「安定的な皇位継承のための懇談会」 “静謐な環境” とはお酒を伴うただの雑談会だった可能性

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女性天皇容認の動きに最も影響を与えた功労者とされる、園部逸夫・元最高裁判事が遺してくださった重要な情報。少し遅くなってしまったが、週刊文春10月3日号の『元最高裁判事・園部逸夫氏の遺言』を読んだ感想を書かせていただきたいと思う。



2005年、女性天皇を容認するための皇室典範改正案が一旦はまとまった小泉政権。その有識者会議では、座長代理でもあり『皇室法概論』『皇室法入門』といった著書を持つ元最高裁判事の園部逸夫氏の存在が、本当に大きいものだったようだ。

その園部氏が今年9月に亡くなられたが、筆者は文春の記事を読んで驚いてしまった。2019年に園部氏は同誌の取材に、悠仁さまがいらっしゃる現状では女性天皇を議論することは控えるべき、といったお考えを示していたというのだ。

 

だが2023年になると、園部氏は文藝春秋や弁護士ドットコムに、改めて「女性・女系天皇の容認を」と話しておられた。となると、週刊文春の記事はそれとは違う何かを私達に伝えたかったのではないだろうか。さらにじっくりと記事を読んでみると、目立たない小さな部分に意外な言葉を見つけることとなった。

もし麻生太郎氏もその記事を読んでおられたら、多分ギョッとしたことだろう。

 

 

◆麻生太郎座長は「静謐な環境」でと主張

2023年11月中旬、岸田文雄前首相は懇談会のトップに麻生太郎副総裁を置き、『安定的な皇位継承の確保に関する懇談会』なるものを再開させた。多くの国民の願いである敬宮愛子天皇論は無視し、女性宮家の創設と旧宮家の男子の皇籍復活についてのみ議論する会である。

そこで麻生氏は「皇室のあり方は我が国の根幹をなす極めて重要な課題。限られたメンバーで静謐(せいひつ=静かで落ち着いた)な環境の中で議論を深めてまいりたい」と述べ、ヤフーニュースは「国民の重要な関心事である皇位継承問題の議論を、なぜ堂々と公開しないのか」というコメントで炎上した。

案の定、議事録などはさっぱり上がってこない。それはなぜなのか。



 

◆2019年、園部氏は女性天皇論を断念

2019年の悠仁さまは、お茶の水女子大附属中学に進学されたばかりだった。小笠原作文の剽窃行為が発覚したのは2022年のことで、2019年は小室圭さん・眞子さん夫妻の話題は喧しかったものの、悠仁さまに不満を訴える国民はごく少数で、園部氏が「悠仁さままでの皇位継承順位を “ゆるがせ” にする必要はない」「女性天皇の議論を持ち出して愛子天皇にするのは難しい」という発言になったのも無理はないと思う。

 

しかし、2005年の有識者懇談会の実態を園部氏は赤裸々に語り、それに筆者は仰天した。まずは当時の有識者懇談会についてのWikipediaのページをご覧いただきたい。皇室の問題に詳しい専門家を揃え、何回にもわたり、いかにも真剣な議論が交わされていたような印象を抱く。

こういったメンバーが真剣に議論を重ねていったとばかり思っていたが…(画像は『Wikipedia』のスクリーンショット)
こういったメンバーが真剣に議論を重ねていったとばかり思っていたが…(画像は『Wikipedia』のスクリーンショット)

 

開催の日程は明示も議事録が見つからない(画像は『Wikipedia』のスクリーンショット)
開催の日程は明示も議事録が見つからない(画像は『Wikipedia』のスクリーンショット)

 

ところが園部氏は文春にこう語っている。懇談会を開いても、上記のメンバーのうち多くて6名ほどしか集まらず、少ない時は2~3人のみ。お酒やお茶の席でちょっと話す程度だったというのだ。

 

 

 

これらから分かるのは、専門家の先生方が大勢集まり、今後の皇室や皇位継承の在り方について真剣に話し合ってくださっている「はず」という国民の期待、信頼を、政府はまったく軽視していたという事実である。

たまたま「皇位継承順位は直系を優先した方がよい。戦後の世の中は男女同権である」といった考えを重視する園部氏が座長代理であったため、女性・女系天皇を容認しようという動きになっただけかもしれず、違う方が懇談会の中心にいたら、女性天皇論のジョの字も出なかったのかもしれない。

麻生太郎氏を座長に置き、そこに旧・統一教会との関りが疑われている議員が多々参加し、昨年11月から始まった『安定的な皇位継承の確保に関する懇談会』は、とにかく中身が見えない。園部氏の暴露内容を重ね合わせて考えると、麻生座長が主張した「静謐な環境」も、まさにお酒を飲みながらの「ただの雑談会」だったのではないだろうか。



