【皇室、徒然なるままに】第84話:東京大学総長に告ぐ  西村 泰一

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§1 世界3大不正論文

世界3大不正論文とは、2002年に発覚したヘンドリック・シェーン(Jan Hendrik Schön)の捏造物理学論文、2005年に発覚した黄禹錫(ファン・ウソク 황우석)のES細胞に関する捏造論文、そして2014年に発覚した理研・小保方晴子氏のSTAP細胞論文の3つである。これらについては以下を御覧いただきたい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E7%A6%B9%E9%8C%AB

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E4%BF%9D%E6%96%B9%E6%99%B4%E5%AD%90

 

このなかで日本人が関わるのは最後の小保方晴子氏だけなので、それについて簡単に復習しておく。

2014年1月末にSTAP細胞の論文をNature誌に発表し「リケジョの星」として一夜にして時代の寵児となった。その後、当該論文や早稲田大学の博士論文に画像の盗用や他人の論文からのコピペとされる内容があったことが明らかになり、また3年間の研究期間で研究ノートが2冊だけだった事などが報道されている。理化学研究所の上司だった笹井芳樹はこの騒動を受けて自殺し、マスメディアの報道姿勢や警察の対応も問われた。学位は猶予期間を経て2015年11月に取り消されている、理化学研究所も退職なさっている。

 

§2 世界4大不正論文

最近、上記の3大不正論文に新たに以下の論文が加わり、世界4大不正論文が出揃うことになった。

『赤坂御用地のトンボ相―多様な環境と人の手による維持管理―』
https://www.kahaku.go.jp/research/publication/zoology/download/49_4/L_BNMNS_49-4_129.pdf

 

この論文は秋篠宮家長男の悠仁君、宮内庁の飯島健氏、国立科学博物館の清拓哉氏の手になるものである。この論文は、赤坂御用地には斯々然々(かくかくしかじか)のトンボがいましたというだけのもので、もし不正がなければ、ノーベル賞級の画期的な論文であった先の3大不正論文と比肩しうるものではない。しかし、この論文が数ある不正論文のなかで格段の注目を集めるのは、それが日本の天皇のお膝元にいる者の手になり、しかもこの者はひょっとすると次期天皇になるかもしれないということのためである。

承知のように日本の天皇は国際的に見ても、大変な権威を有しており、実質的な政治権力は持たないのにも拘らず、これだけの権威をもつ存在としては、他にはローマ教皇を挙げうるのみであろう。初代ローマ教皇はイエス・キリストの12使徒の1人である聖ペトロで紀元1世紀まで遡る。記紀に記載はあるが、神武天皇等その実在が疑問視されている天皇を別とすれば、紀元6世紀前半の第26代継体天皇あたりを初代天皇とするのが無難なところであろう。

いずれにしても、ローマ教皇も天皇も、とても古い歴史を有しているのである。これに継ぐものとしては、既に存在しないが、ドイツと北イタリアを支配下においた神聖ローマ帝国(962-1806)あたりになるのであろうか?ソビエト帝国(1922ー1991)など、ぞの存続期間は100年にも満たない。

教皇庁は、現在、聖職者による児童性虐待(フランスのカトリック教会に限っても、1950年から2020年にかけて、少なくとも2900人から3200人の聖職者が、未成年者に対して性的虐待を行ったと推定されている)への対応で腐心しているが、 日本の宮内庁ないし皇室は、悠仁君の上記の不正論文という一大スキャンダルを気に留めているようには見えない。なんともノーテンキ(能天気)な話である。

悠仁くん達の論文が昨年11月に出版されて以降、こちらのブログに集う人々によって、この論文の誤り、捏造、そして怪しげな点について、精力的に調査された。これらは以下に冊子としてまとめられている。

https://drive.google.com/file/d/1JeIjKZcxDbwgEpGY3J10Idkhh4Z2sByL/view

 

彼らは、単にブログに疑義を寄せただけでなく、責任著者の清拓哉氏あたりに積極的に働きかけを行ってきている。清氏からは、なかなか色よい返答がなかったようであるが、誤りの主だったものについては今年の8月に「正誤表」という形で公表された。それがこちらである。

