Google翻訳が「令和5年」を2020年に変換する件、DeepL翻訳はセーフもやや微妙な点が…

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Google翻訳を利用して英訳すると、まずは2020の数字が目に飛び込んで来る(画像は『Google翻訳』のスクリーンショット)
Google翻訳を利用して英訳すると、まずは2020の数字が目に飛び込んで来る(画像は『Google翻訳』のスクリーンショット)

5月にイギリスで行われるチャールズ国王の戴冠式。ついに宮内庁はHP上で「招待は天皇陛下宛てだった」という事実を発表した。ところがEnglishのサイトに該当するページがなく、Google翻訳ツールで得られる画面のスクリーンショットを保存しようとしたところ、「令和5年」のはずが「2020年」となっていることに筆者は驚いた。

これまでの流れから、筆者は「英語圏の人たちに気づかれまいと、何やら(タグでも)仕込まれていたのでは」と疑ってみたが、どうやらGoogle側がオカシイとのこと。記事を一旦非公開とさせていただき、その後あれこれと調べてみた。すると…。



 

◆正しく現れていたのは平成まで

このとおり、Google翻訳は令和を正しく西暦に直すことができないことが判明した。平成まできちんと変換していたなら、なぜ令和にも対応してくれないのだろうか。これはあまりにも悲しい話、翻訳された文章の自然さには定評があるだけに残念すぎる。

平成までは正しく変換されていることが判明。令和の年号、これからもずっと2020年のままに…?(画像は『Google翻訳』のスクリーンショット)
平成までは正しく変換されていることが判明。令和の年号は、これからも2020年のままにするつもり…?(画像は『Google翻訳』のスクリーンショット)

 

◆「令和」と入力するとなぜか中国語に誘導される

そして、Google翻訳ツールでとても気になったことがある。言語を自動検出のまま「令和」と入力すると、正しく日本語で打ちこんでいるにもかかわらず、なぜか中国語(簡体)という青い文字が現れ、「令」の文字も下の画像のように微妙に変化してしまうのだ。

言語を自動検出として「令和5年~」と入力すると、なぜか中国語に変わってしまうがReiwa5は正しいようだ(画像は『Google翻訳ツール』のスクリーンショット)
言語を自動検出として「令和5年~」と入力すると、なぜか文字が中国語に変わってしまう(画像は『Google翻訳ツール』のスクリーンショット)

もっとも翻訳としては「Reiwa5」と正しく表示されるようだ。それにしても、中国の人々は「令和」と書いて日本人のように「レイワ(Reiwa)」と発音するのか、それも不思議だった。どうか皆さんも、「言語を自動で検出して英訳」に設定にしてから「令和5年4月11日」と入力し、実際に中国語に誘導される様子をご確認いただきたいと思う。



◆別の優れた翻訳ツール「DeepL」では…?

では、このところ話題の『DeepL翻訳ツール』はどうだろうか。同じことを試してみたところ、こちらは期待に応えてくれた。正しく「April 11, 2023」と示され、ホッとした。

優れていると評判の「DeepL翻訳ツール」は正しく英訳された(画像は『DeepL翻訳ツール』のスクリーンショット)
優れていると評判の「DeepL翻訳ツール」は正しく英訳された(画像は『DeepL翻訳ツール』のスクリーンショット)

 

ただ、元号に関して別の形で検証してみたところ、やはりDeepLも改善するべき状況にあることがわかった。アメリカではどうしてもGoogleが優勢だろうが、本拠地がドイツのケルンにあるせいか、ヨーロッパにおけるDeepLの支持率は大変なもの。日本でも「翻訳が必要な際はDeepLを使用する」という企業はますます増えているといい、お早目の対応をお願いしたいものだ。

D社による翻訳ツールも同様の珍現象が(画像は『DeepL翻訳ツール』のスクリーンショット)
こちらの翻訳ツールでも残念ながら同様の現象が(画像は『DeepL翻訳ツール』のスクリーンショット)

 

 

◆英語版HPにあまり力を入れていない省庁が多いという事実

日本の元号での表記か西暦での表記か、そこはちょっと別として、主要な省庁はホームページの英語版にどれほど力を入れているのだろう。ざっとスクリーンショットを並べてみることにした。英語のエキスパートだらけの外務省はともかく、最新情報をきちんと英語でも発信していると感じられるのは、経済産業省と厚生労働省だけかもしれない。

財務省HPの英語版は、大臣の財務政策が2021年1月でストップするなど、プレスリリースを長らく放置か(画像は『財務省』のスクリーンショット)
財務省HPの英語版は、大臣の財務政策が2021年1月でストップするなど、プレスリリースを長らく放置か(画像は『財務省』のスクリーンショット)

 

国税庁の英語版、プレス・リリースは2013年12月でストップしている(画像は『国税庁』のスクリーンショット)
国税庁HPの英語版、プレス・リリースは2013年12月でストップしている(画像は『国税庁』のスクリーンショット)

 

外務省にとって英語版HPはお手の物 (画像は『MOFA』のスクリーンショット)
外務省にとって英語版HPはお手の物 (画像は『MOFA』のスクリーンショット)

 

厚生労働省の英語版HPは、英語での情報公開に努めてくれているようだ(画像は『METI』のスクリーンショット)
厚生労働省の英語版HPは、英語での情報公開に努めてくれているようだ(画像は『METI』のスクリーンショット)

 

文部科学省の英語版HP、「お知らせ」が1年あたり3つ止まりとは(画像は『METI』のスクリーンショット)
文部科学省の英語版HP、「お知らせ」が1年あたり3つしかないとは…(画像は『METI』のスクリーンショット)

 

経済産業省の英語版HP、プレス・リリースは速やかに(画像は『METI』のスクリーンショット)
経済産業省の英語版HP、プレス・リリースは速やかに(画像は『METI』のスクリーンショット)

 

警視庁の英語版ページは存在するが、新着情報などは掲載していないもようだ(画像は『警視庁』のスクリーンショット)
警視庁HPにも英語版が存在するが、新着情報の掲載はないようだ(画像は『警視庁』のスクリーンショット)

 

 

◆まとめ

皇族による皇室外交をしっかりと支えていくためにも、世界に向けた多言語での情報発信が不可欠になっている。ところが、その最新情報を得るにもGoogle翻訳ツールを使用してほしいというなら、宮内庁は元号ではなく西暦での表記を心がけるべきではないだろうか。

もちろんGoogle社にも改善が必要だが、それを待つより早く宮内庁HPの管理者がログインし、今年の分だけでも2023年に変更する作業を行っていただきたいと思う。宮内庁だけではない。全国隅々に至るまで、HPに英語版を持つ組織は日付その他を西暦で表記するべきだと感じる。

明治、大正、昭和、平成、令和と、日本には天皇と寄り添う気持ちの現れともいえる美しい元号が存在するが、残念ながら、それは「国内向け」のものでしかないのだろう。今回の件で、それを痛感させられてしまった筆者だが、心の中では相変わらず「令和の世がいつまでも続きますように」と願っている。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)



参考および画像:
『宮内庁』英国ご訪問(令和5年)秋篠宮皇嗣同妃両殿下の英国御訪問について

『KUNAICHO』 Visit to the United Kingdom by Their Imperial Highnesses Crown Prince and Crown Princess Akishino

『財務省』 Public Relations & Press Release

『国税庁』Press Release

『経済産業省』METI ― News Releases

『警視庁』 Tokyo Metropolitan Government ― Tokyo Metropolitan Police Department

『厚生労働省』MHLW ― What’s New (Archives)

『外務省』MOFA ― News/Press Releases

『文部科学省』MEXT ― What’s New