【皇室、徒然なるままに】第18話 研究者としての川嶋舟氏 西村 泰一
こちらのブログに『素朴な疑問:川嶋舟氏は東京農大の良き広告塔なのか 大学の実情に詳しい人に話を伺う』という記事があります。秋篠宮紀子様の実弟・川嶋舟さんの研究者としての実力は如何程かをお知りになりたいようなので、お手伝いさせていただくことにしました。
まず川嶋さんは「Wikipedia」にも登場されているようなので、そこにあがっている研究業績を見てみましょう。
∙ 2018-03「ホースセラピーと地域づくり」『公園管理研究』11 72-79,
∙ 2014-06「ホースセラピーの現状 (特集 馬とはどのような生き物か? : 馬と人の出会いから未来へ)『ビオストーリー—生き物文化誌 : 人と自然の新しい物語』21_56-59,
∙ 上田毅,物江貞雄,内山秀彦との共著2013-06「東日本大震災におけるコンパニオンホースの被災状況と対応について」『東京農業大学農学集報』58 (1), 1-5,
∙ 2013-01「東日本大震災と相馬野馬追祭り」『Hippophile』(51) 15-18,
∙ 相馬武久, 齋藤奈美子, 河口雅登,長田博との共著2011-10「1999-2007年の日本における抗犬ジステンパーウイルスIgM抗体の陽性率」『環境と病気』20 (1-2), 1-6,
∙ 2011-10「紀子さま弟 被災地復興支援の記」『文芸春秋』89 (12), 348-354,
∙ 相馬武久, 田原口智士,原元宣との共著2011「わが国のペットショップにおける犬アデノウイルス1型の集団感染」『動物臨床医学』20 (2), 47-51,
∙ 高橋, 俊一, 朝日香子, 酒井知沙, 寺本清,田原口智士, 原元宣との共著2010-10「Feline calicivirus (FCV) の猫に対する繰り返し継代による性状の変化」『環境と病気』19 (1-2), 8-14,
∙ 相馬武久,長田博, 石井博との共著2010-10「臨床例における猫コロナウイルスPCRの診断的価値」『環境と病気』19 (1-2), 1-7,
∙ 颯田, 葉子2009-12「日本在来馬のミトコンドリアDNA多型」『東京農業大学農学集報』54 (3), 211-213,
∙ 2009-07「日本在来馬の歴史と現状」『ビオストーリー』11 92-106,
∙ 橋口勉, 高田勝,秋篠宮文仁殿下, 伊藤愼一, 河邊弘太郎2008「中国雲南省西双版納たい族自治州における在来鶏の形態形質の遺伝子構成」『山階鳥類学雑誌』40(1), 43-52,
これらは実は、すべて和文です。私の研究分野は主として数学ですが、数学に限らず、自然科学や工学でのオリジナルな研究成果は「英文で著す」ことが原則となっています。
ここで扱われているのは普遍的な真理であり、「日本では成り立つがフランスでは成り立たない」といったものではないです。その論文で開陳されたアイデアは国際的な場で検討評価されるべきですが、日本語で書かれていては日本人しかわかりません。そのため、現在は世界共通語であるEnglishで書き表される必要があるのです。
たとえば、最近お姿を見かけなくなってしまった小保方晴子さんですが、彼女のSTAP細胞に関する論文は英文で書かれ、国際的な雑誌『Nature』に発表されました。そうであればこそ、そこに書かれているSTAP細胞を生成するためのレシピを日本以外の国の方が追実験してみて、何度やっても駄目であることを確認することができるのです。
川嶋舟さんについては、Wikipediaだけでなく、東京農業大学・公式HPの「教員・研究情報」というページも確認してみました。するとそこに1点、国際会議で英語による発表を行ったというものを見つけました。
その国際会議は、韓国の全州市で2014年10月に開催されたそうですが、なぜか議事録が存在しないようです。普通は国際会議をやると議事録を発行し、川嶋さんがどういう発表をされたのかそこに記されるはずなので、ちょっと不思議に感じました。
もちろん、その発表内容を川嶋さんご自身がネット上で明らかにすることもできるのですが、それもなさっておられないようですね。いずれにしても、英文での論文が見当たらない以上、川嶋舟氏の研究者としての評価は…。
「nothing」
なお、川嶋さんと同じく最近何かと矢面に立たされる秋篠宮文仁さんですが、こちらはちゃんと英文の論文もある、まともな(decent)研究者です。まあ人柄は大分変わってますが。信用してもらえないかもしれませんので、論文を2本ほど紹介しておきます。
ところで、数年前に一般家庭のお茶の間でも話題になった、望月新一さんの「数学の超難問であるABC予想をついに証明した」という大論文ですが、これは英文で著されたものの、国際数学界では残念ながらデタラメとの評価が下っています。
この論文に死刑宣告を与えたのは、2018年に30歳でフィールズ賞を受賞したボン大学のペーター・ショルツェ(Peter Scholze)博士と、ゲーテ大学のジェイコブ・スティックス(Jakob Stix)博士のふたりで、共にドイツの数学者です。
一般に研究者としての自身の評価を知りたければ、研究者向けのSNSである『ResearchGate』に登録して氏名で検索し、“Research interest score” というスコアを確認することをお勧めします。また、気になる研究者がいた場合、ここに登録してあれば「どのくらいの位置にあるのか」もすぐ分かります。
その望月先生のスコアは434点とありました。全研究者のなかで85%より上に位置していることがわかります。もうひとり、農学の研究者であるKenlo Nasaharaという私の畏友についてみてみましょうか。
彼のResearch interest scoreのスコアは1498点で、全研究者のなかで95%より上に位置していることがわかります。私は今なら735点ほどで90%より上。なかなかおもしろいでしょう。
残念ながらShu KawashimaもFumihito Akishinonomiyaも、ResearchGateには登録されておらず、そのスコアや評価の程はわかりませんでした。
(理学博士:西村泰一/画像など編集:エトセトラ)
【皇室、徒然なるままに】のバックナンバーはこちらから。
編集後記: Wikipediaで川嶋舟氏のページを久しぶりに拝見したが、人物、名誉職・役員、そして研究業績まで、相変わらず立派な内容を維持しておられるようだ。「Wikipediaに自身のことを書いてはならない(PRしてはならない)」というのが一般的な認識だと思うが、ここまでキレイにまとめられると、ひょっとして…という印象も。
興味深いのは「人物」の欄だ。
「誰もが自分の価値を許容される社会となる」ことを目指すことを信条とし、ホースセラピーのプログラムの開発、実践および教育研究を行ってきた。「訪問かいこ」(訪問介護の枠組みの中で養蚕を行う)を開発しサポートしてきた。
大金を受け取ってお食事や記念写真をご一緒に、といった報道があったはずだが、そのあたりは記載されていないようだ。(朝比奈)
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【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月 洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月 京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月 筑波大学(数学)
画像および参考:
・『Wikipedia』 川嶋舟
・『ResearchGate』Complete Mitochondrial Genome Analysis Clarifies the Enigmatic Origin of Haplogroup D in Japanese Native Chickens
・『ResearchGate』Comparative morphological study of skeletal muscle weight among the red jungle fowl ( Gallus gallus ) and various fowl breeds ( Gallus domesticus ) November 2021
・『ResearchGate』Shinichi Mochizuki
・『ResearchGate』 Kenlo-Nasahara
・『東京農業大学』教員・研究情報 講演・口頭発表等 ― 川嶋舟