J-Stage『正誤表/秋篠宮悠仁・飯島健・清拓哉 2023.赤坂御用地のトンボ相―多様な環境と人の手による維持管理』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bnmnszool/50/3/50_137/_pdf/-char/en

 

そして、私なら次のような但し書きを付け加えておくところである。

「エトセトラ・ジャパンに疑義を寄せて下さった皆様のおかげで、次のような正誤表を作成することができました。不束(ふつつか)な私達3人でありますが、今後ともご指導の程、宜しくお願いします。」

 

この誤りであるが、8箇所あって、うち4件は学名の誤りである。

承知のように学名はラテン語である。なぜラテン語かと言うと、ヨーロッパでは中世だけでなく、その後も長い間、既に死に絶えた言語であるラテン語がヨーロッパ共通言語のような位置を占めていたからである。今英語が世界共通語の位置を占めているようなものである。

ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』で、主人公が「学校で学んだのはラテン語と、うそをつくことだけだった」という名台詞を呟いたのを覚えておられる方も多いであろう。そして分類学の祖と言われるリンネはラテン語がヨーロッパでの共通言語として通っていた最後の世代に属する方なので、学名をラテン語と決めたのである。それが今に踏襲されているというわけである。

いずれにしても学名はラテン語であるから、この種の論文を書かれる方は、その記載には細心の注意を払われるのである。それゆえに、学名の間違いは滅多に起こりえないとも言える。実際、清拓哉氏の以前の論文を何本か見てみたが、斯様な間違いは全くされていない。したがってこの誤りは悠仁くんに帰すべきものと言える。

悠仁君に友人がおらず、彼の遊び相手も宮内庁の職員の方が務めてあげなければいけないというのは、有名な話である。例えば悠仁君とゲームをしてあげるわけだが、悠仁君は負けると怒り出すといい、悠仁君が勝つよう工夫しなければならないとのこと。なんともご苦労な話である。

悠仁君というのは、事実を事実として受け止めることができない方なのであろう。悠仁君がそういう間違いをしても、共同研究者の清氏あたりが訂正してあげればよかったのに、と思われる方も多いのだろうが、悠仁君がそういう人では、とてもそんなことを言える雰囲気ではなかったのであろう。よい例えかどうかはわからないが、清氏は北朝鮮で万能の天才といわれる金正恩と共同研究をしたようなものである。筆舌に尽くしがたいご苦労があったものと拝察する。

誤りはいくつあろうとも正誤表で片付く話であるが、画像の捏造のほうはそうはいかない。たとえ一つでも捏造があれば、先ず持ってその論文は撤回されなければならない。なぜならそれは不正論文だからである。清拓哉氏らが正誤表を公表するにあたって謝辞を全く述べなかったというのも、もしも謝辞にエトセトラ・ジャパンの文字を含めようものなら、「そこで指摘されている画像の捏造疑惑についてはどうなんだ?」と突っ込みを入れられることを怖れてのものと思われる。

この論文でなされている捏造というのは、おそらくAmazonやメルカリあたりでトンボの標本を購入し、望みのトンボを取り出して赤坂御用地の然るべき場所に置き、それがあたかも生きているトンボと見えるように色々と小細工をするというものだったのではないだろうか。その上で写真を撮って、「絶滅危惧種のトンボが赤坂御用地にいました」とやるわけである。

 

著名な写真家エドワード・ウェストンは次のような名言を残している。

“The camera sees more than the eye, so why not make use of it? (カメラは、目以上にものを見る。だからこそ、使うべきじゃないか?”

