トンボ論文写真No.22のphotoshopで再現された青い翅 多くの学術誌が認めていない「不必要な画像加工」に該当では?
こちらで先に公開していた『トンボ論文写真No.22にも画像合成疑惑 瞳に宝石を埋め込んだアオイトトンボ』という記事に関し、今月5日、X(Twitter)で相互フォローのsun Tomchang(@STomchang)さんが、アオイトトンボの写真をアップして下さった。
これは、sun Tomchangさんが過去にご自身で撮影されたものだといい、アオイトトンボの自然の翅色や瞳の雰囲気がよく伝わってくる、とても感動的な写真である。
その上には、「実は私もアオイトトンボ(間違っていたらすみません)と思われる個体を撮影したことがあるのですが、その写真(トリミング有 他修正無)と比べて雰囲気違うなと今感じました。碧くて丸く美しい目がうりなのに」などと綴られている。
このままでも神秘的な美しさを湛えているのに、悠仁さまはいったい何をして、赤坂御用地のアオイトトンボの全身に青みを与えたのだろう。そう疑問に思っていたところ、K.Yさんとおっしゃる方がブログのメールにご連絡を下さった。
「Xでの sun Tomchang さまのアオイトトンボの写真の美しさに感動するとともに、トンボ論文22番の不自然さが気になって、『photoshopでトーンカーブいじるとこうなるんだよなあ』と思い、やってみてしまいました。時間がなかったのでざっくりなんですが。」
やはり意図的な画像加工のおかげで、あのような翅の色になっていたわけか…。
まずは、画像加工が著作権侵害や不快感を与えることにならないか、sun Tomchang さんにご相談してみた。すると「あの写真はFacebookに投稿していた私の写真なので、どうぞご使用ください。お気になさらず、必要であれば加工もされて下さい」と、大変ありがたいお返事を頂戴した。
そこで、こちらでもビフォーアフターの比較写真を公開させていただくことに。最初の画像、上はsun Tomchangさんのオリジナルの画像で、下はK.Yさんがphotoshopを用いてそれを加工した「青みを帯びたトンボ」の画像となる。
続いて、悠仁さまのトンボ論文写真No.22と比べてみると…。
上がK.Yさんによる加工画像、下は悠仁さまのトンボ論文にある写真No.22だ。仮にも『赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―』はアートではなく学術論文であろう。そこに、こんな人工的なトンボの写真が掲載されたことには違和感しかない。
sun Tomchangさん、K.Yさん、本当にありがとうございました!
◆許される画像加工、許されない画像加工
今時の医学や生物学の画像は、ある程度のデジタル加工がなされているだろうと実は誰もが思っている。だが、翅の紋様や形が特徴的なトンボも多く、その翅に故意に着色するのは許されることなのだろうか。
エルピクセル株式会社の共同創業者・湖城恵氏は、論文における画像の不正利用が2000年代前半から急増し、平均して4.3%の掲載論文に画像の不適切な「使い回し」があるとしているが、画像加工そのものは決して否定しておられない。
原画像には撮像のボケや光の散乱などノイズなどが入ってしまうことがあり、これらを除去し、見やすくするための画像処理を「データのねつ造」と捉える必要はないからだそうだ。
一方、施してはならない画像処理が6種類あるそうだ。
歪ませる
黒つぶれ・白飛び
比較対象の片方のみに画像処理
異なる実験区画の画像合成
画像の一部分のみに画像処理
切り貼り、使い回し
やはり…と言うべきであろうが、使い回し例の3分の2以上が、「バレないように」という意識の下で画像加工がなされていることもわかったという。
◆シュプリンガーネイチャー社が示す投稿規定
今や生物学の論文に使用される画像に対しては、多くの画像処理手法が存在する。そのため「こういう画像処理手法は不正」「ここまでは認められる」と定義することが、なかなか難しくなっているそうだ。
だからこそ、各誌とも投稿規定に最低限の基準を設けており、「加工を施した場合、その画像処理について論文や実験ノートに記載しておくこと」などと明文化している。
こちらはオープンアクセス出版のパイオニアとして、ヨーロッパを拠点にサイエンス系学術出版の世界展開を図ってきた、シュプリンガー・ネイチャー(Springer Nature Group)社が公式ホームページで示している「画像加工に関する投稿規定」の大まかな内容である。
生物画像全般、原画像を保存する
論文審査の際に要求されたら提出する
カラー画像については 300 dpi 以上の高解像度データを提出する
画像処理は最小限に留め、提出する画像は原画像を反映させる
使用したソフトウェアおよび主要な画像処理手法を明記する
不用意な画像合成を避ける
合成する場合は白線あるいは黒線を挿入し明記する
タッチアップ機能は使用しない
画像処理は画像全体に施す
比較する画像にも等価な画像処理を施す
◆まとめ:求められるのは原画像 高解像度の写真の提出
シュプリンガー・ネイチャー社は「画像に不正な加工があれば必ず専門家に見抜かれる」と添えている。
画像には連続的なノイズが乗っており、不正な画像編集を施した箇所では、そのノイズが不連続になってしまう。そのような画像ノイズの検出をサポートするソフトウェアを使うことで、画像編集の跡は一目瞭然となり、悪意ある画像編集は必ず見抜かれてしまうそうだ。
専門家は、そうしたソフトウェアを駆使して画像を確認しており、『Real Imperial Story by 輸入食品』の一ノ瀬さんが質問メールを送った昆虫の専門家、および論文の不正画像を解析する世界最強のエキスパート、エリザベス・ビク氏が「トンボ論文の疑惑の写真について、もっと解像度の高い画像を」とおっしゃっている理由は、まさにそこにあるようだ。
(朝比奈ゆかり/エトセトラ)
画像および参考:
・『X』sun Tomchang@STomchang
・『Springer Nature』editorial policies ― image integrity and standards
・『J-Stage』赤坂御用地のトンボ相 ―多様な環境と人の手による維持管理―
・『エトセトラ・ジャパン』トンボ論文写真No.22にも画像合成疑惑 瞳に宝石を埋め込んだ『幸せな王子』風アオイトトンボ
・『エトセトラ・ジャパン』悠仁さまトンボ論文疑惑 ついに世界が恐れる「不正論文分析スペシャリスト」の下へ