【皇室、徒然なるままに】第30話 統一教会と北朝鮮 統一教会はコングロマリット 西村 泰一
統一教会というのは単なる宗教団体ではなく、かなりの関連団体をもっており、ある意味でコングロマリットと言っても過言ではない存在である。
昨年8月、NEWSポストセブンは『旧統一教会の関連団体・企業一覧図 紀藤弁護士は「ここまで手広いケースはない」』という記事で、そのあたりについて詳しくまとめておられた。
岸田文雄・首相が自民党と旧統一教会との“絶縁宣言”をしたにもかかわらず、その後も明らかになる議員らの信者からの選挙協力や、教会関連施設への訪問。岸田首相は関連団体について「旧統一教会に関係しているという認識がなかった」という釈明に追われる始末だ。では、実際にはどういった関連団体があるのだろうか。一覧図を作成した。
安倍晋三・元首相が2021年9月にビデオレターを送っていた「天宙平和連合(UPF)」など、旧統一教会とつながりを持つ多数の関連団体。全国霊感商法対策弁護士連絡会提供の資料には、疑惑段階のものを含め100を超える団体名が並んでいた。
◆驚くほど多い教会の関連団体・企業
Wikipediaには、主に文鮮明が目的を達成するために設立した「摂理機関」と呼ばれる関連団体・企業一覧が掲載されているが、とにかく驚きの長さである。2023年10月2日の時点で掲載されていた分のみ、スクリーンショットで紹介してみたい。
先日Youtubeで拝見したが、統一教会からの命令でハッピーワールド社に出向し、そこで働いていた元会員さんが当時の話をされていた。形の上ではものすごい高額のお給料をもらえることになっていたのに、実際は殆ど全額近くが天引きされ、教会への寄付とされていたそうだ。
統一教会の解散という話が議論の俎上にあがるようになってきたが、日本の宗教団体としての統一教会という組織だけ解散しても、これらの関連団体を手つかずでそのままにしておいて、それでうまくいくのだろうかという疑問が脳裏を霞める。なかなか難しい問題とは思うが――。
◆世界日報社に関して
たとえば筑波大学第3代学長(1980.4.1~1986.3.31)を務められた福田信之先生は、1992年に『文鮮明師と金日成主席』という本を世界日報社から出版されている。
この世界日報社は「世界日報」という新聞を発行しているが、これは創価学会でいう聖教新聞みたいなもの。「サンデー世界日報愛読者の会」なる読書会もあるといい、日本会議の方々は毎日これを愛読しておられると聞く。また、この「世界日報」の沿革をWikipediaで見てみると、産経新聞とも無縁でなかったことがわかる。
◆日本人の献金は教会の最大の収益源
韓国の宗教に関する2015年のデータでは、多い順に無宗教 (56.1%)、プロテスタント (19.7%)、仏教 (15.5%)、カトリック (7.9%)、儒教(0.2%)その他となるそうだ。
つまり人口の3割弱をキリスト教信者が占め、日天道教、円仏教、大倧教や甑山道といった新興教団はあるが、布教の壁は厚いという。
韓国で統一教会がどう受け止められているか、朝日新聞の『旧統一教会、韓国ではビジネス集団? ホテルや自動車…北朝鮮にも』という記事から見てみよう。
教団は「布教活動より、ビジネスに徹している印象」(韓国の政界関係者)だという。韓国の新興宗教に詳しく、教団についての複数の論文がある釜山長神大の卓志一(タクチイル)教授は「日本から集めた献金を元手に、傘下企業が営利活動を展開し、教団の資金力を支えている」とみる。
かつて創始者の故・文鮮明(ムンソンミョン)氏に次ぐ地位の「世界会長」を務め、今は教団に批判的な立場をとる郭錠煥(クァクジョンファン)氏は朝日新聞の書面インタビューで、1997年に韓国などが通貨危機に見舞われた際、「関連企業も破産の危機に直面した。日本の信者による支援が、危機の克服に大きく貢献した」と述べた。
◆統一教会は反日、皇室に強い嫌悪感が
統一教会は、元は「世界基督教統一心霊協会」と名乗っていた。そして、「統一」とは韓国のすべてのキリスト教会を霊的に統合させるという意味で、設立後はどんどん海外での布教活動に力を入れていった。
日本の高校を卒業した文鮮明は、それなりの縁を日本に感じていてもよいはずだが、それにしては「韓民族」に根付く特徴的な反日思想をそのまま引き継いでいているのである。
特に顕著なのが、韓国を「アダム国」とし、日本を「エバ国」とする訳のわからない思想。日本は韓国に対してとてつもない罪を犯したのだから、それを償わなければいけないと贖罪を説く。日本からのみ法外な寄付金を集め、教団の資金源とすることも、この観点から正当化されることになる。
週刊現代の『「昭和天皇を暗殺する」「日本の女は男の寝床に這いつくばる」…!統一教会教祖が信者に語っていた、凄まじすぎる「日本憎悪の言葉」』という記事からも、彼がどれほど日本を、そして日本の皇室を嫌悪し、攻撃しようとしていたかが読み取れる。