そう、本当にその通り。カメラは肉眼では見えないはずの悠仁君が施したであろう小細工も、ちゃんと写し取っている。写真をそのまま見ていたのではわからないが、少し拡大してやると見事に浮かび上がってくるのである。写真というのは恐ろしいものである。

 

ポートレートの巨匠として超有名な写真家リチャード・アヴェドンは次のような含蓄のある名言を残している。

“All photographs are accurate. None of them is the truth. (すべての写真は、寸分の狂いもなく正確だ。だが、そこに一切の真実はない。)”

そう、写真は確かに絶滅危惧種のトンボを写し出しているが、赤坂御用地にそのトンボがいたというのが「真実」なのかは、全く以て不明である。

 

いずれにしても、不正論文というのはAcademe(学会)に対する挑戦なので、単に日本国内だけに終わっていい話ではない。上記の論文のいくつかについて、私のほうで『Oops !…Prince Hisahito did it again !』というシリーズにして英文で論じてみたところ、大変な反響があり、最初のものなんかは既に1万7千人近くの研究者に読まれている。

https://www.researchgate.net/publication/377624749_Oops_Prince_Hisahito_did_it_again_Part_I

https://www.researchgate.net/publication/377624749_Oops_Prince_Hisahito_did_it_again_Part_II

https://www.researchgate.net/publication/377624749_Oops_Prince_Hisahito_did_it_again_Part_III

https://www.researchgate.net/publication/377624749_Oops_Prince_Hisahito_did_it_again_Part_IV

 

また、これはとても大事な話で勘違いがあってはならない。生物学における不正論文、就中(なかんずく)写真を通しての捏造なんかを摘発するエキスパートでいらっしゃるエリザベス・ビク博士も、今年2月にご自身のブログにて疑義を紹介してくださった。それ以来、著者の誠意ある対応をずっと待っていらっしゃるのである。

PUBPEER『赤坂御用地のトンボ相―多様な環境と人の手による維持管理―』
https://pubpeer.com/publications/7ACE25D846A25A8ADA13841BDD11D2

 

§3 東大に求めたいこと

悠仁君が東大農学部に推薦入試で入るという噂が流れている。この噂の真偽については全くわからないが、以下ではこの話が本当であると仮定して論じてみたい(そうでない場合は、以下はお読みいただかなくて結構です)。

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東大農学部の推薦入試の募集要項を拝見しましたが、悠仁君がこれで入るのだとすると、その根拠として上記の彼のトンボ論文は非常に重要な位置を占めます。しかしその論文は不正論文であることが否めません。不正論文を根拠にして入学を認めるなどということはあってはならないことです。

教員や院生に不正が疑われた場合、まず委員会を立ち上げ、そこで不正かどうかを見定めます。その上で不正であると確認されれば、当然しかるべき措置がとられます。

悠仁君の上記の論文についても同様の手続きをとってください。特に悠仁くんに面接もされるのでしょうから、その委員会の結果を踏まえて、本人に直接色々と質問なさるのもよろしいかと思います。

私が申し上げたいのは

「不正論文を根拠に入学を認めるべきではない」

ということだけです。

筑波大学にならって「皇室東大連携制度」でも作って、上記の論文とは関係なく、悠仁君の入学を認めるのだと仰るのであれば、私として別に申し上げることはございません。

 

§4 Concluding Music

それではいつものように音楽を聴きながら、この論考を終わることにしましょう。

あなかしこ あなかしこ 西村泰一(Tsukuba)
https://www.researchgate.net/profile/Hirokazu-Nishimura

【皇室、徒然なるままに】のバックナンバーはこちらから。

【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月  洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月  京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月  筑波大学(数学)

