未来を託せる本物のヤゴ博士くんを失った日本トンボ学会の悲しみと喪失感 会員さんが改めてトンボ相論文捏造問題を語る
今から数か月前、ご存じ皇室系YouTuberの一ノ瀬さん(Real Imperial Story by 輸入食品さん)は「悠仁さまのトンボ論文に関し、あるご視聴者さまからコメントが」として、日本トンボ学会の会員さん(ここから先はYさんと呼ばせていただくことに)による貴重なお話を紹介しておられた。
国立科学博物館の研究主幹で論文の責任著者となった清拓哉氏に、論文の誤りについてメールで指摘するも、無視されてしまったというYさん。一ノ瀬さんの『赤坂トンボ論文!共著者清拓哉博士、専門家の問い合わせさえ完全無視!』という動画は視聴回数が83,000を超え、コメント欄は勇気あるYさんへの感謝の言葉であふれかえっている。
このたび、光栄なことに筆者もそのYさんにお話を伺う機会をいただいだ。トンボ論文の杜撰さに関しては一ノ瀬さんの動画で殆ど語られたとのことで、こちらでは後半で、Yさんが共感したという「悠仁さまの独特のお人柄」などについても語っていただいた。多くの国民が、悠仁さまにまつわる昨今の問題を、「引っ込み思案な悠仁さまを、何とか優秀に見せようと必死になった紀子さまが引き起こした」と考えているからだ。
「日本トンボ学会会員ではなく、ヤゴに惹かれて研究を続けてきた男性くらいにしておいてください」とおっしゃるYさん。実はIQが140を超えるギフテッドで、ヤゴをはじめ生き物の絵を多数描いてこられたとのこと。そんな作品も数点紹介してくださった。
Yさんが作る学術的な資料は、絵が図鑑か写真集のような美しさで、とにかく綿密、細やかな描写が特徴。この記事では、Yさんの作品も楽しんでいただきたいと思う。

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―― Yさん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
Yさん: よろしくお願いします。実は、最初に悲しいお話となります。2023年の日本トンボ学会東京大会では、ヤゴ、つまりトンボの幼虫の特徴や生育環境を研究していた滋賀県の河村優くんという当時小6だった男子のポスター発表が一番の目玉となったんですが、なんと今年の夏に水難事故で亡くなるという悲しい知らせがありました。
将来、必ずや優秀な研究者となってトンボ学会を牽引して行ってくれると思われた若い人材が、たった13歳で亡くなってしまうなんて。いち会員として、心からお悔やみを申し上げたいと思います。
詳しいことはこちらに書かれています。
■『中日新聞』5競技で観察「ヤゴリンピック」 守山の小5河村さん「生きもの博士」最優秀賞 2022年12月25日(「メダカと水辺の生き物博士コンテスト2022」で最優秀賞に)
(抜粋)
「丁寧な採集記録とともに、ヤゴについての興味を持たせる」と評価した。
幼い頃から生き物が好きで、魚やヤゴを捕まえるため、毎日のように近所の目田川に足を運ぶ。「だから、川のどこにどんな生き物がいるか分かっている」と胸を張る。
「生き物の住む場所を守りたい」と四歳から地元NPO法人の活動に参加。河川の清掃などを通して出会った研究者らから、生き物や環境保全について学んできた。
現在も自宅でヤゴを飼育し観察を続ける。「県内にいる約百種類のトンボのヤゴを全部捕まえたい」と意気込む。将来の夢は研究者。「まだ発見されていないことを見つけてみたい」と笑顔で語った。
(訃報)
■『京都新聞』滋賀県守山市の「生きもの博士」13歳で急逝 溢れる好奇心で大人たちも魅了「生きた証残したい」
―― なんという無念、悲しすぎます。日本トンボ学会の皆様も、あまりの喪失感で打ちひしがれてしまったのではありませんか?
2023年は例の『赤坂御用地のトンボ相』論文が世に放たれた年です。マスコミも、あのような論文を書いた悠仁さまを持ち上げるのではなく、正真正銘の「ヤゴ博士くん」にスポットライトを当てるべきでしたね。
あの赤坂御用地の論文は、さまざまな意味で罪深いものだったと改めて感じます。国立科学博物館も反省していただきたいです。Yさん、やはりあの論文がどのようにまずいものなのかを、少しお話いただけませんでしょうか?
Yさん: はい。何より写真の解像度が全体的に低すぎますね。例のトンボの写真66番も、キャプションがそもそもおかしいのです。「アキアカネ♀の羽化」となっていますが、あの写真なら、本来は「アキアカネ未成熟♀」以外はありえない。「羽化直後のアキアカネ未成熟♀」でも不可です。66番のほか74番「コシアキトンボ♂羽化」も同様です。
ブログ記事でMKさんという長野県の専門家の方も指摘されていましたが、もしも「羽化直後」とキャプションを付けるならば、その写真にはアキアカネの羽化殻が写ってなければならないのです。あの干からびた羽化殻は、アキアカネのものではありません。均翅亜目(イトトンボ類)のものです。
参考:『「ぜひ調査期間中のフィールドノートを」 トンボ論文・表1と本文の解説が符合しない件、長野県のMKさんはこう見る』
そして「羽化」と称するなら、一連の羽化という「イベント」を象徴するような写真を数点、例えばアキアカネならば倒垂し、イナバウアー状態で成虫が殻から出てくる写真が含まれていなければ、「アキアカネの羽化」写真とは言えないでしょう。
たとえばアキアカネと同じ不均翅亜目の、クロスジギンヤンマの「羽化シーン」を私が描いたものがこちらです。左から右へと進みます。

