婚姻でもなく「特権的」に旧皇族の男系男子が皇族に復帰するなら、いずれ皇室は存続の危機に

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法制局立憲民主党の馬淵澄夫(上)と内閣法制局の木村陽一第1部長(下)
立憲民主党の馬淵澄夫氏(上)と内閣法制局の木村陽一第1部長(下)

 

安定的な皇位継承策を議論するうえで、女性・女系天皇の誕生を避けるためか、「皇族数の確保を目指す」とばかり言う日本政府。(1)旧皇族の男系男子の皇族復帰と、(2)女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保有する、の2案のみ検討して取りまとめたいもようだ。

だがその(1)に対しては、憲法14条が定める法の下の平等(平等権)や門地の差別という問題が出てくる。愛情ある婚姻であれば話は別だが、祖先が天皇という男子なら、どんな人物像でも構うものかと誰かを担ぎ上げ、殿下、陛下に仕立て上げるなど国民は納得するのだろうか。

憲法は人はみな平等だとして、門地(家柄)による差別を禁じてきた。現時点ですでに皇族である方々はともかく、これから一般人を対象にその認定を行うというなら、門地による差別ということになる。ところが内閣法制局は、なんと国会の場で「平等の原則には抵触しない」と言い切った。



◆馬淵澄夫(立民)vs木村陽一内閣法制局第1部長

15日の衆院内閣委員会で立憲民主党の馬淵澄夫氏は、旧皇族の男系男子の皇族復帰案(養子縁組)は、門地による差別を禁じる憲法14条に違反するのではないかとして、こう質問をした。

「一般国民は当然ながらこの憲法14条の平等原則が及ぶ。旧宮家の男系男子は現在一般国民であり、平等原則違反が生じるおそれがあると考えられますが…」

 

すると、内閣法制局の木村陽一第1部長はこう答弁した。

「ただあの、もっとも、あのお尋ね…、あの、一般国民であっても旧宮家に属する方々、皇統に属するような方々が、皇族の身分を取得するような制度を、まぁ、念頭におかれたお尋ねだといたしますれば…」

 

前置きがやけに長いが、核心部分はここだ。

「具体的な制度が明らかではございませんけれども、一般論としては、皇族という憲法第14条の例外として認められた特殊の地位を取得するものでございますので、憲法第14条の問題は生じないものと考えております。」

 

一般論としては、とおっしゃるならその次には「門地の差別は憲法違反であり、人はみな平等ということでございますので」が来るべきだろう。具体的な制度など、憲法の問題が生じるか生じないかの議論もまだなのに、発想の順番がいちいちオカシイという他ない。

これに対し馬淵氏は「現時点においては、一般国民である旧宮家の男系男子。これはこの14条の平等原則が及ぶってことではないですか?」と重ねて質問。すると木村氏はこう答えた。

「ええと憲法はまぁ、第14条の例外として皇族という特殊な地位を認めております。その範囲は、法律の定めるところにより委ねられている、という風に考えております。従いまして、まぁ法律の定めるところに従って、皇族の地位を取得するということになりますので、まぁ一般論ではございますけれども、憲法の認めるところであると考えております。」

 

馬淵氏に「端的に答えていただきたい」と言われたはずだが、なんと支離滅裂な答弁だろう。原稿にあった文章をシャッフルしたらこうなったのだろうが、あまりにもわかりづらい。

しかも、「法律の定めるところに従って、皇族の地位を取得するということになりますので」などと、早まるのはやめていただきたい。再び一般論を持ち出すなら、「憲法の認めるところではございませんが」が相応しいはずだ。

あれもこれも特権だらけと甘い条件を並べながら、「人数不足で困ってるんですよ~。お願いですから皇族になってください」などと、一般人として長く暮らしてきた男子を皇室に招き入れるなんぞ、国民が許すわけがない。猛反発は必至だろう。

馬淵氏も「それは法律によって定められた場合、ということでありますから」とあくまでも冷静だった。憲法の平等の原則をねじまげ、門地の差別を許してまで旧宮家の男系男子の復活を目指す意図は何なのか。

 

◆候補者への意思確認は済んでいる?