 

◆園部氏は2023年、再び「女性・女系天皇を」と

週刊文春のその記事は、きわめて残念なことに「文藝春秋2023年2月特大号」に園部氏が寄せた『女性天皇を認めよ』の記事については一切触れていない。園部氏が国民に遺言として残したいのは、むしろこちらの思いではなかったのか。

園部氏は文藝春秋2023年2月号に「女性天皇を認めよ」を執筆された
園部氏は文藝春秋2023年2月号に「女性天皇を認めよ」を執筆された

 

そこでこの記事の最後に、弁護士ドットコムが2023年10月に掲載した『園部逸夫・元最高裁判事「女性、女系天皇を認めるべき」 皇室典範改正、進まぬ議論に提言』という記事から、園部氏が私たちに遺してくださった珠玉の言葉を抜粋で紹介させていただきたいと思う。

2019年には「悠仁さまがいらっしゃる現状では…」と発言された園部氏も、2023年には「女性・女系天皇を認めよ」と(画像は『弁護士ドットコム』のスクリーンショット)
2019年には「悠仁さまがいらっしゃる現状では…」と発言された園部氏も、2023年には「女性・女系天皇を認めよ」と(画像は『弁護士ドットコム』のスクリーンショット)

 

私は法学者として研究、議論を重ねてきましたが、現在の「皇統に属する男系の男子が継承する」という制度では、安定した皇室制度の維持は厳しいと考えています。皇室制度の維持のために何より優先すべきは安定した皇位継承であり、そのためには直系であることが重要です。

 

まず初めに大事なのは、皇室の具体的な状況を念頭に置かないことです。愛子内親王殿下、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下などのお名前をあげることなく、本来望ましい皇位継承制度のあり方を考えなくてはいけません。なぜ皇室制度が日本に必要なのか。必要だとすれば、女性天皇や女系天皇、女性宮家は認められるのか否かを考える。

 

日本の男性中心の政治は、日本を滅ぼすと思います。戦後、男女同権という言葉があれだけ叫ばれて、新しい考え方が入ってきたと思っていましたが、一体どこに行ってしまったのでしょうか。

 

法律は絶対的な存在ではありません。絶対的な存在は国民の意思です。何でも法律ありきなどということはありませんよ。国民が何を欲しているのか、何をどうしたいのか、「法律というのは、国民のために変えていくべきものだ」という気持ちをもって、法律を変えていけばいいわけです。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

画像および参考:
『弁護士ドットコム』園部逸夫・元最高裁判事「女性、女系天皇を認めるべき」 皇室典範改正、進まぬ議論に提言

『Wikipedia』皇室典範に関する有識者会議

『NHK』額賀衆院議長 女性皇族 結婚後も皇室に残る案には賛同得られた

『エトセトラ・ジャパン』国民の願い「女性天皇期待論」を徹底無視 自民党の皇位継承問題会議のメンバーを紹介

6件のコメント

  • 「まず初めに大事なのは、皇室の具体的な状況を念頭に置かないことです。愛子内親王殿下、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下などのお名前をあげることなく、本来望ましい皇位継承制度のあり方を考えなくてはいけません。なぜ皇室制度が日本に必要なのか。必要だとすれば、女性天皇や女系天皇、女性宮家は認められるのか否かを考える。」
    園部逸男氏の提言は御尤もです。しかし、少し気懸かりな点は予め「皇室の具体的な状況を念頭に置かない」を念頭に置いている処です。法律家として公平に進めたい望みを語っていらっしゃるのですが、切り取られて遣われる危うさを感じました。上記では鬼籍に入った人はいますが、未だ輩が遺っています。皇統譜に眞子シも遺ったままで皇族復帰、女性宮家創設を狙っていると思います。危険ですね。日本が脆弱にさせられている。
    兎に角、御卒業後の敬宮殿下は国民が期待以上の成果を上げられた現実に「徳仁天皇の次は愛子天皇が即位されると安泰」を実感しました。
    「法律は絶対的な存在ではありません。絶対的な存在は国民の意思です。」
    この遺言が心強く、自信を深めて希望を叶えようと決意しました。
    兵庫県知事選挙で斎藤知事が再選されましたね。投票率が上がり、若者の投票で決まったそうです。天晴れ。投票権がある人は自らの権利を行使してください。