―― ありがとうございます。ふっくらとして、絵とは思えないほどみずみずしいですね。なのにあのトンボ論文では、羽化したばかりのヤゴ殻が灰色で干からびていました。ブログには、お二人の方から「本物のアキアカネの羽化をご覧ください」と、とてもフレッシュな写真が送られてきました。
例えばこちらの画像、左側は長野県のMKさんが撮影したもので、右側は悠仁さまです。

Yさん、ヤゴの専門家として他にも気になった点はありませんか?
Yさん: 不思議なことに、あの論文には何故かヤゴの生体写真がひとつも出てこないのです。菖蒲池を中心に、あれだけ池の存在をアピールしておきながら、ヤゴの写真がひとつも無いのは不思議としか言えません。

―― おまけに、論文発表後に菖蒲池は全面的な工事に入り、ヤゴやヤゴ殻の存在からDNAまで証拠が消えてしまいました。
Yさん: 幼虫採集はその種が定着している証拠として重要なのです。その写真を示さない、現場も壊してしまったなどは、不手際の骨頂です。
―― 自然が豊富な奥多摩の深い所にしかいないような希少種のトンボが、いくら森や池があるとはいえ、都心のど真ん中の赤坂御用地にいるの?と私でさえ不思議に思います。なのにマスコミはそこに触れず、「悠仁さまが東京都23区で絶滅危惧種とされているトンボを次々に発見、撮影に成功」なんて興奮気味に報じるばかりでした。

画像引用元:『YouTube』【悠仁さま】撮影の絶滅危惧種のトンボ 初めて発表した学術論文に掲載 日テレNEWS
◆赤坂御用地内とあっては、誰も意見できない
Yさん: オツネントンボ(越年蜻蛉)の写真No.19の捏造も話題になりましたが、そういうのをトンボ学会がスルーしたのは、多分そこが赤坂御用地だったからでしょう。
科博の研究者やスタッフがなぜそんなことを!と怒る方もいらっしゃるようですが、宮内庁に雇われ、普段から悠仁君の画像を加工する作業をやっている人たちが、あの論文の画像にも関与しているのではないでしょうか。トンボを愛している人なら、良心を痛めずにあんな安っぽい捏造なんて出来るはずがないですから。
もしも一般の人たちが絶滅危惧種指定のトンボ写真を捏造したら、大ごとになります。トンボ学会も黙ってはいない。絶滅危惧種で捏造をやったら首が飛ぶくらいの覚悟がいります。絶対にやってはならないと皆わかっています。