参考:
『Wikipedia』エドワード・ウェストン

『Atsushi Photolog』著名な写真家たちが残した12の名言【心に刺さる英語のメッセージ】

『Wikipedia』リチャード・アヴェドン

『Wikipedia』エリザベス・ビク

『PUBPEER』赤坂御用地のトンボ相―多様な環境と人の手による維持管理―

『FNNプライムオンライン』悠仁さまが作製されたトンボの標本 2013年12月撮影

『エトセトラ・ジャパン』国際昆虫学会議ICE2024「重要なお知らせ」そこは平壌か戒厳令下か 西村泰一先生が英語で研究者向けSNSへ

【皇室、徒然なるままに】第28話:悠仁君は天才である

『YouTube』谷村新司 いい日旅立ち (中文版) – 红色的雪雁 梅子 Dumartini 海上云 Haishang Yun



6件のコメント

  • 日刊ゲンダイ記事より
    >「合格後に議論が起こるのは避けられない。世間の注目を集めやすい東大ではなおさら」と話す塾経営者は「受験は公平さが担保されなければならない」と強調する。
    「やはり、第2候補とされる筑波大への推薦合格を目指すべきではないでしょうか。入学者の4人に1人は学校推薦型選抜によるもの。枠も広いので、厳しい目が向けられる心配もない」(同)
    すっかり受験モードに入った悠仁さま。それに合わせた周囲の動きも活発だ。警視庁は来年4月、公安部に単独テロ「ローンオフェンダー」を担当する課を新設する。
    「安倍晋三元首相や岸田文雄前首相への襲撃を受けてのものですが、大学に進んだ悠仁さまをどう守るかも大きな目的のひとつ。東大や筑波大で危険人物を調査する狙いもある」(警視庁担当記者)<

    自分から積極的に違法行為の疑いが強い東大裏口入試を仕組んでおいて、批判が出るや、抑え込むためには、テロ防止を口実に、公安を使って「東大や筑波大で危険人物を調査する」とは一体何様の発想なのでしょうか?
    悠仁くんの裏口入学に反対すれば、公安から危険人物とみなされ、マスコミからまで叩かれるような日本に、いつから、どのような法律に基づき、誰からされてしまったのでしょう。
    皇室新聞や菊ノ紋サイトは、記事を見る限り、宮内庁関係者からの内部告発の形で情報を得て、徹底して愛子さまを支持していました。
    どこにもテロの気配などはなかったのに、女性自身の記事では、公安が動いて潰したとあり、誰が中心になり、公安を動かしたのかが大問題となります。
    首相が動く、内調が動く、というプロセスでもないようで、どこどうしても悠仁くんを東大生にして、愛子さまより優秀だと見せかけたい人が主犯者だと見るのが、この場合は自然なのではないかと思います。
    日本の内政において、本件のような法の支配に基づかない悪しき慣行が復活しだすと、海外は大いに警戒を強めます。
    同盟国ですら、日本が法治国家ではない証拠を見つけだすと、様々な面で、ビジネス上のトラブルにも繋がりかねません。ちょうど、日本が中国の言論弾圧状況を批判するのと同じことが、今度は欧米から日本批判の火種にされるわけです。投資環境としてみても、もはや日本は中国並みに不適格な、言論の自由がない国家であるとなります。

  • 『トンボ論文に集まる疑義の声』
    こうやって冊子形式でまとめていらっしゃられたとは知りませんでした。
    西村先生のお言葉はいちいちご尤もなことばかりなのに対し、日本のマスコミのだらしなさには茫然となります。
    こうして冊子で拝見するとインパクト抜群ですね。

    ①スマホサイズになっていますが、海外の研究者やジャーナリストはPCで読みますので、A4横のパワースポットスタイルでプリントアウト可能なものも用意されているといいかなと。
    ②リンク先のエトセトラ記事が重要なので、もう少しリンクをクリックするかどうか、判断しやすいように記事の要約が詳しく表示されていると、納得されやすくなるかと思います。
    ③この問題は国際的に広く知られ、海外で報道される必要がもっとあるので、英文版、仏語版、独文版、スペイン語版も自動翻訳でいいのでぜひ用意してください。英文版がしっかりしていれば、独文、スペイン語へは比較的上手に自動翻訳されるので、要旨だけなら可能かな?と思います。そして各欧州王室にもメールでお送りいただければと思いました。
    ④東大入試の日本での意味、日本ではエリートへの階段であると理解されていること、現在の日本皇室内での権力闘争の構図(図式化)、愛子さまに対する異常なまでのライバル心の強さの原因、学習院に入学できなかった経緯、新たに入試制度に手を加えさせる方式での裏口入試の違法性、韓国での判例なども英文でまとまっていると、日本の特殊事情が理解されやすくなります。