また、制度化の議決が先で人選が後になり、それから旧宮家の男系男子の意思確認を行うようでは、実現しないことも予想される。馬淵氏のそうした疑問に対しては、松野博一官房長官が答弁を行った。

「個人のプライバシーに関わることで、慎重な対応が必要だ」

 

これでは、まるで質問に対する答えにはなっていない。

 



◆憲法14条と門地の差別について

憲法14条1項にある「法の下の平等(平等権)」。すべての国民は法の下において平等であると規定され、人種、 信条、性別、社会的身分又は門地により差別されないとあり、かつての封建的な身分制度、各種の差別を禁止する憲法の基本原則の一つである。

そして「門地の差別」の門地とは家柄のこと。昔は華族、公卿、諸侯(大名)などの子孫は特権階級の人々として扱われ、貴族院議員になるなどしていたが、現行憲法はそうした門地による法的な差別を禁じている。

 

◆ヤフコメから

「触らぬ神に祟りなし」の事なかれ主義では課題は解決されません。

 

特に皇嗣家の疑惑、不祥事、騒動連発で揺らぐ皇室への信頼と敬愛、天皇陛下・皇后陛下、天皇家をないがしろにする宮内庁東宮・皇嗣職の不祥事(加地皇嗣職大夫の虚偽説明記者会見等)など問題は山積みです。

 

政府与党、野党問わずに、国民の声、国民感情にもう少し配慮してほしいものです。

男系が同一であることに拘っているようだけど。旧皇族と現皇族の男系が一致していることは、事実として確認されたことなのだろうか? 家系図の信憑性の問題になるが、記録が常に真実を残しているとは限らない。現在はY染色体のハプログループを確認すれば、男系が同一であるかは確認できるので、この検定は先にやっておくべきだと思う。

一般国民から男系男子を皇族とするのは、憲法第14条門地(家柄)による差別に抵触しない、との見解を内閣法務局の部長が出したとは信じられない。

 

東京大学や京都大学の名だたる教授が、一般国民から男系男子を皇族とすることは憲法第14条に違反すると言っておられるのに、この見解は有識者会議が出した案の後押しをしているとしか思えない。

 

このような例外を認めていては皇族と一般国民の区別がなくなり、今まで守られてきた皇室としての意義がなくなってしまう。絶対にこのような例外は認めてはいけない。

これでまた、日本は先進国から置いていかれる。多くの国では、長子で継承するようになっている。そして、人数を縮小している国もある。

 

日本は、いまだに男子に拘っているし、皇室離脱した子孫を皇族に復帰させようとしている。
ただでさえ、お金がかかる宮家がいるのにこれ以上人増やしたらまたお金がかかる。

 

差別の例外とか関係なく、突然現れた人を皇族として認めて敬えるかどうかです。
もう、直系長子にしないなら令和で終わりにして欲しい。

旧皇族にしても、皇籍を離れて80年近くになる。勿論両親や祖父母から自分が皇族だったことは伝え聞いてはいるだろうが、だからといって皇族に復帰したいと考える人がどれだけいるか?

 

面倒な行事や催事への参加などが増えるだけで、何のメリットもない。生活の保障はされるにしても、今現在殆どの人が職を持ち普通に生活をしている訳である。

 

何か不祥事があれば秋篠宮家のようにバッシングされる。良いことは何ひとつない。何れこうなるであろうことは、平成に入った頃から言われていたのに、先送りをして来た歴代政権の責任は重い。

 

女系天皇はともかく、女性天皇は認めなければもう後がない。悠仁親王の負担が増すだけである。

〉憲法14条の例外として認められた皇族という特殊な地位の取得で、問題は生じないと考えている

 

考えるのは自由ですが、憲法上の例外は世襲の天皇の地位だけです。例外規定は厳格に解すべきです。国民のうちの一部にのみ、皇族という特権的な身分を取得できるという特権を与えるのは、合理的な理由の無い差別です。

悠仁さま1人が生まれたからって継承の危機には焼け石に水。なのに、小泉政権での「皇位継承がテーマ」の有識者会議と違って、安倍政権での有識者会議は「男系男子での皇位継承はゆるがせにしてはならない」と近視眼的なことを前提に置いてしまった為「皇族数確保」の提案にテーマがすり替わってる。明治時代に内輪で決めたことを、さも神話時代からの伝統みたいに扱うから。

 

主題を討議しないなら会議する意味なくない?出た結論はただの参考意見だ。安定的な皇位継承の為に皇室典範の改正と、その遡及適用を願います。

今まで一般国民だった人を敬う、様付けで呼べと言われても。本人も環境の変化に戸惑う。

 