ーー そうですよね。ああいう場所が調査の舞台では、もう治外法権。トンボ学会の皆さんにとっても触らぬ神に祟りなし、見て見ぬふりをしようということになってしまうんでしょうね。
Yさん: だから科博でも、あの論文は企画展をやったりして一般の人に見てもらうようなものではなく、「献上品」くらいの認識なんじゃないかと。科博の紀要として著者名に悠仁君の名が冠された論文が出た、という既成事実を作りさえすれば良かったのではないでしょうか。
そもそも悠仁君も清氏も、どこまで執筆に関わっているのか、ここも明確ではなく…。
最も不可解なのは、明らかに意図的な捏造と判る写真などです。どうしてそんな明らかに不備と判る事をして論文を作成したのか、そうまでする合理的な理由は何なのか?と。皇族のために突っ込みどころ満載の論文を作ってしまった、その理由や因果関係を想像できずにいます。
◆国は研究者の卵をきちんと育てる努力を
ーー よりによって皇族があのような杜撰な論文を書いて、子供から大人まで皆が大好きな科博から出て、私のブログにも大勢の方から怒りのメールが舞い込みました。
教育関係者の方が半分で、特に理科の先生方が怒っておられて。日々、教育現場で生徒さんの研究活動をサポートし、誠実な論文を書くよう指導しておられるのですから…。
メディアに対しても苛立つことが多かったです。正誤表が出て、こんなにミスがあったの?と世間も驚いて、それでもまだ立派だ優秀だと悠仁さまを持ち上げるんです。トンボの専門家に取材してみれば実態がわかるはずなのに、それもせず…。
■この期に及んでも悠仁論文を絶賛したフジテレビ 物言わぬトンボ学会…国民だけは正しい目でジャッジを
■国際昆虫学会議ICE2024でマスコミ2社が画像をボカすわ、ダマすわ… 宮内庁が忖度報道を強要か
今回はっきりと思いました。あまりご優秀とは言えない皇族が、専門家を振り回しながら生物学者となり、名誉博士号だの勲章だのを授与されるという構図は、もういい加減やめていただきたい、と。
Yさん: 私も憤りは禁じえません。こんなことでは、日本の科学・学問の衰退は目に見えています。
近い将来必ず訪れるAI(AGI)との共生社会。関係が逆転して、人間がAIに追従するような状態が危惧されています。そして、自然科学の研究、文化の営み等に、別世界にいるはずの宮内庁が、悠仁さまをはじめとする皇族方の能力や可能性の範囲を超えて無理矢理介在してくる。そして、研究の成果を皇族のものとする。
そんなものは「異物」でしかありません。そんな皇族や宮内庁のやり方を容認し、迎合する組織もまた「異物」です。AI共存社会から遠のき、いずれ皇室は「不要だ」という声のなかで消え去る運命を迎えるのかもしれません。こうした状況が国民に良い影響を与えるとは到底思えませんから、宮内庁はただちに考え方をアップデートしてもらいたいと切に願います。

