日本のホテル業界をかき乱すKB工藝社の社長・A氏 「アフターコロナの観光政策は富裕層のため」

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富裕層がラグジュアリーに観光を楽しむ国にせよとDA氏(画像は『Luxury Japan』のスクリーンショット)
富裕層がラグジュアリーに観光を楽しむ国にせよとDA氏(画像は『Luxury Japan』のスクリーンショット)

コロナが落ち着いたら再びあちこち旅行して回りたい、そう楽しみにしている人は多いことだろう。だが日本ではいつの間にか、買収されて看板が変わった例も含め、外資系の高級ホテルがやけに増えた感じがする。そこに、小西美術工藝社の社長で菅前政権下の経済政策のブレーンであったA氏が、一枚も二枚も絡んでいたことをご存じだろうか。



M子さんのMET就職の後押しになる、皇室の財宝の海外持ち出しを可能にした男と噂になっているA氏。イギリス生まれの彼は「菅前政権の青い目のブレーン」と呼ばれ、5年も前から彼の提言は経済政策ばかりか観光立国政策にも大きな影響を与えてきた。

富裕層がラグジュアリーに観光を楽しむ国にせよとDA氏(画像は『Luxury Japan』のスクリーンショット)
富裕層がラグジュアリーに観光するような国にしたいとDA氏(画像は『Luxury Japan』のスクリーンショット)

そんななかで昨年10月、富裕層をターゲットとした旅行を提案する一般社団法人・ラグジュアリー・ジャパン観光推進機構の講演会に招かれたA氏は、こう主張していた。

「日本は非常に多様性に富んだ文化、歴史、気候、自然などに恵まれ、さまざまな観光資源がたくさんあり、それらを生かした観光戦略によって外国人観光客の誘致拡大を図るべきと考えています」

「観光戦略のステップアップの一例としてバリ島を見てみましょう。(略)アマンリゾートが富裕層向けのホテルを建ててからは次々と高級ホテルが開発され、いまではなんと42軒もの5つ星ホテルが存在しています。」

「ラグジュアリーホテルの富裕層ビジネスに取り組んでいますと、富裕層の方から『そんな安いホテルには泊まりません』などと言われた苦い経験は何度もあります。どんなに面白い、素晴らしい観光体験ができたとしても、1泊1万円や2万円のホテルには泊まってくれません。」

1人が1日に何十万~数百万円を消費する富裕層の人たちが来るのなら、1日8時間以上滞在するホテルの質の向上は急務だと訴えるA氏。コロナ後のインバウンドによる観光収入は3年後ぐらいには回復し、しかし人数では8割強ぐらいにしか戻らないため、1人あたりの旅行の平均単価を上げるべきだというのが彼の持論だ。

とはいえ菅政権は終わったし、この件についてはのんびりと検討していけば…などと言っている場合ではない。先月下旬、『Yahoo!ファイナンス/楽待新聞』は、ここにきて最低でも1室1泊5万円前後という外資系最高級ホテルが続々と誕生、あるいは建設中であることを伝えた。

外資系ホテルが日本に続々上陸と報じられる(画像は『楽待新聞』のスクリーンショット)

「フォーシーズンズ」「シャングリ・ラ」「マンダリンオリエンタル」「アマン」「ペニンシュラ」「シックスセンス」、さらにその1ランク下の「ヒルトン」や「シェラトン」、「インターコンチネンタル」や「ウェスティン」などが全国に次々と建設された日本。そこに最高級5つ星のホテルが乱立するのは、そう遠くない話だという。

 

■東京でも京都でも札幌でも
東京では「ブルガリホテル東京」や「東京エディション銀座」、「ジャヌ東京」が2023年に開業予定で、品川開発プロジェクトにより2025年に「JWマリオット・ホテル東京」が、さらに2026年には「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」が開業するという。

外国人観光客に大人気の京都では、2023年に「デュシタニ京都」、2024年に「京都東山SIX SENSES」「バンヤンツリー・東山 京都」「シャングリ・ラ京都二条城」などが開業するそうだ。

また、そうした動きがあまりなかった札幌でも、北海道新幹線が延長され、2030年に冬季五輪が開催されることを視野に入れ、2031年までにマリオット・インターナショナル系ホテルが開業する予定だという。

 

■ホテルチェーンは損をしない運営委託方式
政府は、2030年には6,000万人のインバウンドを獲得するという目標を立てている。円安に大喜びする外国人観光客を大勢呼び、世界的な国際会議や見本市、そしてスポーツイベントなども外資系最高級ホテルがあれば安心だとしている。

経営面では、保有と運営を分離した運営委託方式(MC方式)を採用するホテルが多いとのこと。「ザ・リッツ・カールトン日光」の例が挙げられ、保有企業として東武鉄道グループは豊富な資金を提供し、運営企業としてマリオットグループが運営スキルやブランド力を提供し、世界に広がる会員たちを集めるだろうという。

なお、不動産下落や空室といったリスクは東武鉄道グループが負い、リッツ・カールトンの損失は限定的だそうだ。



■デメリットも
そもそも観光地は概して地価の上昇が続いていく。さらに近年は、国外の富裕層をターゲットにした不動産投資も積極的に行われ、ますます不動産価値や地価が上昇している。一般の住民が、固定資産税の上昇にうんざりしていることも忘れてほしくないものだ。

収益向上だけを目指すあまり、上記のような流れになったのだろうが、次にまた何かパンデミックが起きて外国人の流入をストップさせたら、ホテル群は大赤字になるだろう。外資系は撤退の決断が速い。そのとき「昔のままの方がよかった」という話にならないだろうか。何しろ、庶民向けで親しまれていたホテルが立地条件の良さを理由に買収され、外資系の5つ星ホテルに変わってしまう例が続いているのだ。

 

■まとめ
リーズナブルな値段のホテルを好む人々や学生、そしてバックパッカーから旅の楽しみを奪ってしまうA氏の発想。そんな人物が、菅政権の成長戦略会議や観光戦略実行推進タスクフォースに参加していたことには驚くばかり。なんと後者においては、有識者のなかでトップの存在感を示していたようだ。

観光戦略実行推進タスクフォースでDA氏は有識者のトップに(画像は『Luxury Japan』のスクリーンショット)
観光戦略実行推進タスクフォースでDA氏は有識者のトップに(画像は『Luxury Japan』のスクリーンショット)



参考および画像:
『Yahoo!ファイナンス』日本に続々上陸、外資系最高級ホテルはなぜ増えているのか《楽待新聞》

『トラベル・ジャーナル・オンライン』デービッド・アトキンソン氏が語る「富裕層観光に取り組むべき理由」

『首相官邸』政策会議 ― 観光戦略実行推進タスクフォース(第 11 回) 出席者名簿

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)