「男女産み分け」疑惑も皇室典範第一条の理不尽さも、多くの国会議員はすべてご存じという事実

この記事をシェアする

先にこちらで、『もしもこの国会で皇室典範が改正され、女性宮家創設が決まったとしても私はあきらめない』という記事を書いた。あきらめないとは、敬宮愛子さまが皇太子となられ、やがて天皇に即位されることをである。



平成の上皇ご夫妻から急増し、今は秋篠宮家にやけに目立つ鑑賞・観光旅行・視察旅行系のご公務。これを見直さず、皇族の数だけを安易に増やそうとする国会。そして憲法が男女平等および「皇位は世襲のもの」と掲げているにもかかわらず、皇室典範第一条には「男系男子で継ぐ」とある。どちらを改めるべきか、国民の殆どは理解ができている。

国会議員の皆さんは、何もご存じないのだろうか。一部の男系男子論者の言うことを、まともに信じてしまっているのだろうか。

だが、筆者はそうは思わない。現行の皇室典範の問題を国会議員さんがどのような資料で学んできたか調べていたなか、衆議院憲法審査会事務局が2017年6月に発行した『衆憲資第95号「第一章(天皇)」に関する資料』に、様々な事柄の真実がしっかりと綴られていたからだ。

それを基に勉強していらっしゃれば、心ある多くの議員さんは「皇室典範第1条にこそ大きな問題がある」ということを理解しておられると想像する。今はただ「辛抱の時期」であり、いずれ政治や世の中が変わったら、皇室関連の問題も打破される、そんな希望をずっと持ち続けていきたいと思う。

 

◆皇嗣=次期天皇確定ではないこともご存じ

皇室典範には、傍系の弟である秋篠宮さまを「皇太弟(こうたいてい)」と称する定めがないといい、そのため称号的な「皇嗣」と呼ぶことになったそうだ。だが、皇太子と皇嗣の違いはなかなか難しい。不勉強だとこういう時に恥をかく。特に自民党幹部は…。

『衆議院』のホームページに掲載されている、令和2年(2020年)2月10日の衆議院予算委員会議事録に、菅義偉国務大臣と立憲民主党の山尾志桜里氏による皇位継承について、こんなやりとりがあったと記されている。両者ともに、安定的な皇位継承の維持は国家の基本で重要な問題だと確認しあった後――。

山尾氏: 立皇嗣の礼が行われれば、皇太子ではない、皇嗣である秋篠宮殿下が、見る人によっては確定的な皇位継承者であるかのように映ったり受けとめられたりということも、これは当然、自然な受けとめとしてあり得るので、こういう既定路線のような印象の影響はできるだけ少なくして、

 

(略)

 

はっきり言っていただきたいのは、皇太子と皇嗣の一番の違いは何でしょう。

 

この質問に困惑した菅国務大臣(官房長官)。衆議院予算委員長の棚橋泰文氏が、速記をとめさせた。そして、菅氏の回答の準備が整うと速記が復旧しーー。

菅国務大臣: 大変失礼しました。 天皇の子であるかどうかということが、一番の違いだそうです。

 

山尾氏: そうです。その帰結として、結局、皇嗣は天皇の子ではないので、皇位継承者第一位であっても、次の天皇となることが確定しない立場である、しかし、皇太子の場合は天皇の子でありますので、皇位継承者第一位であることが皇太子になったときに確定し、そして、その皇太子が天皇より先に薨去されない限り天皇となることが確定する立場であるというのが一番の違いだということを、私はこの園部逸夫先生の本などから、なるほど、そういうことなんだなというふうに思いました(略)

天皇の子でなければ皇太子にはなれないと(画像は『衆議院』のスクリーンショット)
皇嗣=皇太子ではないのに、確定かと誤解している人は多い(画像は『衆議院』のスクリーンショット)

 

◆昭和22年当時、女性の権利や意識が違っていたこともご存じ

上述の『衆憲資第95号「第一章(天皇)」に関する資料』をみると、旧皇室典範でも現行皇室典範でも、典範はその時々の社会情勢、国民のものの考え方、家制度の決まりなどを反映しながら議論されてきたようだ。

特に女性天皇、女系29天皇を巡る議論に記載されている内容を見ると、女性の権利は現代と明らかに違っていることがわかる。

女性に家督相続権も参政権もなかった時代の皇室典範を、いったいいつまで…(画像は『衆議院』PDFのスクリーンショット)
女性に家督相続権も参政権もなかった時代の皇室典範を、いったいいつまで…(画像は『衆議院』PDFのスクリーンショット)

 

<旧皇室典範(1889=明治22年)制定時の議論>

・女性は政治に関与しないという原則
・男性尊重の国民感情、社会慣習がある
・女性天皇に配偶者がある場合、女性天皇の尊厳を傷つける
・我が国の相続形態は男子を優先し、長子が女子で次子以降に男子がある場合は男子が相続することになっている
・配偶者が女性天皇を通し政治に干渉するおそれがある。
・女性が参政権を有しないにもかかわらず、政権の最高の地位に女性が就くことは矛盾

 

<現行皇室典範(1947=昭和22年)制定時の議論>

・男系による継承という歴史に重要な意義
・国民の意識も必ずしも女系による皇位継承に積極的でなかった
・世襲制維持の観点から女系による継承を認める必要はなかった

 

昭和22年に国会議員だった方々は、明治や大正のお生まれで「きょうだいは5人以上。兄や弟がいる」という方が多かったのではないだろうか。

そして、日本の女性の参政権は昭和21年4月に認められた(約1,380万人の女性が投票し、39名の女性国会議員が誕生)ばかりで、高等教育を受ける女子が急増し、社会進出が目立ってきたのは、もっとずっと後の昭和45年あたりだそうだ。