―― それに、真剣に研究を続けている少年少女のために将来につながる道をきちんと用意し、活動をもっともっとサポートしてあげてほしいです。優れた研究者さんほど後進を育てることに熱心な方が多いようですし、そんな研究費は国がどんどん助成するべきです。
Yさん:本物の才能や熱意を持った河村君のような少年少女が、全国にいっぱいいるのです。彼らに対して国はもっと支援してほしい。このままでは「教育廃れて国滅ぶ」が現実のものになってしまいます。
―― もしも国からの助成金が十分であったなら、誇り高き国立科学博物館は、あの仕事を引き受けずに済んだのではないかとさえ思うのです。
今年、一般会計税収が過去最高の75兆円にもなったと報じられましたが、防衛費や海外バラまきばかりで国内の文化、芸術、教育事業への助成金はすっかり後回しに。科博はクラファンが頼り、東京藝大は練習用のピアノを維持できない。嘆かわしくてなりません。
失礼な質問かとは思いますが、トンボ学会さんは資金面では潤沢だったのでしょうか。
Yさん: 資金も会員数も不足しております。そもそも会長さんがトンボ学会の大会で、「絶滅危惧種のトンボが絶滅するより、トンボ学会が絶滅するほうが早いんじゃないか?」とジョークを飛ばす位ですから。
そういえば今年、「再生の道」が参院選のワンイシューとして「公教育への投資」を掲げ、私もそれに心から賛同しました。国、そして国民は文化、芸術、教育への投資ということにもっと重きを置き、高い意識をもってほしいと思います。
◆悠仁さまの様子にピンとくるものがあった
―― ところでYさんは、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)であることをカミングアウトされていらっしゃるのですね。ここから少し、悠仁さまがご自身でおっしゃった「こだわりの強い性格」について、感想などを伺えればと思います。
ただ、玉川大学農学部の視察映像などで拝見していた悠仁さまは、引っ込み思案な雰囲気で言葉もハッキリとしなかったのですが、成年会見あたりで人相や人格がまったく違う悠仁さまが現れた、そんな違和感はあります。
Yさん: 逆に朝比奈さんに質問したいのですが、「ベツヒトさま」「ドノヒトさま」などと呼ばれるような事態に至った経緯について、少し説明していただけますか?
―― 根拠は色々とあります。目の大きさ、鼻筋の長さなどは、百歩譲って「加工だ」という釈明もアリでしょう。ただ、モミアゲを人工的に描いたり、短期間に天然パーマ/直毛、喉仏あり/なし、丸顔/面長、耳介の大きさや形などに違いがあるのは異様です。
映像と画像を多数確認した結果、今では私も複数の悠仁さまが存在すると怪しんでいます。例えば、この春に現れた笑顔も自然で明るい雰囲気のおひとりは、お話をされる時、下唇と舌の動きにかつて見られなかった特徴をお持ちです。
Yさん:そうでしたね。ただ、以前の悠仁君が「本物」、最近の “陽キャ” が「偽物」と言えるかどうかはわかりません。ASDは、幼児期〜児童期にその特性が純粋に現れるのです。
さらに、ADHD(注意欠陥多動症)を伴うのが一般的で、「積極奇異」と呼ばれる誰にでも馴れ馴れしくしてしまうタイプの人もいます。同一人物でも年代によって雰囲気が異なって見えることはあると思います。
それから悠仁君に限らず、誰か他人について「発達障害(又はその傾向)があるか否か?」は、誰にも特定が出来ません。自分自身についてしかわからない物事があり、そこに幼い時から親密に関わっていた人たち(第一には両親・親戚など)から得たエピソードも併せて総合的に判断し、最終的には医師の判定が必要になります。
それだけ先にお断りした上で、発達障害の傾向が感じられた「かつての悠仁君」を前提にし、私なりに感じたことをお話させていただきたいと思います。
―― はい。よろしくお願いいたします。研究者として生きていくなら自我やこだわりの強さは、むしろ武器になると思います。ところが、あの論文のページの構成は、責任著者の清拓哉氏が過去に共著として関わった論文のテンプレに非常によく似ています。枠組みが用意されたような論文執筆で、悠仁さまは研究を伸び伸びと楽しむことができたとは思えないのですが…。
Yさん:その通りです。私は幼い頃、色白で華奢、運動がまるで苦手で、静かに本を読んだり、音楽を聴いたり、絵を描いたりすることが好きな子供でした。スケッチブックに絵を描き始めたのは2歳前です。伊豆急の電車の絵を描くことが大好きでした。

