「秋篠宮さまの英国王戴冠式出席に反対します」 理学博士が研究者向けSNSに論稿を執筆《後編》

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筑波大の農学部である生命環境学群・生物資源学類の1年生で学ぶ数学、あなたはこの数式を理解できるだろうか
筑波大の農学部である生命環境学群・生物資源学類の1年生で学ぶ数学、あなたはこの数式を理解できるだろうか

おかげさまで、先の『「秋篠宮さまの英国王戴冠式出席に反対します」 理学博士が研究者向けSNSに論稿を執筆《前編》が大きな反響を頂いている。

東京大学や京都大学に進み、農学部で生物学を学ぶのではないかと噂の秋篠宮家の長男・悠仁さま。だが、国立難関大学の理数系を目指す少年少女の知的好奇心と向学心は世間の想像をはるかに超えるものであり、筑波大附属高等学校の数学や物理の授業も、2年生に進級するとぐんと難しくなるはずだ。

《前編》につづき、京都大大学院で理学博士の学位を取得し、京都大学数理解析研究所で研究され、筑波大学の理工学群数学類で長いこと教鞭をとっておられた西村泰一(にしむら ひろかず)さんに、そのあたりについてお話を伺ってみた。



――西村先生、今回もよろしくお願いいたします。筑波大学では生命環境学群・生物資源学類が農学部にあたるそうですね。数学を指導されておられたとか…。

西村先生:1年生に微積分を教えていました。実際のノートや黒板の板書の画像を残してあります。詳しい内容は、それぞれ科目をクリックし、Downloadからご覧ください。

たとえば【2007年度 基礎数学】では、1、2学期はベクトルの概念の復習、行列式の幾何学的意味、内積と外積、冪零無限小を用いた微積分、そして最終目標はベクトル解析です。3学期は、固有値や行列のJordan標準形と線型微分方程式の一般論を勉強しました。

筑波大の農学部である生命環境学群・生物資源学類、2007年に1年生だった皆さんはこんな数学を学んでおられた その1
筑波大の農学部である生命環境学群・生物資源学類、2007年に1年生だった皆さんはこんな数学を学んでおられた

また【2008年度 基礎数学】では、1~2学期は「そもそも瞬間の速さとは一体何を表しているのか」という根源的な問いから始め、冪零無限小を用いた微積分を高校1年くらいの数学の知識だけを仮定して展開し、最終目標をベクトル解析におきました。3学期は、線型微分方程式の一般論を2次元の場合を中心に勉強し、時間があれば、力学系と生物学の関係をRashevsky-Turingの形態形成モデルを例にとって考えてみました。

筑波大の農学部である生命環境学群・生物資源学類、2008年に1年生だった皆さんはこんな数学を学んでおられた
筑波大の農学部である生命環境学群・生物資源学類、2008年に1年生だった皆さんはこんな数学を学んでおられた

国立難関大学の数学では、こんな問題を解く覚悟が必要になる
国立難関大学の数学では、こんな問題を解く覚悟が必要になる

 

【皇室、徒然なるままに】アーカイブはこちらから。

 

――先生は、物理や数学が大好きな高校生さんにも授業を行ってこられたんですね。

西村先生:大学レベルの数学に挑戦できる「体験学習」があります。筑波大学理工学群の数学類では、毎年の夏休みに、受講を希望する全国の高校生さんを集って講義や授業を行います。

 

――筑波大学附属の2つの学校に通う生徒さんたちと交流される機会はあったのでしょうか。

西村先生:毎年、筑波大学附属および筑波大学附属駒場の中学生、高校生たちを迎えて行われる「研究室訪問」というイベントがあります。そこで生徒さんたちは、自分たちが希望する先生の講義を聴くことができます。

たとえば私は、筑波大附属高校の生徒さんたち向けに、2014年に『古典古代の解析学者、アルキメデス』という講義を行いました。また、筑波大附属駒場中学校の生徒さんたちには、2014年に『地球を測る、宇宙を測る』、2016年に『猫でもわかる球面幾何学』という講義を行いました。

中学生とか高校生あたりを相手に数学の話をするのは難しく、当然予備知識を仮定せざるをえないのですが、だからといって中学や高校で習うのと大差ない話をすれば、馬鹿にされます。彼らは知的好奇心を刺激してもらうことを望んでいるわけです。

 

――きわめて優秀な高校生さんたちって、お話をするとどのような感じなのでしょうか。

西村先生:講義の最中、あるいは終わってから、生徒さんたちとはよく雑談もしました。彼らは単に偏差値が高いという話ではなく、権威を恐れず自分の考えを持ち、それを行動に移すことをためらわないタイプなんです。

少し話がそれますが、昨年附属高校の入学式で悠仁君批判を大っぴらにやった生徒さんがおられたようで、停学処分になったと聞きました。とても残念ですね。

私がこのことについて責任ある立場にいたなら、こんな処分はしませんね。まず、その騒いだ何人かの生徒さんと悠仁君を、場を設けてあげて、時間無制限で徹底的に議論させます。その議論を通して、悠仁くんも騒いだ生徒さんも多くのことを学べるはずです。それが教育というものです。

その上で、”意見の表明は自由だが、TPOをわきまえろ”ぐらいの説教を、騒いだ生徒さんたちにして、まあ始末書ぐらい出させて、それで一見落着です。それ以上は何もありません。

 

――先生がご利用された「Research Gate」というSNSは、世界中に2,000万人近い利用者を誇り、ノーベル賞の受賞者も数十名いらっしゃるとか。どんな特徴があるのですか?

