トンボ論文のおかげでトンデモ工事発注事案が露呈? 宮内庁の概算要求とGoogle Earthから
秋篠宮家の長男・悠仁さまが発表したトンボ論文が波紋を広げている。最近気になっていたのは、赤坂御用地の池の各種工事がトンボ調査にどれほどのダメージを与えていたかであったが、宮内庁がPDFで公開している入札や概算要求の情報を紐解いているうちに、別の疑問にぶち当たってしまった。今回はそちらをシェアさせて頂きたいと思う。
◆皆さんから最近いただいたメールより
実はこの所、数名の方からこんな内容でメールを頂戴していた。まずはそちらをご紹介させていただきたい。
「秋篠宮邸池(表町池)は目の前の宮邸工事で壊滅状態。その他の池も毎年のように工事続きでは、トンボの生息状況など調査しようもないだろう」
「橋の架け替え工事、池の浚渫(しゅんせつ)工事(※1)など、環境の変化やその後のことを明記しなければ、正確なデータとして受け止められない」
・赤阪御用地菖蒲池改修工事 2010年12月21日から2011年3月30日まで
・赤阪御用地中の池浚渫工事 2012年12月11日から2013年3月15日まで
・赤阪御用地大池擬木橋(※2)架け替え設計
・赤阪御用地大池浚渫ほか工事 2013年11月14日から2014年3月14日まで
「2012年から17年までは『調査が少なかった』なんて書かれているが、工事現場付近はトンボ調査どころか立ち入り禁止でしょう」
「最も調査に適しているのは秋篠宮邸池とも呼ばれる表町池。なのに今回の論文に使用された写真は2021年に3件、2022年に3件だけ」
◆浚渫(しゅんせつ)工事、擬木橋とは?
浚渫(しゅんせつ)工事(※1)とは、水底をさらい、土砂を取り去ること。ヤゴ(幼虫)もさらわれ、重機やダンプが出入りし、トンボが住めるような環境ではなくなる。この工事をすると、トンボの数が戻るまで5~6年はかかるもようだ。
擬木橋(※2)とは、石やコンクリートを木の幹や枝に似せて作った橋のこと。こちらは有栖川記念公園にある擬木橋だが、歩道ばかりか車道でも擬木橋が造られることはあるようだ。
メールで頂いた内容から該当する部分を論文から探し、読み返すなかで、筆者はふと「それでも立ち入って調査を行っていたのなら、工事は池の極めて狭い範囲だけだったのかもしれない。となると、(お得意の)高額な工事発注の事案もあったかも…」と思った。
そこで頼りにしたのは、宮内庁の当時の概算要求額とGoogle Earthであった。
◆宮内庁による平成22・24・25年度の概算要求
宮内庁は平成22年度(2010年)の概算要求で、皇室用財産修繕費のうちの庁費・各所修繕に『赤坂御用地菖蒲池改修事業』を90,031,000円で計上している。
こ、こんな単純な池に、藤棚のようなものを設けて遊歩道をジグザグに設ければ、9,000万円になるというのか…!?
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宮内庁はまた平成24年度(2012年)の概算要求で、「皇室用財産修繕費」のうちの庁費・雑役務費として、『赤坂御用地大池擬木橋改修工事に伴う設計業務』を15,309,000円で計上している。
いやはや、小さな池の改修工事に9,000万円、小さな擬木橋の設計業務に1,530万円もの予算を組むつもりだったとは、宮内庁の職員の経済観念はいったいどうなっているのだろう。もちろん入札時の予定価格はそれより低く設定され、それよりさらに低い額で落札されていたとは思うが…。
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再び平成24年度(2012年)の概算要求の資料に戻り、さらにスクロールしていくと「各所修繕」という項目がある。そこに『赤坂御用地中の池・大池しゅんせつ工事(2ヵ年計画第1年度)』として、13,282,000円という金額が示されていた。
そして何やら追加の調査が必要になったのか、平成25年度(2013年)の概算要求では、皇室用財産修繕費の庁費・雑役務費として『赤坂御用地大池しゅんせつ計画に伴う堆積土調査等』なるものを、2,564,000円で計上している。
さらに下にスクロールしてみると、各所修繕の欄に『赤坂御用地中の池・大池しゅんせつ工事(2ヵ年計画第2年度)』として、18,464,000円という金額が示されていた。
大池とはどれほど大きいのか、この度の悠仁さまによるトンボ論文のなかの写真をご覧いただきたい。
この程度の池で浚渫工事が2ヵ年計画とは、とにかく驚くばかり。たとえば、沖縄県北谷町美浜のサンセットビーチ沖側での航路浚渫工事は2021年9月に着工し、あれだけ広大な面積でありながら、2022年2月末には工事が完了していたではないか。
◆浚渫工事とはいえ、立ち入り禁止区域はごく一部だった…!?
続いて注目したのは、「浚渫工事がありながらトンボの調査も同時に行われていた」という事実である。そこで筆者は、工事は決して大規模なものではなく、立ち入り禁止区域はごく狭い部分だけだったのでは…と考えた。
大池擬木橋なるものは、一体どこにあるのか。このたびの『赤坂御用地のトンボ相』の論文で、地図の⑥として示されているのが大池で、その池と擬木橋をGoogle Earthで確認してみた。
迎賓館との間には、東西に延びる長い遊歩道があり、そこには擬木の柵のようなものがあったが「橋」と呼ぶには無理がある。そして、大池の北西には丸い中州があるが、その周辺に擬木橋は確認できなかった。消去法で行くと、この緑色の丸で囲んだ部分が怪しいように感じる。
まさかこの橋のあたりの工事に2年も、そして設計と浚渫を合わせて4,700万円もかけたのだろうか。
また上の地図を見る限り、その橋の奥までかつては水があったようだが、それがなぜか干上がってしまっている。ひょっとして、2年がかりで行った大池での浚渫工事とは、このわずかな部分のことだったとか…!?
ちなみにこちらは、2020年9月6日にテレ東BIZがYouTubeにアップした『悠仁さま熱心にカメラ談義…【皇室ちょっといい話】(5)』という動画からのスクリーンショットである。
そして秋篠宮邸のすぐ近くにも、砂利道の細い橋があるそうだ。
◆まとめ
そういえば、秋篠宮邸の改修増築工事についても、設計の段階でダラダラ時間をかけ、その時点でとんでもない額の費用がかかっていたという。歩道の改修、橋の改修、水底の浚渫と工事が、各池を舞台にダラダラと続いていたのは、噂される手口がまさかの池でも…ということ…!?
トンボの記録と工事の内容を照らし合わせていただけなのだが、筆者としては、とんでもない副産物に出会ってしまった気分だ。
(朝比奈ゆかり/エトセトラ)
画像および参考:
・『4travel.jp』東京都心の紅葉 都民の憩いの公園、有栖川宮記念公園をめぐります。
・『宮内庁』公共調達の適正化について(平成18年8月25日付財計第2017号)に基づく競争入札に係る情報の公表(公共工事)
・『J-Stage』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―
・『宮内庁』皇室費所管(皇室費)平成22年度歳出概算要求書
・『宮内庁』皇室費所管(皇室費)平成24年度歳出概算要求書
・『宮内庁』皇室費所管(皇室費)平成25年度歳出概算要求書
・『Google Earth』赤坂御用地・大池
・『YouTube』テレ東BIZ ― 悠仁さま熱心にカメラ談義…【皇室ちょっといい話】(5)(2020年9月6日)
・『エトセトラ・ジャパン』秋篠宮邸なぜ改修・増築工事に50億円も…? 一級建築士さんは「工事費の融通が新たな財布かも」と