「女系」子孫に感謝! 男系まるで不一致も姉つながりの末裔でDNAが合致した英リチャード3世の遺骨

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リチャード3世の遺骨はかなりきれいな状態で発見されたのに…(画像は『 』のスクリーンショット)
リチャード3世の遺骨は人骨とわかるきれいな状態で発見されたが、その後のDNA鑑定は予想外に難航した(画像は『WSJ』のスクリーンショット)

 

唐突だが、イングランドで1485年に亡くなったリチャード三世について、遺骨とみられるものが発見されるも、その後DNA鑑定に手こずったという話をご存知であろうか。この件は、皇統はY染色体を持つ男系男子で継いでこそ、などと主張する方にこそ知っておいて頂きたい話である。



 

 

◆姉つながりの末裔から

イギリス中部のレスターで今から10年ほど前、ある駐車場から頭部をめった刺しにされたとみられる人の遺骨が発掘され、その状況と歴史を照らし合わせ、1485年8月22日に32歳で戦死したリチャード3世の骨ではないかと騒がれた。

リチャード3世は王位に就いてわずか2年後の「ボズワースの戦い」で惨殺され、遺体は行方不明に。レスター大学考古学チームがその遺骨について調査を始めた。

実子は11歳で他界したが、エドワード4世ほか12人もきょうだいがいてその子孫も多く、530年ほど前の骨であればDNA鑑定は容易であろうと思われた。だが、そうは行かなかった。

 

リチャード3世のY染色体のDNAが、曾祖父の兄ジョン・オブ・ゴーントから続く同家系の男系5人の子孫のDNAと一致せず、ついに確認できたのは「母方の祖先がリチャード3世の姉」というカナダ在住の男性のサンプルだった。

そしてリチャード3世のための立派な墓が建てられ、レスター大聖堂では厳かなセレモニーが執り行われた。やっと安らかな眠りにつくことができたのも、「姉」として「母」として女系の子孫がしっかりと血を継承してくれていたからであろう。

 

■Y染色体は小さく脆弱に 

Y染色体にこだわることには、科学的に見てどれほどの意味があるのだろう。

日経ビジネスの『Y染色体がどんどん減少 やがて男は消える運命?』という記事で、専門家は「退化も淘汰もどちらも進化です」と前置きした上で、男性が持っているY染色体は、2000個ぐらいあった数が50個ぐらいに減って小さくなっているため、「いずれなくなるかもしれない」と説明している。

ヒトをはじめ哺乳類のY染色体は、かつてはX染色体と同じサイズで同じ遺伝子を持っていたが、進化のなかで退化し、長さも短くなり遺伝子の数も減少したという。ネットの検索で「Y染色体」と入力すると、候補に「Y染色体 消滅」とあり大変驚かされる。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)



画像および参考:
『National Geographic』リチャード3世の遺骨発見、熱狂の理由

『世界史の窓』リチャード3世

『日経ビジネス』Y染色体がどんどん減少 やがて「男」は消える運命?