  • 悠仁サマ、世界4大不正論文大賞受賞おめでとうございます! 京都での晴れがましいデビューは大成功ですね。流石にイグノーベル賞はノミネートされません。
     
    西村泰一先生のお心遣いにより、仕舞いの音楽で穏やかになります。毎日皇族のくっだらねー報道で疲れるから「いい日旅立ち」の選曲は心地良く拝聴しました。御礼にGoogle翻訳を使って日本語に変えてみました。世界中の学者研究員が人の幸せを築いている恩恵を受けています。便利な時代になりました。少し詞を加減しましたが、どうぞ御覧ください。
     
    「紅い白雁」
    夢現で無意識に
    静寂な湖畔に辿り着いてしまった
    ハクガンが湖を掠め飛ぶ
    前と同じように
    あの年、あの日
    此処で別れよう
    恋は破れて、夕日がハクガンを赤く染める
    空を飛び回る
    ああ、最も美しい場面
    でも、それは人生で最も深い悲しみ
    又一年、又の日に
    空一面のハクガンが悲しみを露わにする
    季節は巡り春になる
    もう元には戻らない
    (省略)
    悲しみをもう一度見詰めている
     
     
    (今回の文字入力は「うちけせ」でした! 如何にも。) 

  • 西村先生、よくぞ、ここまで書いてくださいました。
    もう一つ、条件の中に「国際会議に参加」というのがありますが、実際、この程度で(皆さんご存じでしょう)「会議に参加した」と言えるのでしょうか? これも異論芬々になると思います。こんなことをごり押しして、推薦入学を強行したなら、彼は一生、不正を陰口されながら生きなければなりません。 歴史にも刻まれます。 今後、日本が続く限り、日本人の恥辱として幾多の世代を超えて語り継がれることになるのです。もうすでに、収拾がつかない状態になっているかもしれません。刻印はすでにいくつも押されてしまっています。

  • 2024.9.20 高森明勅公式サイトからご紹介します。

    元最高裁判事で皇室法研究の第一人者、園部逸夫氏の死を悼む

    去る9月13日、元最高裁判事で「皇室典範に関する有識者会議」の座長代理などを務められた園部逸夫氏が、95歳で亡くなられた。皇室法研究の第一人者で、最後まで皇室の将来を憂えておられた。

    小泉純一郎内閣に設けられた「皇室典範に関する有識者会議」の座長代理で、事実上の中心人物だった。同会議の報告書は、皇位継承問題に対するほぼ完璧な解答であり、今もこれを越える見解はどこからも示されていない。
       (中略)
    既に、かなりご高齢だったにも拘らず、専門方面に関する記憶力と頭脳の明敏さには、舌を巻いた。皇室関係のご著書に『皇室法概論』(第一法規)、『皇室制度を考える』(中央公論新社)、『皇室法入門』(ちくま新書)などがある。

  • 2024.6.30 高森明勅公式サイトからご紹介します。

    皇位継承における「正当性」と「正統性」を巡る常識的な考察

    皇位継承の「正統性」は男系だけが支える、という言説を見掛ける。果たしてそうか。
    それを吟味する場合、正統性だけでなく、「正当性」という視点も欠かせない。
    先ず「正当性」と「正統性」の区別から。

    正当性とは道理にかなって正しいこと。こちらは理性に照らして“正しい”と納得できる。

    一方、正統性は手順や方法、形式において正しいこと。こちらは感情として“正しい”と受け入れやすい。皇位継承については勿論、これらの正当性と正統性の両方が求められる。これを憲法の条文に即して考えるとどうなるか。

    「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」(第1条)たるに相応しい方がその地位に即かれることが、正当性を担保する。一方、それが「世襲」(第2条)という手順、方法でなされてこそ、正統性が保たれる。

    その両者を“共に”満たす為に最も望ましいのは、男系継承ではなく「直系」継承であることは、明らかだろう。世襲は元々、男系·女系の双方を包含する概念であり、象徴としての資質を受け継ぎ、より相応しい成育環境を期待できるのは、一般的に傍系ではなく直系だからだ。(略)

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