話題の写真No.19は「線」に伴い「平面」でもわずかな変化 標本作りに欠かせないあるモノが落ちていた可能性が指摘される
先の『悠仁さまトンボ論文の写真No.19は想像以上に多くの線が…』という記事の後半では、Tさんという方から寄せられた「腹の先端部を隠す白い長方形のタグ状のモノにも、昆虫ピンらしきものが刺さっているのでは」との考察をご紹介していた。
そのTさんは、さらに「19番の写真のオツネントンボの周囲に線のようなモノが見える!」「極細の糸、あるいはテグスか」と騒がしくなっている件について、実はちょっと違うモノが存在するのではないかと感じておられるという。それは一体何なのか……!?
◆線のように見えるけれど実は…?
Tさんから頂戴したメールによれば、それは、トンボや蝶の標本を作ったことがある人、あるいは昆虫の研究をなさっている方なら必ず所有、使用している「展翅(てんし)テープ」のこと。標本を作る際に行われる「展翅」は、トンボや蝶を展翅板の溝に体部を載せ、羽をきれいに広げた状態で押さえておく作業のことだという。
これまではグラシン紙の半透明な展翅テープがスタンダードであったが、現在は湿気に強くて滑らず、かつ静電気が起きないポリプロピレン製の透明なフィルムを使用する方も増えているようだ。
◆0.15mm厚のプラスチック板で実験
Tさんは、なぜ線ではなく展翅テープだと感じたのだろうか。その根拠について実験を行い、画像も何点か添付してくださった。
今回、0.15mm(=150ミクロン)のラミネートフィルムを利用し、小さくカットして実験を行ったというTさん。その厚みのフィルムは、診察券や会員券といったカードや、飲食店のメニュー表を作るのによく使用されているという。
なおポリプロピレン製の透明な展翅テープは、厚みが38ミクロンや60ミクロンのものが多いとのこと。Tさんは、そういったものが写真19番のオツネントンボの周囲に何枚か落ちていたのではないか、と感じたそうだ。
◆テープが落ちていれば写真の線や色味に変化が
テープが落ちていればその部分の線や色味に、わずかでも変化があるだろうとおっしゃるTさん。論文の写真を拡大してじっくりと見てみたところ、光の屈折による線のズレ、色味の違い、そしてボヤけがわずかながら生じていることに筆者も気づき、その部分を青い線で示してみた。
ちなみに、赤い丸で囲んだ部分は今話題の「V字に芝に絡ませた紐?の結び目」である。いずれも皆さんからメールで指摘されなければ、筆者はまったく気づかなかった。
Tさんは「他にも気になる場所が1か所ある」と図で説明してくださっているが、弊ブログの画像は鮮明度に限界があり、皆様がもしも確認される場合は、どうか以下の論文PDFを実際に開き、十分に拡大してご覧いただければと思う。写真No.19は、いずれも「9/25頁」で見ることができる。
■『J-Stage』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―
■『国立科学博物館』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―
◆展翅テープがなぜそんなところに?
写真19番のオツネントンボが、もしも生きた個体ではなく標本であった場合、展翅板から取り外してのディスプレーとなる。体長4cmほどの大変華奢なトンボであり、きわめて丁寧に扱う必要があったはずだ。
Tさんからのメールには、「そこに集中したため、展翅テープやピン(有頭シガ昆虫針)が落下したことに、気が付かなかったのかも知れません。しかも展翅テープが透明で、写真撮影時にも気が付かなかったのでしょう。19番の写真からは、脚を4本しか見つけることができません。やはりその時に落下してしまったのかも知れません」とあった。
◆まとめ:「たまたま異物が偶然写り込んだ」とおっしゃるなら…
そこに写っているのは、有頭の志賀昆虫針? そして糸? テグス? 紐? 展翅テープ? なぜ結び目が?
もしも「たまたま異物が落ちていて写り込んでしまった」などとご説明されるのであれば、「悠仁さまがお歩きになるというのに、庭園の芝地にはなかなか危険な物が散乱しているのですね」という話にもなるだろう。
(朝比奈ゆかり/エトセトラ)
その他の画像および参考:
・『川茂』展翅テープ
・『みんなの教育技術』トンボの「展翅(てんし)標本」
・『新ひむか昆虫記』クロスジギンヤンマ
・『エトセトラ・ジャパン』悠仁さまトンボ論文の写真No.19は想像以上に多くの線が… 白い糸には結び目、腹先端部を隠す白いモノにも金属ピンか