【皇室、徒然なるままに】第40話:死んだトンボを甦らせる稀代の天才魔術師 プリンス・ヒサヒト  西村 泰一

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白い丸いモノがオツネントンボの首元に(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
左の頸部には白い端子のようなモノが(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)

【悠仁論文で話題のNo.19 の写真】

私は悠仁論文を読んで、全く面白いと思わなかった。むしろこのブログの朝比奈さんも書いている通り、No.19の写真が「ヤラセではないか」と話題になり、写真を緻密に解析して噓を論理的に暴く人たちが大勢いることのほうに大変感銘を受けた。皆さんの理論の運びは第一級のものである。

悠仁論文は高校生の単なる夏休みの課題とかではなく、学術論文として世に問われているため、疑問点が多いことについてもきちんと紹介しておく必要を感じる。こちらのブログのうち、とりあえずNo.19の写真の欺瞞性を論じた最初の3本について英語でまとめ、研究者を対象としたSNSに投稿してみたので、興味のある方は御覧いただきたい。

『ResearchGate』Oops !…Prince Hisahito did it again !  ―Hirokazu Nishimura

 

このトンボが生きているかどうか、議論の余地があるとお考えの方もいるようであるが、死んでいることは明白であろう。どこの世界に、昆虫針を杖代わりにして飛んだり止まったりするトンボがいると言うのだろうか?

これはひょっとして昆虫針だろうか(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
これは昆虫針では…?(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)

 

続いては、テレビの世界における「ヤラセ」について少し話をしてみたい。

 

【ヤラセ番組】

私自身が「これぞヤラセ番組の鏡」と推す『川口浩探検隊』という番組をご紹介しよう。

1978年から1985年まで毎週水曜日の夜に放送された『川口浩探検』シリーズは、男たちがサバイバルをかけ冒険を繰り広げるもので、日本中の少年少女らがテレビの前に釘付けになった。

川口浩探検隊を率いる川口浩さん(1936ー1987)は、父親が大衆小説で一世を風靡された川口松太郎さん(1899-1985)である。川口浩さんは慶應義塾高等学校を中退して「俳優座演劇研究所」に入り、1956年(昭和31年)に俳優としてデビュー。映画『裁かれる十代』ほか大映現代劇の若手二枚目トップスターとして多くの映画に主演し、京マチ子・若尾文子・山本富士子・岸恵子らなどと共演されている。

1962年(昭和37年)、大映退社後に実業家への転身を図り、不動産管理会社である株式会社川口エンタープライズを設立。東京都文京区にある父・川口松太郎邸の広大な敷地を利用し、総工費7億円で自宅兼デラックスな賃貸および分譲マンション「川口アパートメント」を建てた。

入居者も有名人ばかりで、栗原玲児・藤村有弘・水谷八重子・水谷良重親子から始まり、1970年代に差し掛かると加賀まりこ・安井かずみ、千葉真一・野際陽子夫妻(1994年に離婚も引っ越すことは無かった)らが、また1980年代には月丘千秋らが住んでいたそうだ。

川口さんは1967年に芸能界に復帰し、不動産業と俳優業の二足の草鞋を履くようになった。同年、株式会社川口プロモーションを設立し、1969年(昭和44年)からは人気ドラマ『キイハンター(KEYHUNTER)』にレギュラー出演している。

 

そんな川口さんを語るとき、いまや伝説となったテレビ朝日系の「水曜スペシャル 川口浩探検隊』を外すわけにはいくまい。猛獣、UMA(ユーマ/Unidentified Mysterious Animal)、少数民族などとの出会いを求め、南半球のジャングルを中心に世界各地の秘境をめぐる。

全然知らない、見たこともないという方も多いと思われるので、とりあえずYouTubeにアップされている動画の『川口浩探検隊栄光の軌跡 生物偏 1』を御覧いただくのがいいだろう。

これを見てハマった人が、番組のDVDや川口探検隊のOBが書いた本を購入するという話も聞く。

人気番組『川口浩探検隊』の真実を暴く本も出版された(画像は『Amazon』のスクリーンショット)
人気番組『川口浩探検隊』の真実を暴く本も出版された(画像は『Amazon』のスクリーンショット)

 

この本の著者は、『文春オンライン』でこのように語っていた。

「そうそう、加藤事件もそうだし、ほかでもヤラセがあってね。世の中がちょっとピリピリして」 ここで言う“ヤラセ”とは2007年1月に放送された『発掘! あるある大事典』での“納豆ダイエット・データねつ造”である。この件で社会的にも大きな批判を浴びて、番組は打ち切りになっている。

