トンボ論文写真No.66アキアカネのヤゴは全くの別物 腹の先端の穴は内臓を取り出した跡か

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悠仁さまの論文に出てくるアキアカネ(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
悠仁さまの論文に写真No.66は「アキアカネ羽化」と(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)

すっかり話題となっている秋篠宮家の長男・悠仁さまのトンボ論文のなかで、写真No.19の「オツネントンボ」の左肩に白い端子のようなモノ(針の一種?)が刺さっていること、そして腹の右脇に昆虫針のようなモノがあることなどを、次々に発見して下さった神奈川県在住のHさん。

先の記事でも紹介させていただいたが、Hさんの発見が世界屈指の不正論文分析スペシャリストであるエリザベス・ビクさんの目に留まり、14.6万人もフォロワーさんがいるX(Twitter)や、ご自身のウェブサイト『PUBPEER』に上げてくださったことは、驚くばかりの快挙である。

Hさんはその後、「写真52番・タイワンウチワヤンマの止まり方は脚がおかしい」と指摘し、左の胴部のあり得ない部分から黒い関節と偽物であろう脚が生え、極細の枯れ草に固定されていることを説明してくださった。どこから連れてきた標本なのだろう、もうこの手の工作にはウンザリである。

そのHさんから、今度は「アキアカネ♀羽化の写真No.66に不自然な点が見つかりました」とのご連絡をいただいた。



◆写真66番はどこがおかしいのか?

色の強調をし過ぎているのか、翅脈も黒々、腹の縁も背筋も黒々としており、まるで絵のようにも見えるこのアキアカネ。だが、問題はもっと深刻だった。以下、Hさんの説明を順にご紹介してまいりたい。

 

■羽化殻がアキアカネのヤゴとは違います

「羽化殻にまたがり、いかにもそこで羽化したばかりといった雰囲気のショットですが、その羽化殻には下に尾鰓(びさい)と呼ばれる尾びれが付いています」とHさん。その羽化殻はアキアカネのヤゴではないそうだ。

これはアキアカネのヤゴなのだろうか(画像は『J-Stage』のスクリーンショットに加筆)
これはアキアカネのヤゴには見えないが…(画像は『J-Stage』のスクリーンショットに加筆)

 

『ヤゴペディア』というウェブサイトで確認してみたところ、アキアカネのヤゴはずんぐりとしていた。

アキアカネのヤゴはこんな形だという(画像は『ヤゴペディア』のスクリーンショット)
アキアカネのヤゴはこんな形だという(画像は『ヤゴペディア』のスクリーンショット)

 

生態を捉えた写真をインターネットで検索してみると…。やはりアキアカネの羽化殻はまったく違うようだ。

アキアカネのヤゴはもっとずんぐりとしている(画像は『大小迫 つむぎの家』のスクリーンショット)
(画像は『大小迫 つむぎの家』のスクリーンショット)

 

アキアカネのヤゴはもっとずんぐりとしている(画像は『トンボノート』のスクリーンショット)
(画像は『トンボノート』のスクリーンショット)

 

また、『神戸のトンボ』というウェブサイトで、他のトンボたちのヤゴを見てみた。「均翅類」という部類に入る①~⑤のトンボたちに、同じような尾鰓があるようだ。

尾鰓(びさい)と呼ばれる長い尾を持つヤゴが複数いる(画像は『神戸のトンボ』のスクリーンショット)
尾鰓(びさい)と呼ばれる長い尾を持つヤゴが複数いる(画像は『神戸のトンボ』のスクリーンショット)




■本当に「杏水田」ですか? 背景が不自然です

「写真No.66では、右半分に水面のような茶色の領域があります。論文にある杏水田を見ると、稲の周辺には何も植えられていないことがわかります。さらに、66番が撮影されたのは2022年7月2日と。この頃の稲は “最高分げつ期” にあたり、稲の葉が写っていないことが不自然です」とHさんは説明してくださった。

論文の6ページにある写真No.12・杏水田はこちらである。一株から30~35本くらいの数で茎が広がっていくイネ。その緑が水田を覆い尽くす「最高分げつ期」は、6月下旬~7月上旬だそうだ。

写真12番は、駐車場2台分弱という面積の「杏水田」(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
写真12番には、なんと夏の「杏水田」の様子が紹介されていた(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)

 

イネであれば成長で枝分かれ(分げつ)し、根本から茎が広がっていくはずだが、写真No.66では「束ねられた茎」が縦に伸びているだけ。これはあまりにも不自然で、「7月2日撮影」という記録には違和感しかないという。

なお、杏水田は面積が25㎡だといい、これは一般的な駐車場でいうと車2台分ほど。悠仁さまの論文の写真のように、水面が広がるようなスペースはあるのだろうか。

 

■アキアカネの右・後翅は本物ですか?