〈日本は一番の怨讐の国でした。二重橋を私の手で破壊してしまおうと思いました。裕仁天皇を私が暗殺すると決心したのです〉(第381巻より。原文を日本語訳したもの・大意。以下同)
〈裕仁天皇を二重橋を越えて殺してしまおうとした地下運動のリーダーだったんです。こうした学生時代には、日本の婦人たちに無視されたこともたくさんありました〉(第305巻より)
昭和天皇暗殺を考えていたことや、皇居の正門に架かっている二重橋を破壊しようとしていたという旨の発言は、第306巻、352巻、402巻にも記録されている。
文氏が実際に地下運動のリーダーだったかについては明らかになっていないが、韓国人信者に対して自身が「昭和天皇暗殺を計画した抗日運動の闘士であった」と話していた可能性は高い。
◆なぜ文鮮明は「アダムとイブ」などと
旧約聖書『創世記』にあるアダムとイブの話を簡単に説明すると、こんな感じになる。
世界が出来て間もないころ、エデンの園には、神様によって造られた初めての男の人間アダムが暮らしていた。その伴侶となるべく、続いて女のイブが造られた。
たくさんの木々の真ん中には「善悪の知恵の樹」と「生命の樹」があり、ふたりは神様から「これらの木の実は食べてはいけない」と言われていた。
あるとき悪魔の化身であるヘビが現れ、「善悪の知恵の樹」の木の実を食べるよう誘惑し、最初にイブが食べ、勧められるとアダムも食べてしまった。
するとふたりは、自分たちが裸であることが急に恥ずかしくなってイチジクの葉で腰回りを隠すように。その様子に神様はふたりが「木の実を食べた」ことを悟り、「命の樹」を守るために彼らをエデンの園から追放した。
怒った神様により、ヘビは腹這いの生き物と化し、人間は食べ物を得るため必死に働くべき生き物に。女の出産をひどい痛みが伴うものとさせた。
自堕落になり悪さを覚えた人間たちに神様は人間に失望し、大洪水で滅亡させようと計画。ところが清廉潔白な人間ノアの存在を知り、大洪水の前にノアにだけは箱舟を作らせた。一家は安全に避難して繁栄し、神様はそれを祝福した。
この話から、なぜ文鮮明は韓国が「アダム国」で日本が「エバ国」などという使い方をしたのか。訝しく思われる方は多いと思われるが、それは全くその通りである。
統一教会の聖書解釈というのは、こういう破天荒さが常に付きまとい、そのため、まともなキリスト教団体からは全く相手にされていない。
ただし、アダムというのは人類の最初の男で、最初の女イブはアダムのあばら骨から造られた。今なお男尊女卑的な考え方が根強く残る韓国に、そのあたりが好まれたのかもしれないと思うのは私だけであろうか?
◆在韓日本人が1万人を超える
「在日韓国人」や「在日朝鮮人」という言葉を聞かれた方は多いと思われるが、なんと「在韓日本人」が1万人を超えたとう話を聞いた。ただし、統一教会の合同結婚式で韓国の男性と国際結婚された、日本人の女性が大半を占めるそうである。
韓国でも農村部には嫁に来てくれる女性が少ないといい、そんな男性たちに対し、統一教会は「高学歴の日本の女性と結婚したくありませんか?」と勧誘を行うという。
ところが、そういう理由で入信した男性というのは熱心な信者とは言えない。結婚した日本人女性はそれほど大切にはされず、働き手となる子供を産んでくれれば言うことなし、といった感じらしい。
一方の日本人女性はというと、敬虔な統一教会の信者で、エバ国日本の背負った原罪を贖うべく、苦行続きの渾身の日々を送ることとなるそうだ。やれやれ。
◆日本人の献金が北朝鮮のミサイル開発資金に
文鮮明氏の出身は北朝鮮の平安北道定州であり、統一教会は親北である。
1991年にソビエト帝国が崩壊すると、反共を売り物にしていた統一教会は「悪の帝国」と呼んでいた敵を失うこととなり、11月に文鮮明は金日成国家主席を電撃訪問するなど北朝鮮に急接近する。
両者の出会いを取り持った人物は、金剛山国際グループの朴敬允(パク・ギョンユン)会長。アメリカ国防情報局の文書によれば、文鮮明は金日成と刎頸の友の契を結ぶために、約4,500億円を金日成に献呈したそうである。もちろん出処は日本で集められた献金であり、皮肉にもそれが北朝鮮のミサイル開発の資金となった。
1993年5月、エンジンを強化した中距離弾道ミサイルのスカッドD(ノドン、射程約1300キロ)を日本海に向けて撃ち込んだ北朝鮮。ノドンは日本のほぼ全域を射程に収める。北朝鮮が「人工衛星運搬ロケット」として1998年8月に発射したテポドン1は、初めて日本列島上空を通過し、日本の北朝鮮に対する世論が硬化する契機になっている。