 

小山の言葉を整理するなら、探検隊の書籍化の企画は番組終了直後(1986年)から何回かあり、最後に企画があったのは2006年後半から2007年初頭だったのだろう。

 

「探検隊に関しては別に墓場まで持っていくみたいな重い物をみんな背負ってるわけじゃなくてね。本を出そうかってなったのも『もう全部バラそうよ』っていう意図だったんですよ」

 

そんな計画が進んでいたとは。

 

「そもそもテレビで特番をやろうということになってましたからね。探検隊シリーズが終了したあとに全部バラす特番をね」

 

【藤岡弘探検隊】

テレビ局も、とにかく視聴率のとれる番組を作らなければならないので大変である。ひとつのいい方法は、以前に高視聴率を取った番組の二番煎じを作ること。こうして川口浩探検隊の二番煎じとして、2000年代には『藤岡弘探検隊』なる番組が作られた。それについてはこちらを御覧いただきたい。

 

ただ正直な感想を言わせてもらうと、やはり二番煎じは所詮二番煎じである。残念ながら、川口浩探検隊には遠く及ばなかった。

ちなみに『MATOMEDIA』というウェブサイトに、現代版ヤラセ番組のランキングが見つかったので、そちらの表から20位までをご案内しておきたい。

ヤラセだったとして世間にショックを与えた番組は多い(画像は『MATOMEDIA』のスクリーンショット)
ヤラセだったとして世間にショックを与えた番組は多い(画像は『MATOMEDIA』のスクリーンショット)

私は1986年の3月までは生まれ故郷の京都におり、テレビもそれなりに見たのであるが、つくば市に移ってからはテレビは全く見ていない。というか、そもそもテレビを持っていないので、これらがどんな番組かは全くわからない。

 

【「まぁいいか」では済まされない学術論文】

テレビ番組なら、後にヤラセとわかっても「楽しませてもらったし、まぁいいか」ということになるのであろうが、世の中が真剣に受け止める学術論文となると、そうはいかない。先の記事『人間失格後篇/悠仁論文と「宮内庁職員哀歌」』でも示したが、捏造論文を提出した方々の末路は哀れである。

『筑波大学』研究不正行為(盗用)の認定並びに修士の学位及び課程修了の取消しについて 2023.06.22

 

『毎日新聞』古川宇宙飛行士の研究で筑波大が論文発表、「不正なし」に異論 2023/1/11

 

『日本経済新聞』筑波大在職中も論文60本で不正 東邦大元准教授 2012年12月26日 22:24

 

『世界変動展望』論文捏造、改ざんで筑波大学を諭旨解雇になった柳澤明子(村山明子)が柳澤ファミリークリニックを運営! 2015-12-06

 

『Science Portal』JAXA精神ストレス研究で捏造、改ざんなど多数 研究者や古川飛行士処分へ 2022.11.28

 

『日本の科学と技術』東大分生研教授が実験ノート捏造を指示と結論

 

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それでは第40話の締めくくりの1曲、『【歌ってみた】 magician’s operation 【kradness】』をどうぞ!

(理学博士:西村泰一/画像など編集:エトセトラ)

【皇室、徒然なるままに】のバックナンバーはこちらから。


【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月  洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月  京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月  筑波大学(数学)

画像および参考:
『YouTube』 Kradness ― 【歌ってみた】 magician’s operation 【kradness】

『J-Stage』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―

『YouTube』 hirosuke316 ― 川口浩探検隊栄光の軌跡 生物偏 1

『Amazon』水曜スペシャル 川口浩 探検シリーズ ~未確認生物編~ DVD-BOX (通常版)

『Amazon』ヤラセと情熱 水曜スペシャル”>『川口浩探検隊』の真実 単行本(ソフトカバー) – 2022/12/22

『文春オンライン』「親にも真実は言えないわけですよ」『川口浩探検隊』幻の“ネタばらし”特番が放送できなかったワケ

『YouTube』 tanken00 ― 藤岡弘、探検隊シリーズ 第5弾の予告編

『MATOMEDIA』やらせだったテレビ番組まとめ22選!衝撃ランキング【最新版】

『エトセトラ・ジャパン』第39話:人間失格後篇/悠仁論文と「宮内庁職員哀歌」