西村先生:ResearchGateは世界中の研究者を対象としたSNSで、分野は問いません。医学の方もいれば生物の方もいる。登録すると「Stat(Statistics)」をクリックして「Research Interest Score」を見ることができます。そのポイントをもとに、世界中の研究者全体のなかでどのくらいに位置しているかを教えてくれます。

 

――失礼ですが、先生のポイントをお伺いしてもよろしいでしょうか?

西村先生:私は655.6ポイントです。これは全体の90%より上、百点満点の試験でいうと90点くらいになります。

 

――それはすごいですね! 何年か前に数学の超難問「ABC予想」をついに証明したと話題になった、望月新一博士で400点ちょっとです。

西村先生:京都大学数理解析研究所の望月先生ですね。百点満点でいうと85点という感じでしょうか。このスコアの面白いところは、組織の人事なんかとは違い、全研究者のうちどのあたりに位置するかを、極めて客観的に機械が算出して教えてくれることです。

 

――ところで、西村先生はかつてデザインに嵌っておられたと先に伺いましたが。

西村先生:一時期、筑波大学の数学の広報を任されていました。広報というのは要するに営業で、学生をつかまえてきなさいという話です。そのポスターやパンフレットを作成するうちに、デザインの世界にのめりこんでいきました。作品は順々にご紹介してみたいと思います。



――数学や物理が好きな高校生たちに、ぜひ読んでほしいと思う本はありますか?

西村先生:では、お薦めしたい本を挙げてみます。筑波大学で数学のホームページ関係の仕事をしていた折に、高校生に読んでもらいたい本の書評を記していましたので、そちらは書籍のタイトルをクリックし、Downloadからご覧いただけると思います。

『宇宙を織りなすもの:時間と空間の正体』上 草思社

 

『宇宙を織りなすもの:時間と空間の正体』下 草思社

 

『ブラックホール戦争 : スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』日経BP社

 

『ストリング理論は科学か:現代物理学と数学』青土社

 

『「標準模型」の宇宙 現代物理の金字塔を楽しむ』日経BP社

 

『対称性:レーダーマンが語る量子から宇宙まで』白揚社

 

『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』草思社

 

『迷走する物理学』武田ランダムハウスジャパン (2007年)

 

――先生は大変な読書家ですね。《前編》では少年期に読まれた本も多数紹介していただきましたが、特に印象に残っている一冊はありますか?

西村先生:A.J.エイヤーの『言語・真理・論理』です。この本は、いわゆる論理実証主義のバイブル的な存在で、私を数学に振り向けた一番の原動力です。

京都の洛星中高等学校に入学したときは、そういうことを全く考えてなかったのですが、中高一貫の学校というのは高校受験がないので、中学3年の1年間をその受験勉強に費やさなくてもいいというのは、本当に有り難かったです。

 

――名門のミッションスクールですね。

西村先生:外国人の神父さんなんかもおられ、宗教の時間というのもあって、その折には自分が心から信じる神について熱弁を振るわれるので、そういうことについても真摯に考えるようになりました。

また、教員のなかに私との議論の相手をしてくださる方もおられたので、私の自己形成に大変な助けになりました。もっともそんなことばかりしていたので、中学3年の折には数学で赤点をいただいたこともあります。

 

ーーそれは驚きです! YouTubeをよくお聴きになるんですよね。音楽ではどんな曲がお好きですか?

西村先生:では、お気に入りの曲を3つほど…。

●Joanna Channelの『Ado/うっせぇわ(Usseewa)-English Ver.- 歌ってみた by Joanna Koike』

●JillviolinChannelの『【Jill】鬼滅の刃「紅蓮華」バイオリンで弾いてみた / Demon Slayer:Kimetsu no Yaiba OP “Gurenge” Violin Cover』

●Unionjokeの『ツイてるねノッてるね 中山美穂 Miho Nakayama』

――いろいろなタイプの音楽を聴いていらっしゃるんですね! 前編・後編とたくさんのことをお話くださった西村先生、ありがとうございました。
 

【皇室、徒然なるままに】アーカイブはこちらから。

 

◆お知らせ

西村先生が、現在の皇室に寄せるご自身の様々なお考えを、『皇室ーつれづれなるままに』というタイトルで、時おり弊ブログに寄稿して下さることになりました。皇族の人数の激減、男系男子論に対する女性天皇や女系天皇の容認、悠仁さまの国立難関大学ご進学に、先生はどのようなことを感じていらっしゃるのでしょうか。皆さま、是非ともご期待下さい。

【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月 洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月 京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月 筑波大学(数学)

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)



画像および参考:
『つくばリポジトリ』数理物質系 西村 泰一講義資料『古典古代の解析学者、アルキメデス』

『つくばリポジトリ』数理物質系 西村 泰一講義資料『猫でもわかる球面幾何学』

『つくばリポジトリ』数理物質系 西村 泰一講義資料『地球を測る、宇宙を測る』

『つくばリポジトリ』数理物質系 西村 泰一講義資料【2007年度 基礎数学】

『つくばリポジトリ』数理物質系 西村 泰一講義資料【2008年度 基礎数学】

・YouTube ― Joanna Channel『Ado/うっせぇわ(Usseewa)-English Ver.- 歌ってみた by Joanna Koike』

・YouTube ― JillviolinChannel『【Jill】鬼滅の刃「紅蓮華」バイオリンで弾いてみた / Demon Slayer:Kimetsu no Yaiba OP “Gurenge” Violin Cover』

・YouTube ― Unionjoke『ツイてるねノッてるね 中山美穂 Miho Nakayama』

『エトセトラ・ジャパン』「秋篠宮さまの英国王戴冠式出席に反対します」 理学博士が研究者向けSNSに論稿を執筆《前編》