如何わしい形で集めた資金をサリン製造等に費やし、防犯上の観点から公安の観察下におかれることとなったオウム真理教。北朝鮮のミサイル開発等を資金面から援助している統一教会に関しても、防衛上の観点から、かなり厳しい措置を講じることが求められる。
◆平和自動車とは
文鮮明は金日成に献上した4,500億円の見返りとして、自身の生まれ故郷である定州市について99年間の借地権と、北朝鮮でビジネスを展開する許可を得た。その最たるものが平和自動車である。Wikipediaにはこのように示されている。
統一教会は平和自動車を北朝鮮に無償譲渡した後は、流通業(スーパーマーケット等)に進出している。そのあたりについて、YouTubeにはTBS NEWS DIGによる動画もある。
JB Pressによる昨年8月の『脱北者がひもとく、統一教会による北朝鮮支援の30年史/北朝鮮での布教を目指した文鮮明と、北朝鮮に流れ込んだ信者の寄付』という記事も参照されたい。
◆岸信介一族、統一教会、北朝鮮の奇妙な三角形
『東京新聞』は昨年7月、『旧統一教会と岸一族と北朝鮮 この奇妙な三角関係をどう考えるべきか』という記事を掲載した。
日本人にとって関心の高い拉致被害問題について、次を引用しておく。
山口大の纐纈こうけつ厚名誉教授(政治学)は「岸氏や兄の安倍氏の選挙区がある山口県は、朝鮮半島に近い。岸一族はさまざまな『半島ルート』を持っている」と語る。その力を思わせる一件として、2002年の拉致被害者5人の一時帰国を挙げる。当時、官房副長官として小泉純一郎首相の訪朝に同行したのは安倍氏だ。
この拉致被害者5人の帰国のために、統一教会と北朝鮮の太いパイプが利用されたというのは、政界の常識である。そして既に不幸にも他界されてしまったが、安倍元総理は拉致問題の全面的解決に、ふたたび統一教会と北朝鮮の太いパイプを利用するつもりであったようである。
◆金大中と統一教会と北朝鮮の奇妙な三角形
昨年7月にはまた、コリア・リポート編集長の辺真一さんによる『「統一教会」の「後方支援」を受けた金大中政権 経済再建と南北統一で連携!』という記事も目を引いた。
1989年10日、韓国の新羅ホテルで文鮮明が自ら「中国パンダ自動車工場都市造成説明会」を開いた際、当時は平民党総裁だった金大中が来賓として出席していた。
中ソ地域に4つの工業団地を新たに建設する計画で、それはやがてアジア・太平洋時代の核心拠点となるとの構想を熱く語った文鮮明。その9年後、1998年2月に金大中がついに大統領の座に就いた翌日には、文も政界への進出を図ろうとしたとある。
上記の「岸信介一族、統一教会、北朝鮮の奇妙な三角形」の「岸信介一族」の部分を、巷間民主主義の権化のように思われている「金大中」の名に置き換えても成り立つということは、私にとっても大変な驚きであった。
恐るべし、統一教会である。
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それでは第30話の締めくくりの1曲、『We will follow You only (우리는 당신밖에 모른다) – English karaoke』をどうぞ!
(理学博士:西村泰一/画像など編集:エトセトラ)
【皇室、徒然なるままに】のバックナンバーはこちらから。
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【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月 洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月 京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月 筑波大学(数学)
画像および参考:
・『NEWSポストセブン』旧統一教会の関連団体・企業一覧図 紀藤弁護士は「ここまで手広いケースはない」
・『Wikipedia』統一教会関連の企業と団体
・『Wikipedia』世界日報(日本)
・『朝日新聞DIGITAL』旧統一教会、韓国ではビジネス集団? ホテルや自動車…北朝鮮にも
・『Wikipedia』平和自動車
・『YouTube』TBS NEWS DIG ― 「新たな手法で献金」… 信者家族が証言【報道特集】
・『週刊現代』「昭和天皇を暗殺する」「日本の女は男の寝床に這いつくばる」…!統一教会教祖が信者に語っていた、凄まじすぎる「日本憎悪の言葉」
・『東京新聞』旧統一教会と岸一族と北朝鮮 この奇妙な三角関係をどう考えるべきか
・『Yahoo! News』「統一教会」の「後方支援」を受けた金大中政権 経済再建と南北統一で連携!
・『YouTube』 Moranbong Band HD ― We will follow You only (우리는 당신밖에 모른다) – English karaoke