―― わぁ…斜めに見える電車の車体の角度、窓の大きさ、それに車体の色選びが正確、かなり写実的です。幼児期に描く絵でその子の知能指数がわかるという説、まさにそれを思い出しました。
Yさん:当時の私はASD/自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)という発達障害の特性が顕著な子供で、悠仁君の映像を見たとき、真っ先に「当時の自分とどこかで重なる部分がある」と直感したのです。
―― そうなんですね。子供の頃、ある分野の知識なら誰にも負けない、どんな質問でも答えてくれる「~博士」なんて呼ばれる級友がいました。意気揚々と何かを説明するときの瞳の輝きといったら…。
Yさん: 幼い頃、何かに夢中になり、本当に興味を持てるものが見つかった場合、教育環境が良好であれば、驚異的な集中力で「~博士」とあだ名がつくような存在にはなれると思います。様々な特性と戦っていくだけの環境の良さがあれば…の話ですが。
◆無理をさせるのは禁物
ーー 悠仁さまは幼児期に「ご優秀設定」が敷かれ、ご両親の依頼もあったのでしょうが、大人たちが競い合って手を貸してきたように思います。『小笠原諸島を訪ねて』作文もゴーストライター説がありました。でも、そうしたお節介は煩わしいもの。ASDの特性を持つ子にはどんな影響を与えるのでしょうか。
Yさん: ASD(アスペルガー症候群)でも、「受動型」と呼ばれるタイプの子がいて、何においても表面的には従ってしまうことが多いのは事実です。ただ、そんなことばかりしていたら、自閉傾向の強い子どもは益々萎縮してしまいます。
ーー 幼いなりに何かに没頭し、知識が増え、特異な着眼点も見出されるようになったら、それが優れた研究者になる第一歩かもしれないのに…と、やや気の毒にも思います。
Yさん: 悠仁君の場合は、周りの大人たちが悪過ぎましたよね。ASDでなくとも一番不幸な育ち方だったと思いますよ。
一度天才に仕立てられてしまったら、プライドもあるからそれを下げられないし、煩わしい大人たちが起こしたトラブルを経て、悠仁君は「みんな敵だ」などと思うようになったり、下の人間に異常に冷酷になる、なんてこともあるかもしれません。
―― 無理をさせれば、そんな方に進む可能性もあるんですか。心配ですね。Yさんは少年期に、ご家族に「ああしたら?こうしたら?」と提案されて、関心を持てなかった場合にきちんとイヤと言えましたか?
Yさん: 言えませんでした。小学校高学年から地元の児童を集めた剣道のクラブに入らせられ、いやいや通いました。ASDの特性もあるかと思いますが、防具を付けることが困難に感じ、それだけに全ての時間を費やす事態となってしまいました。
指導をされていた方が私の両親に「お子さんは、この道には向いていないかもしれない。もっと別のことをやらせてあげたほうが、良さを発揮できると思いますよ」と伝えてくれたようです。
発達障害とは親の育て方に関係なく、生まれつきの脳の作りにちょっとした偏りがあってこだわりの強さなどが現れるもので、それにより命、健康、人格などが人より「劣る」ということでもないのです。
ーー 幼い頃から好きだったとおっしゃるトンボ、ヤゴの世界。真に打ち込める研究の対象を見つけたYさんは幸せですね。
Yさん: 私のトンボ・ヤゴに対する興味についてお話をするなら、野外よりも書籍から興味を持つタイプでした。ただ、当時はヤゴに関してあまり良い資料が見つからず、かなり長い期間離れていたのですが、20年程前、その興味が一周して再び自分のなかに戻ってきたのです。尊敬できる先生と出会ったことで、持てるエネルギーをヤゴに関する論文に注ぐことになりました。
「悠仁さまはもうトンボには飽きたようだ。イネも関心がなさそう」と言う方もいるようですが、私のような例もあり、現時点でそう見えても、一生を通じてそうなると決めつけることはできないと思います。
―― では、職業的な向き・不向きについても、途中から変化が起きたりするのでしょうか。
皇室典範がこのままであれば、悠仁さまは将来的に天皇になり、晩餐会や閣僚を招いての昼食会などを主導するお立場です。ご公務も含め、騒々しい場所が多いと思います。悠仁さまがASDという特性をお持ちだとご苦労は多そうですが、それもいずれ年齢が上がれば矯正されていくと思われますか?
Yさん: コミュニケーション能力は、言語的コミュニケーション能力と非言語的コミュニケーション能力の2つに分けられると思います。大谷翔平君はそのどちらも高いですよね。コミュニケーション能力の高さは、大抵この2つを合わせ持つ人ということになるかと思います。
私も言語的コミュニケーション能力はそれなりに自信があります。問題は非言語的コミュニケーション能力のほうです。それを求められるとなると、ちょっと苦痛になります。ただ、晩餐会を仕切ることが「難しい」というだけで、明らかな問題が起こるというわけではないと思います。
―― 自閉症スペクトラムも発達障害も、まだまだ理解されていない面が多いです。世間に広く知っていただくためにも、すぐれた書籍など、お薦めはございますか?
Yさん: こちらの2冊の本が参考になります。特に『自閉症スペクトラム−10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』では、非障害として自閉症スペクトラム一般のことを指す「AS」と、発達障害としての「ASD」の違いなどが理解できると思います。

