.news-postseven.com/archives/20210417_1652802.html