「写真66番・アキアカネの右後翅の付け根部分に注目してください(写真・左)。2本の太い翅脈が平行線で開いたままからだに付いているのがわかりますか? これはおかしいです。」

左が悠仁さまの論文に出てくるアキアカネ。右はWikipediaが紹介したアキアカネ。右の後翅の付け根にご注目を。
左/悠仁さまの論文に出てくるアキアカネ。右/Wikipediaに掲載されているアキアカネ。右の後翅の付け根にご注目を。

 

Hさんがおっしゃることは本当だった。Wikipediaのアキアカネ(写真・右)は、翅脈は扇子の要のように束ねられ、トンボの体に付いていた。

 

■腹の先端に穴のようなものがあります

「このトンボの腹の先(尾の部分)に丸い穴のようなものが見えます」とHさん。これは一体何なのだろうか。他のアキアカネのオス・メス、両方ともたくさんの写真を確認してみたが、こういうアキアカネには出会えなかった。

悠仁さまの論文に出てくるアキアカネ。腹の先にまさかの穴が?(画像は『J-Stage』のスクリーンショットを重ねたもの)
悠仁さまの論文に出てくるアキアカネ。腹の先にまさかの穴が?(画像は『J-Stage』のスクリーンショットを重ねたもの)

 

ふと、あるウェブサイトでトンボの標本を作る手順を見たことを思い出した。内臓を腹の先端部分に穴を開けてそこから引き抜くという。この写真は尾の先に上・下付属器が付いているため、オスであろうか。

トンボを標本にするとき、腹の先端から内臓を引き出すという(画像は『吉丁虫色の日々』のスクリーンショット)
標本にする際は腹の先端から内臓を引き出す(画像は『吉丁虫色の日々』のスクリーンショット)

 

ちなみに、こちらはGoogle Earthが提供している2022年3月の空撮写真。佳子さまが占拠している秋篠宮邸分室(旧ご仮寓所)の前にあるのが「なまず池」、右手の長方形に見えるのが「杏水田」である。

佳子さま占拠の旧ご仮寓所の前に「なまず池」が、そして右の長方形が「杏水田」だ(画像は『Google Earth』のスクリーンショット)
佳子さま占拠の旧ご仮寓所の前に「なまず池」が、そして右の長方形が「杏水田」だ(画像は『Google Earth』のスクリーンショット)

 



◆まとめ

報道によると、悠仁さまは大量のトンボ写真やそのデータの豊富さで、一流のトンボ研究者に感銘を与えたとのこと。だがそこに、正しい情報、知識を添えて管理なさっていたのだろうか。

「いつどこで見たのか、わかんない。でも目撃したよ」だけで論文を書き、国立科学博物館に受理してもらい、それを実績として生物学者を目指し東大へ?

いやいや、東大の先生方も驚いていらっしゃるだろう。「何とお粗末。これじゃ話になりませんな」くらい言われていると思った方がよいのではないだろうか。

 

皆さんも下のいずれかの論文から、実際の写真No.12「杏水田」とNo.66「アキアカネ」をご確認頂きたいと思う。

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『J-Stage』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―

『国立科学博物館』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―

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(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

画像および参考:
『たつの・赤トンボを増やそう会』赤トンボについて

『トンボノート』 No. 851. 水田で羽化するアキアカネ.2022.6.25.

『大小迫 つむぎの家』アキアカネの一斉羽化

『ヤゴペディア』トンボ科 ― アキアカネ

『神戸のトンボ』小学校高学年・中学生のページ 幼虫の姿のひみつ

『Wikipedia』アキアカネ

『吉丁虫色の日々』トンボ類における標本の作り方と色残しの方法に関するあれこれ

『エトセトラ・ジャパン』写真52番タイワンウチワヤンマには新しい関節と脚が? まだまだ出てくる悠仁さまトンボ論文の謎

『エトセトラ・ジャパン』悠仁さまトンボ論文疑惑 ついに世界が恐れる「不正論文分析スペシャリスト」の下へ