「非障害の自閉症スペクトラム」を含めると、実に10人に1人の割合でASの傾向を持ち、若い時はASDに苦しんでも、年齢を重ねることで「ASの範囲」に収まるようになるという人はかなり多数いらっしゃいます。私自身もおそらくその1人だと思います。
ところが、天皇になれば並外れたコミュニケーション能力が求められるわけです。それが悠仁君にとってストレスになるなら、それまでは特に支障を感じることもない「AS」の状態に収まっていたものが、徐々に悪化して「ASD」になるということも十分考えられます。無理はやはり禁物です。
◆Yさんが描いた「ヤゴの絵」に惹かれる人たち
―― Yさんが研究のために描かれたヤゴ画、そして、その傍らで描かれた他の昆虫やイエネコなどの絵を少し紹介していただけますか?
Yさん:はい、こちらはギンヤンマとクロスジギンヤンマの終齢幼虫の背面の画です。

私の研究に「ギンヤンマとクロスジギンヤンマの幼虫の外部形態での見分け方」がありまして、『トンボ通信』を個人で発行していらっしゃる日本トンボ学会の重鎮・互井賢二氏が、興味を持ってくださいました。拙研究を発表するよう勧められまして、その挿絵として描いたものなのです。
その研究は最終的に、トンボの愛好家が集う「関西トンボ談話会」が1965年から発行してきた会誌『Gracile(グラキーレ)』にも掲載されました。

―― それは素晴らしいですね! 先ほどの河村優さんについて、中日新聞の『5競技で観察「ヤゴリンピック」 守山の小5河村さん~』という記事にちょっと驚きました。ヤゴの背面をきれいに描いた絵が、Yさんの画風とそっくりなんです。河村さんは「ヤゴ博士」を目指し、長いことYさんの研究資料から様々なことを学んでおられたのではないでしょうか。
Yさん: 私は2023年の東京大会には参加が叶わなかったのですが、後日、報告書などで河村君のポスター発表が絶賛されていることを知りました。内容を読めば読むほど、大人にはない発想だと思いましたね。
ーー そうだったんですね。滋賀県守山市の広報も2022年12月号で河村さんの特集を組んでいまして、ここで河村さんのお母さまが、「人に合わせるのが苦手なのではと心配もありましたが、だからこそ、自分の好きなことで自由に伸びることができた。地域に育ててもらったと感謝しています」と語っていらっしゃいます。何から何までYさんにそっくりです。

■『広報もりやま』もっと、キミのことを知りたいんだ 水辺の生き物博士 河村優さん
ーー 悠仁さまも同じタイプで、トンボが好きで色々と調べてみたいという気持ちは、実は本当にあったのかもしれませんね。ご本人の好きなように、伸び伸びとそれをさせてあげていたら、どんなによかったか…。
2023年の東京大会を欠席された悠仁さまですが、ぜひ本物のヤゴ博士くんの発表に触れ、ご自身について色々なことを考えるきっかけにしていただきたかったです。そういう意味でも、河村優さんという貴重な逸材の早世に改めて胸が締め付けられる思いです。残念でなりません。
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インタビューは以上となります。
Yさんが描かれた素晴らしい絵の数々、どれも温かみや愛情があふれていて、ふと幼い頃に読んだ絵本の美しい挿絵を思い出します。Yさんにはいつか是非とも、そちらの道でもご活躍いただきたいなと感じました。
今回、こちらの質問に配慮が足りなかったり、お話をしづらい部分も多々あったかと思いますが、辛抱強くお付き合いいただきました。Yさん、貴重なお話、ご協力を本当にありがとうございました。
(聞き手:朝比奈ゆかり/エトセトラ・ジャパン)