トンボ論文写真50番に感じる「連写の1枚を拝借し別の個体の画像を合成か」という疑惑
秋篠宮家の長男・悠仁さまによるトンボ論文の写真No.19番「オツネントンボ」と、No.82番「シオカラトンボの交尾」について、「撮影セット」の存在を思わせる当時の状況を再現した模型を作ってくださった、X(Twitter)の「アラ還ぎゃる」さん。
そのアラ還ぎゃるさんから、写真No.50のウチワヤンマについて「激似の写真を見つけました!左右反転してみてください」とご連絡をいただいた。確かに翅の一部分のみ異なるだけで、それ以外は本当にソックリだ。
ウチワヤンマは、胴の部分に黄色味が強い黄緑と黒のコントラストからなる鮮やかな模様があり、それは人の顔のように個体ごとに違っている。その模様と飛翔時の腹と翅がおりなす角度を、さっそく確認してみることにした。
◆画像2点を比較
盗用を悟られたくないとして、「左右反転」という狡猾な方法をとる者がいることは、世界最強の不正論文ハンターとして知られるエリザベス・ビク氏も指摘している。
アラ還ぎゃるさんが教えてくださったウチワヤンマの画像は、こちらでも図鑑として頻繁に参考にさせていただいている『神戸のトンボ』という有名なウェブサイトにあった。
誠に勝手ながら、それを左右ひっくり返し、悠仁さまのトンボ論文の写真No.50と比べてみた。
撮影の角度といい、右の翅といい確かにそっくりだ。白みを帯びた翅は画像加工によるものだろう。左の翅、そして飛行機でよく使用される「バンク角」がちょっと異なるだけなので、連写された写真のうちの2枚だと言われても、疑う人はいないだろう。
上の2点の画像には、なんと完全一致点する部分があった。分度器で調べてみたところ、右後ろの翅と腹の角度が、まったく同じだとわかったのだ。
「飛んでるトンボの撮影って、連写してその中から良いものを使っていると思うんです。だから、すごく似ている写真があっても、決して同一ではないです」とアラ還ぎゃるさん。
微妙にズレている部分があったとしても、大きさ、角度がほぼ同じ、背景色もそっくりな場合は「撮影者の別コマの写真を拝借したのでは」と疑われることになりかねないという。
その場合は正確な撮影データを開示してもらい、撮影者と日時をクリアにするのが一番だそうだ。
◆連写で得られるよい写真
最近ずっと感じているのは、昆虫好きばかりか、カメラや写真の愛好家が集うウェブサイトには、「ちょっと斜め上の角度から撮影された飛翔中のトンボ」という写真がとても多いということ。
どなたも「連写」で得られたうちの最高の1枚をネットに掲載しているわけで、1秒あたり最大18コマ撮るとおっしゃる方もいる。高価なカメラを持ち、ピント合わせの技術を覚え、よい角度から連写すれば、自慢できるような飛翔写真が撮れるようだ。
実際に「トンボ撮影 連写」で検索してみたところ、たくさんのページにヒットした。『Angler’s Sound』さんというブログに興味深い文章があるため、ちょっと拝借してみた。
つまり連写された画像から最高の1枚を選ぶにせよ、それ以外にも「とても良いもの」は結構残るのだろう。
◆角度や模様を確認
ウチワヤンマの画像を多数見ていて、個体を見分けるには赤で囲んだ部分の模様、斑点を確認するのが1番だとわかった。
まずは悠仁さまのトンボ論文写真No.50について。うちわのすぐ上に三段の階段のようになった斑点がある。さらにてっぺんにも小さな黄色い斑点があるようだ。
胴部にも注目。左から順に、ボウリングのピンのように見える部分、黒く浮かび上がるTの字の「I」の部分の湾曲、さらに右に出来るギザギザにも個体差が現れるようだ。
「ボウリングのピン」と表現したが、実はそこの首の部分に最も大きな個体差が現れていた。砂時計ほどの極細の首もあれば、完全にちぎれている個体も多いとわかった。
実は筆者もそれらを元に、Googleレンズを使ってあれこれ画像を探ってみた。激似が怪しまれるウチワヤンマの画像が数点あり、しかし飛翔の角度や3段の階段のような斑点もそっくりなのに、胴部の「ボウリングのピン/砂時計」の形が違っていたりする。またその逆も多い。
あの論文の写真は「何でもアリ」だと思っている。連写された画像のネット非公開のものをどなたかから拝借し、そこに別の画像を合成させたなんてことも起きていた…?
◆参考にしたい画像が次々と消えていく不思議
ここまで実に多くの方が、「論文の●番の写真はネットのこの写真と激似」という情報を下さっているが、どなたもGoogleレンズを利用し、「完全一致の画像」があるウェブページに絞ってから確認していらっしゃる。
ところがある時、「昆虫系の有名なウェブサイトや、昆虫界の研究者さんたちが、次々とブログなどの写真を非公開にしたり削除したりしている」とX(Twitter)のフォロワーさんから教わった。Googleで類似あるいは完全一致の画像が検索できても、実際にクリックすると画像が存在しないことが増えてきたもようだ。
一例を挙げると、長野県で野鳥や昆虫の観察を続けるなか、『ようこそ信州 諏訪自然写真館へ』というウェブサイトにお写真を多数アップしておられた酒井雅秀さんという研究者さんは、一番人気だったであろう「35mm版写真集」というページを少し前に閉鎖された。YouTubeでちょっと話題になっていたサイトだけに、とても残念だと感じる。
◆まとめ
そんなこともあり、アラ還ぎゃるさんも筆者も、この写真No.50について結論を出すには至っていない。だが忘れてならないのは、写真No.52のタイワンウチワヤンマに「ちゃんと止まっているのか。奇妙な黒い関節と脚が生えているように見えるが」と疑惑の声があがっていることだ。
こうなれば、国民の側に湧いた疑義を晴らすためにも、悠仁さまが画像の完全データを明示してくださるのが一番である。生物学の学術論文でありながら、すべての画像について撮影者名が不明であることなど、筆者にはそもそもどうしても理解できない。
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実際の写真は以下のサイトからご確認頂きたいと思う。
■『J-Stage』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―
■『国立科学博物館』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―
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(朝比奈ゆかり/エトセトラ)
画像および参考:
・『神戸のトンボ』続 トンボ歳時記 ― No.600. ウチワヤンマの観察.2018.6.9.
・『コーギーとカラスの物語(正義のヒーローモカ ガー幸守る)』トンボの仲間 水元公園内年表写真図鑑
・『昆虫研究所』ウチワヤンマ
・『PIXTA』写真素材: ウチワヤンマ
・『上町のオッサンの鳥鉄日記』淀川河川敷のウチワヤンマ
・『Angler’s Sound』トンボに関するあれこれ~トンボ撮影編~
・『虫ナビ』ウチワヤンマ
・『信州諏訪自然写真館』写真集一覧(35mm板)
・『エトセトラ・ジャパン』写真52番タイワンウチワヤンマには新しい関節と脚が? まだまだ出てくる悠仁さまトンボ論文の謎