世の中ジェンダーフリーと言われるのだから愛子さまでよろしいのではないか。時代の流れ共にまた国民が愛子さまでと思うならそれが民主主義だと思う。

引用:『Yahoo!ニュース』皇族復帰、家柄差別の例外 皇位継承策巡り内閣法制局が見解

 

◆皇室研究者・高森明勅氏の見解は

The Tokyo Postによる2022年12月23日付の記事『「皇位の世襲」と「門地による差別禁止」の関係を整理する』では、神道学者・歴史家・天皇・皇室研究者である高森明勅氏の見解を紹介している。

皇統譜ではなく一般国民として戸籍に登録されている旧宮家系男性の場合はどうか。

 

それらの人々は、あくまでも第14条を含む第3章全体=一般規定が全面的に適用される「国民」であり、憲法上の根拠規定(第1章)によって例外扱いを受ける「皇室」の“外”にいる存在なので、「門地による差別禁止」規定はそのまま適用される。

 

 

旧宮家養子縁組プランは憲法をねじ曲げる

 

そもそも、根拠となる第2条は男系・女系、男子・女子のすべてを含んだ皇統による「世襲」を要請している(内閣法制局執務資料『憲法関係答弁例集(2)』ほか)。だからその範囲を越えて、単に憲法の“下位法”である皇室典範の要請にすぎない「男系の男子」による継承を確保するために、憲法の「門地による差別禁止」を踏みにじることは許されない。

 

よって、旧宮家養子縁組プランは憲法第14条の「門地による差別禁止」に明確に抵触するから、とても採用できないという結論になる。

 

◆致命的に損なわれる天皇の権威

万が一、憲法をねじ曲げて旧宮家・男系男子による養子縁組プランが制度化されるようなことがあれば、どうなるか。

天皇をめぐる制度が憲法違反の疑いを抱えてしまえば、その権威は致命的に損なわれ、これまで皇室と国民との(合理的な)区別を受け入れてきた国民からも、天皇・皇室は“国民平等”の理念にひび割れを起こさせる、差別的存在と見られるだろう。

 

高森氏の危惧はとても真剣なものである。一般人として長く生きてきた男子が、女性皇族との婚姻を介すことなく、いきなり特権階級的に皇族の身分を取得する「養子縁組」。どう考えてもこれは、皇室と国民の信頼感のバランスを失うきっかけになるだろう。



◆内閣法制局の発言のパワーは侮れない

このたび話題となった内閣法制局は、2016年9月にも天皇陛下の生前退位についての答弁で注目を集めていた。

当時の横畠裕介長官が衆議院予算委員会で「憲法2条の改正までは必要ない。政府が検討している今回限りの特別措置法で対応する方法も可能だ」という解釈を示し、結局その通りになったのだ。

法令の解釈などで内閣を補佐する内閣法制局は、影響力で見ると有識者会議どころではないものを持っている。そう考えると、この度の「門地の差別、憲法上の問題はない」といった解釈は、非常におそろしいものがある。

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木村氏の経歴はこちら。京都大学法学部のご出身ではあるが、司法試験に関する情報は見つからなかった。ただ、通産省(経済産業省)入省組だけあって、資源エネルギーに関わるお仕事がかなり多かったもよう。その間には、さぞかし多様々な人脈をお作りになっておられたのだろうと思う。

内閣法制局の木村陽一第1部長は、資源エネルギー問題に長く関わってこられたようだ(画像は『弁護士山中理司のブログ』のスクリーンショット)
内閣法制局の木村陽一第1部長は、資源エネルギー問題に長く関わってこられたようだ(画像は『弁護士山中理司のブログ』のスクリーンショット)

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

画像および参考:
『REUTERS』皇族復帰、家柄差別の例外 By 共同通信, Kyodo

『Yahoo!ニュース』皇族復帰、家柄差別の例外 皇位継承策巡り内閣法制局が見解

『日本経済新聞』内閣法制局、答弁を訂正・陳謝 学術会議巡る国会(2020年10月8日)

『弁護士山中理司のブログ』木村陽一-内閣法制局第二部長の略歴書

『THE TOKYO POST』「皇位の世襲」と「門地による差別禁止」の関係を整理する【高森明勅】