2018年7月1日は平均風速6m/s トンボ論文写真18番「オツネントンボが水辺の平らな葉に止まるものだろうか」

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写真No.18のオツネントンボ。これはどう見てもオスでしょうに…(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
写真No.18のオツネントンボ。風の強い日に水辺の平らな葉に止まるものだろうか(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)

 

近世近代の文人画がご専門で、ある博物館に勤務されていた元学芸員のKさんとおっしゃる方から、再びメールを頂戴した。

秋篠宮家の長男・悠仁さまによるトンボ論文『赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―』について、ここまでトンボの写真18番、22番、61番について、画像処理を含めた奇妙さを指摘しておられたKさん。

「撮影日」と当日の天候について照らし合わせてみたところ、18番に腑に落ちない点を発見されたそうだ。



以下、MKさんからのこのたびお預かりした考察を、ほぼ原文のままご紹介させていただきたいと思う。

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論文には、画像の下に「18:オツネントンボ ♀(菖蒲池,2018/07/01)」、そして本文中に、「菖蒲池のカキツバタ群落で確認」と記されている。また、写真2番については、「菖蒲池全景,左側がカキツバタ群落,奥がショウブ群落」との説明が添えてある。

2018年7月1日に菖蒲池で確認されたオツネントンボの解説(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
2018年7月1日に菖蒲池で確認されたオツネントンボの解説(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
2018年7月1日に菖蒲池で確認されたオツネントンボはオスなのか、メスなのか(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
2018年7月1日に菖蒲池で確認されたオツネントンボはオスなのか、メスなのか(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)

 

◆トンボが撮影された日は風が

『tenki.jp』による大手町の天気情報によると、2018年7月1日は「晴(快晴)」。風速は9時で4m/s、12時で5m/s、15時で6m/s、18時で6m/sである。

2018年7月1日の大手町の天気観測値(画像は『tenki.jp』のスクリーンショット)
2018年7月1日の大手町の天気観測値(画像は『tenki.jp』のスクリーンショット)

 

論文の写真No.18を見直すと、尻尾の先端・頭・胴体の影から陽光はかなり上方から射しているように見えるので、昼近くから午後と推測され、当時は南南東の風が強かったことがわかる。

昼過ぎには6m/sを超える風が吹いているが、平均風速が5m/sという状況下でも木の葉や細い枝が揺れ、同6m/sでは砂埃がたち紙片は舞い上がり、洗濯ものや旗がはためき、小枝が動く。長い髪は乱れ、セットした髪の毛は崩れやすくなり、幼い子では傘がさしにくくなるほどだという。

数字はあくまでも平均値であり、風速6m/sとは「4m/sの時もあるが、時には8m/sの風が吹く」ことを意味する。

2018年7月1日は、なかなかの風が吹いていたようだ(画像は『九州電力』のスクリーンショット)
2018年7月1日は、なかなかの風が吹いていたようだ(画像は『九州電力』のスクリーンショット)



◆撮影は別の日だったのでは?

このようななかで、風に翅が乱れている様子もない写真18番のオツネントンボ。もっと不思議なのは、脚の先端の鍵状の部分を葉にひっ掛けるわけでもなく、ほぼ平たい葉に脚を置き、平然と止まっていられることである。

強めの風にもこんな風にトンボは葉に止まれるものだろうか(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)
強めの風にもこんな風にトンボは葉に止まれるものだろうか(画像は『J-Stage』のスクリーンショット)

こうしたことから、もしかしたら撮影日は別なのではないかと思えてきた。

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以上が、Kさんが新たに気づいた写真No.18の疑問点だという。

裏付けが欲しくなり、筆者も続いてあれこれと調べてみることにした。

 

◆風が強い日に絶滅危惧種のイトトンボが?

こちらは「ライブドアブログ/居場所と出番のあるまち」さんが、2020年6月に投稿された『ミニ彩湖散策』という記事から。その最初にこんな文章があった。

ミニ彩湖にトンボを探しに行ってきました。風が強いせいか、イトトンボは見当たりません。その代わりにコシアキトンボがたくさん飛んでいます。

 

さらにこちらは、度々お写真を拝借している『神戸のトンボ』さんに見つけたページである。やはり風が強いとイトトンボたちは「草むらにいる」のだそうだ。

風の強い日、イトトンボたちは水辺の近くの草むらにいることが多いという(画像は『神戸のトンボ』のスクリーンショット)
風の強い日、イトトンボたちは水辺の近くの草むらにいることが多いという(画像は『神戸のトンボ』のスクリーンショット)

 

特にイトトンボたちは軽い分、天気に敏感で本能的に我が身を守る行動をとるだろう。「見当たらない」とあるので、とにかく飛ばない、姿を現さないのが普通のようだ。

 

◆葉の幅に違和感。本当にカキツバタなのか

悠仁さまのトンボ論文の説明から、18番は菖蒲池のカキツバタ群落で撮影されたようだ。だが筆者は、オツネントンボトンボの体長(3~4cm)から考えた「葉のサイズ」に違和感がある。成長したカキツバタは、幅が2~3cmもあるというのだ。

写真の葉は、オツネントンボの体調から考えると幅が1cmちょっと。それならショウブではないかと疑ってみたが、その割には葉の中脈(葉の中央にあるスジ)が目立たない。

とても不思議な感じがするが、いずれカキツバタもショウブも水辺の植物である。もしも風であおられて落下し、翅を濡らせば飛べなくなってしまう。

ショウブもカキツバタも水辺の植物である(画像は『園芸ネット』のスクリーンショット)
ショウブもカキツバタも水の上に(画像は『園芸ネット』のスクリーンショット)

 

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皆さんは、下のいずれかの論文にある実際の写真No.18からご確認頂きたいと思う。

『J-Stage』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―

『国立科学博物館』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―



◆まとめ

実は、大阪府在住のKさんという方が「本文ではオス、でも画像の解説ではメス、実際のトンボはオス」と発見され、一旦論文を取り下げ修正するべきなのでは? と世間から一気に厳しい声が上がったのも、この18番の写真である。

そして右隣の写真No.19のオツネントンボは、周辺に昆虫針のようなものが確認され、テグスや糸が張り巡らされていることから、ワイヤートリックを思わせる状態だった可能性がある。

何がなんでも「ご優秀な悠仁さまが絶滅危惧種のオツネントンボを発見し、撮影に成功しました」としなければならなかった…? 国民からの信頼を大切にするなら、科博も筆頭著書の悠仁さまも、この論文を取り下げると決断された方が賢明ではないだろうか。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

画像および参考:
『J-Stage』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―

『国立科学博物館』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―

『九州電力』風速の目安

『園芸ネット』栽培ガイド ― ショウブ・アヤメ・カキツバタ・花菖蒲の見分け方

『ライブドアブログ/居場所と出番のあるまち』ミニ彩湖散策

『THE NORTH ISLAND』風速6mとはどのくらい?スポーツやレジャーへの影響や体感を総特集

『神戸のトンボ』No.708. 北海道のトンボたち(5).2019.7.23.

『エトセトラ・ジャパン』写真No.18  オスをメスと、芝の紫色の穂をショウブと誤認で完全アウトか

『エトセトラ・ジャパン』悠仁さまトンボ論文写真No.19タグの謎を解く 実は写真No.82にも写っているコレでは…?