  • 今回の衆院選で、自民党が集票マシーンとして本当に必要だったのは、公明党ではなく、統一教会だったと判明しました。だって、文鮮明の弟子たちと縁切りするや、あのザマですからね。
    報道特集の過去放映分で、神戸の自民候補と政策協定を結んでいた統一教会の協定文書がすっぱ抜かれ、ちらりと写った協定の第一条が、皇室問題に関するものだったことから、統一教会は何よりも皇統問題に重きを置いていたことがわかりました。もっとも如何にもTBSらしく、放送内では皇室についての言及一切なしでしたが。
    当該自民候補もベテランだったのに、今回あえなく落選してしまいました。

    統一教会をステルスの応援ボランティア要員として陰で使えていた限りは、有権者からの風当たりもなく、秋篠宮家を優先し、愛子天皇には絶対反対する一線と、夫婦別姓反対さえ貫けば、候補そのものは献金しなくてもあちらから動いてくれたし、朝鮮カルト色を隠し、ガチの日本の右翼として支援してくれたのです。麻生さんが、妹を皇室に嫁がせながらも、両陛下に弓を引く行動をとるのも、まだ統一教会との関係が実際には切れてはいないからではないか、と見ます。
    これまでの小選挙区での自民圧勝の構図とは、まさに愛子天皇を求める世論を無視することで得られた売国行為の結果だったんだと、このたびの選挙では思い知らされた感がいたします。

    園部氏の著作は、非常にわかりやすく、これが最高裁判事をされた方かというほどに洗練されたものでした。だからこそ、宮内庁の宦官たちに仕組まれて、大事なヒアリングの場を懇親会にするように、お膳立てされてしまい、これを拒否できなかったのではないでしょうか。
    官僚たちは、世論の支持は得やすいが、自分たちには好ましくない有識者をこうやって弄ぶことを平気でします。学者先生は、接待に不慣れなので、あっさり彼らの術中に陥れられやすい。
    後は、園部先生が何か書き残してはおられなかったか、です。
    自筆のメモ、日記、何でもいいので、会議の内実につき、書かれたものがあれば、ご遺族にはぜひ処分しないで、遺志を尊重し、公表していただけたらと願うばかりです。

  • 憲法第一条「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」

    「この地位」とはすなわち「天皇のありよう」ですが、このありようを規定する「要素」には継承者になる資格、継承ルールも含まれると考えるべきでしょう。

    つまり、国民の大半が継承ルールに納得していないのならば、国民の総意に基づいた「地位」といえるでしょうか?

    次代の継承を国民総意に基づかぬ継承ルールで強行すれば「国民の総意に基づかぬ地位」となり憲法違反になりませんか?これは重大事態です。

    政府は「静謐な環境での議論」などと詭弁を弄して国民の声を「聞こえぬふり」で排除している場合ではないのではありませんか?

  • 2019年の段階では、小笠原の件も、筑附入学の件も起きていない状況。また、敬宮様と悠仁様のご聡明さに、ここまでの開きがあることも分からなかった状況です。私が認識する限り、悠仁様の凡庸さが浮き彫りになったのは、筑附入学以降、それまでは、謎の作品集などで、ベールに包まれており、そして、敬宮様のご聡明さが動かぬものになったのは、成年のご会見でした。あの時期では、ある意味仕方がないと思います。他界した母が、敬宮様がご幼少の頃、まるで自身の孫のように、いつも私にしつこく話していたのを記憶していますが、残念ながら悠仁様の話は一切ありませんでした。我が母ながら、先見の明あり?

  • 8月7日ヤフコメにあったコメント     
       ↓
    >東大も10億なら手を打つんじゃないのか?全部税金だが(怒)   研究畑の人間にとったら、キ印馬鹿女がキーキーうるさいから、金で手を打って犬か猫が校内に入り込んだくらいの気持ちで放置しておけばいいくらいの意識だと思うけどね。嘘でもなんでも合格通知出して4年間飼って卒業証書出せばいいんだから。それで二桁億単位の研究費が入るなら、「ま、いいか」ってなるかもよ。研究者だってヒサが優秀だなんて誰も信じないし、同時期に大学にいた連中は、実に面白い生き物を観察できるしね。頭が良すぎる連中の考えることは一味違うから、なんとも言えない。

  •  この会議にも、このように闇の力が働いていた、、
    公正な審議なんかできるか?
      ↓   
    >まずは【作られた安定的皇位に関する有識者会議のメンバー解体】から←何故か極秘裏に進められたはずのメンバー候補者の内、女性天皇容認候補者のみ、嫌がらせで辞退に追い込んだ。
     無言電話、家族への脅かし、後つけ、など数々の嫌がらせがあった、とご当人が証言している。家族を守るためメンバーを辞退したとの事。
     最初に答えありきの有識者懇談会は誰のため?何のため?
    国民不在の政治は国民の手で潰すことができる。

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