昭和22年の日本は男性を軸に世の中が回っていた、これは否めない。だが今は違う。どうしてこの時代に合わなくなっている部分を見直すことができないのだろうか。



◆嫡出子、世襲と定められていることもご存じ

『衆憲資第95号「第一章(天皇)」に関する資料』で、議員さんたちは皇室典範についてこんなことを学んでおられたようだ。であれば、傍系でしかない秋篠宮家に皇統が移ることの是非について、慎重に議論しなければならないとご存じであろう。

・皇位継承資格者は世襲かつ嫡出子(生物学上の実子)である

世襲なら傍系は違うだろう。現代において血統の証明はDNA鑑定で(画像は『衆議院』PDFのスクリーンショット)
世襲なら傍系は違うだろう。現代において血統の証明はDNA鑑定で(画像は『衆議院』PDFのスクリーンショット)

 

・第2条によれば、直系長子の敬宮さまが継承順位が第1位であろう。秋篠宮さまや悠仁さまはずっと下に位置することがわかる。

皇統は基本的には直系長子が継ぐことに(画像は『衆議院』PDFのスクリーンショット)
第1条が男子と定めているだけで、第2条ではシンプルに直系長子が皇位を継ぐと(画像は『衆議院』PDFのスクリーンショット)

 

◆妊娠超早期になぜ「胎児は男児」と? 男女産み分け疑惑もご存じ

2006年2月、当時の小泉純一郎首相は「女性・女系天皇を容認する」旨を含めた皇室典範改正案を国会に提出する予定で準備を進めていたが、妊娠のごく初期にもかかわらず「紀子さまが男児をご懐妊」との情報が永田町に流れ、改正案の国会提出を見送らざるを得なくなった。

自然妊娠なら胎児の性別がわかるのは2006年5月ごろ。それを待たず2月に改正案提出を見送ることに。これだから産み分けを行ったと言われるのだ(画像は『衆議院』PDFのスクリーンショット)
なんと妊娠初期の2006年2月に改正案提出を見送ることに…(画像は『衆議院』PDFのスクリーンショット)

 

秋篠宮夫妻は、倫理面でいまだ認められていない「男女産み分け」を行ったと批判されているが、衆議院が作成した公の文書にその事実が書かれているとは驚いた。

自然妊娠なら、胎児の性別がわかるのは2006年5月ごろで、それを確認してからでも国会には間に合ったはずだが、なんと2月の時点で提出を見送ったとある。

これは産み分けが、成功する人ばかりではないパーコール法を避け、体外受精での着床前診断という確実な方法に頼ったことを意味するのではないだろうか。



◆支離滅裂な議論と国会議員の本音

皇室典範第1条 「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」

血統を男系男子でつなぐことにこだわるあまり、皇室外交のクオリティーもDNA鑑定結果も未知、国民感情は否定的というなかで、この第1条を盾に「秋篠宮さま→悠仁さまという皇位継承順位をゆるがせにしてはならない」と主張する人がいる。そこに、どれほどの説得力があるのだろう。

先月下旬、弁護士JPニュースは『皇位継承問題「6月末までに」決着? 専門家が指摘する“現状案”の「支離滅裂さ」と女性・女系天皇に対する「政府の本音」』という記事を出したが、そこにも “実は国会議員も「女性天皇賛成派」が多い” という部分がある。

たった一部の強烈な男系男子論者に、支配されてしまっている皇位継承論(画像は『弁護士ニュース』のスクリーンショット)
たった一部の強烈な男系男子論者に、支配されてしまっている皇位継承論(画像は『弁護士JP』のスクリーンショット)

 

さらに、秋篠宮家の人気を挽回させようと頑張っておられる佳子さまは、「ジェンダー平等の世の中を」をとずっと訴えておられる。なぜその願いを受け止めて差し上げないのだろう。自民党(日本会議や神社本庁とは三位一体であろう)には、秋篠宮家に継いでもらわないと困る何かのっぴきならない理由でもおありなのだろうか。

 

◆まとめ

皆さんも、国会議員たちがどのような資料で皇室、皇位継承というものを学んできたか、お時間があるときにでも、こちらの『衆憲資第95号「第一章(天皇)」に関する資料』に目を通してみていただきたい。

それでも、菅氏のように国会の場で勉強不足が露呈する例がある。皇室典範第1条が謳う時代錯誤かつ憲法違反の男尊女卑を、「悠仁さままでの皇位継承順位をゆるがせにしてはならない」と主張するばかりで、改正しようとしない政治家や有識者には不信感しかない。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

画像および参考:
『弁護士ニュース』皇位継承問題「6月末までに」決着? 専門家が指摘する“現状案”の「支離滅裂さ」と女性・女系天皇に対する「政府の本音」

ANNnewsCH ― 皇嗣で新儀式を検討 秋篠宮さまの立場示す 宮内庁(18/01/09)

『Wikipedia』皇嗣

『衆議院』第201回国会 予算委員会 第10号(令和2年2月10日)

『衆議院』衆憲資第95号「第一章(天皇)」に関する資料 平成29年6月

『エトセトラ・ジャパン』もしもこの国会で皇室典範が改正され、女性宮家創設が決まったとしても私はあきらめない

『エトセトラ・ジャパン』佳子さまの願い「ジェンダー平等」により直系天皇が誕生 次世代は男系・女系の表現すら撤廃へ