【皇室、徒然なるままに】第69話:「ポアンカレ予想」を証明もまるで無欲な天才数学者ペレルマン 西村 泰一

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すっかり世捨て人となってしまったグレゴリー・ペレルマン氏(画像は『YouTube』のスクリーンショット)
すっかり世捨て人となってしまった、数学者のペレルマン(画像は『YouTube』のスクリーンショット)

 

数学者のなかには、とても変わった人がいます。今回は、グリゴリー・ペレルマン(Grigori Perelman)というロシアの数学者の、業績と生き様についてお話したいと思います。紀子さんや悠仁君のように、煩悩の塊のような人の対極にいるのが、このペレルマンなのです。



【位相幾何学】

まずは幾何学のお話から。ユークリッド幾何学は中学校で勉強したと思います。例えば「対応する三辺の長さが同じ2つの三角形は合同である」なんていうことを習ったかと思います。こういう2つの三角形は、片方をもう片方の所まで移動していって重ねることができます。その意味で、こういう2つの三角形は同じものと考えていいかと思います。

さて、数学には「位相幾何学(Topology)」とよばれる分野があります。ここでは図形はゴムでできていると考え、適当に伸び縮みさせてやって、「片方の図形をもう片方の図形と同じ形にできるならば、この2つの図形は同じもの」と考えます。

位相幾何学の世界では、すべての三角形は同じものになってしまいます。あるいは球面と立方体の表面も、この意味で同じ図形ということができます。

 

では、すべての図形が同じものになるかといえば、そんなことはありません。例えばドーナツ面を考えてみましょう。ドーナツは真ん中に穴が一個ありますね。この穴が邪魔になって、いくらドーナツ面がゴムでできていても、球面にすることはできません。

次に、上から見ると数字の8のようになっている「穴が2つある」ドーナツ面を考えてみましょうか。これも、たとえ素材がゴムでできていても、どんなに変形させてみたところで、穴がひとつのドーナツ面にすることはできません。

 

位相幾何学の初心者向けのやさしい説明はこちらを参照してください。

『YouTube』ナゾトキラボ【IQ & 謎解きチャンネル】 ― 数式を使わない数学!?位相幾何学の奇妙な世界

 

【ポアンカレ予想】

さて、穴のない曲面はすべて球面とおなじでしょうか? これはそうであることが、かなり早い段階でわかっています。

それでは次元を一つ挙げて、4次元空間で球面を考えて(この場合、3次元超球面になる)みて、ここでの穴のない超曲面は、すべて前記の3次元超球面と同じと考えることができるでしょうか?

これを「ポアンカレ予想」と言って、1904年にフランスのポアンカレという数学者によって唱えられてものです。ポアンカレ予想は大変難しく、100年くらい未解決のままであったものを2002年から2003年にかけて解いていったのが、ロシア出身のユダヤ系数学者ペレルマンでした。

ここまでなら割とある優れた数学者の話なのでしょうが、ここから先の話は、彼がただの人間ではなく、仙人ではないかと思わせるに十分なものなのです。

 

なお、ポアンカレ予想の初心者向けの話は、こちらを御覧ください。

『YouTube』数式解説チャンネル for ビジネス ― 【16分でざっくりわかる】ポアンカレ予想



【数学界のノーベル賞受賞を辞退】

16歳で挑戦した国際数学オリンピックで、満点により金メダルを獲得したペレルマンは順調に優れた業績を重ねて行きました。そしてポアンカレ予想を解いたことで、「数学界のノーベル賞」ことフィールズ賞の授与を持ちかけられました。

ところが彼はその受賞を辞退しています。彼の言によると「私の仕事は多くの先達に負うところが大きい」と謙虚そのものなのです。

更にこのポアンカレ予想は、未解決の7問が示された2000年の「ミレニアム問題」の1つでした。解いた数学者は100万ドル(日本円にすると約1億5千万円)の懸賞金がもらえることになっていたのですが、それさえもペレルマンは辞退してしまいました。

7つの難問のうち、結局解くことができたのはポアンカレ予想ただ1つ。にもかかわらず、ペレルマンはあまりにも無欲なのです。

16歳で挑戦した国際数学オリンピックでは、満点で金メダルを獲得。その後も快進撃が続いたが…(画像は『Wikipedia』のスクリーンショット)
16歳で挑戦した国際数学オリンピックでは、満点で金メダルを獲得。その後も快進撃が続いたが…(画像は『Wikipedia』のスクリーンショット)

 

【IQ240の世捨て人 】

IQ240のペレルマンは、世界各地のトップクラスの大学や研究所から招請を受けても見向きもしませんでした。現在はサンクトペテルブルグの安アパートで、母親との年金暮らしに甘んじているとのこと。キノコ採りが何よりの趣味というので、私のような俗人にはまったく理解しがたい男なのです。

今回、ペレルマンの話をご紹介したのは、世の中には悠仁君や紀子さんとは真逆の人間がいるのだということを、皆さんに知ってほしかったからです。

 

もしもペレルマンについてもう少し詳しい話を知りたいという方は、是非こちらの動画を御覧いただきたいと思います。

『YouTube』雑学スーパー偉人伝 ― 【地位も名誉もいらない】グレゴリー・ペレルマン ポアンカレ予想を証明した奇人の生涯【ゆっくり歴史/偉人伝】

『YouTube』まりんぬ – 謎の歴史、文化 ― グレゴリー・ペレルマン、消えた変人数学者のすべて

『YouTube』ちくわのゆっくり偉人解説 ― グレゴリー・ペレルマン 地位も名誉も金もいらない!? ポアンカレ予想を証明した天才数学者【ゆっくり解説/偉人伝】

 

【数学の世界にもきな臭い話題が】

さて、ペレルマンの話に爽やかな気分になった方も多いと思われますが、残念ながら数学の世界にもきな臭い話題があります。次回は、このポアンカレ予想の話の続編をお届けしたいと思います。

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それでは第69話の締めくくりの1曲、『nobody ― a playlist to romanticize studying math』をどうぞ!

(理学博士:西村泰一/画像など編集:エトセトラ)

【皇室、徒然なるままに】のバックナンバーはこちらから。



【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月  洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月  京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月  筑波大学(数学)

画像および参考:
『YouTube』 nobody ― a playlist to romanticize studying math

『YouTube』ナゾトキラボ【IQ & 謎解きチャンネル】 ― 数式を使わない数学!?位相幾何学の奇妙な世界

『YouTube』数式解説チャンネル for ビジネス ― 【16分でざっくりわかる】ポアンカレ予想

『Wikipedia』ミレニアム懸賞問題