【皇室、徒然なるままに】第78話:入試の多様化と悠仁君 西村 泰一
悠仁君の進学問題が世上喧しいようである。ここではどの大学に入学するかということよりも、どの入試形態で入学すべきかについて論じてみたい。大きな流れとして、日本では大学入試がどんどん多様化してきている。ここでは、これとの関連で悠仁君の進学問題を論じてみたい。
§1 一般入試
これはもっとも一般的な入試で、然るべき学力試験を課して、その結果の上位の者から取っていくという方式である。悠仁君がどの大学へ進学するかの議論が世上喧しいが、一般入試を入試の理想形としてのものが大半である。大学は学問を教えるのが第一義的な使命で、その担保のためには、高校で学んできたことを、かなり前提とせざるえないので、その意味では全く全うな入試形態と言わざるを得ない。例えば理系の学問分野では、あるいは文系でも経済学あたりでは、大学1年の折に多変数の微積分と線形代数を勉強することが標準化しているが、「高校の数学はさっぱりわかりません」では、身も蓋ももないのである。
悠仁君が、然るべき学力試験を経て東大へ入れば別にどこからも文句は出ないのであるが、小学校5年まで自分の名前の「悠仁」が書けなかったり、先日伊勢神宮へ参拝された折にも、もう高校生であるにもかかわらず、「愛知県の伊勢神宮へ行ってきました」と他の皇族の方に仰る御仁で、その「バカ殿様」ぶりは半端ない。既に鬼籍に名を連ねられた志村けんさんが「バカ殿様」を虚で演じていたとすれば、悠仁君はこれを実で演じるのである。
そんな彼が東大へ一般入試で入るなんて話は、夢のまた夢にしか過ぎないのである。なお文科省からの発表によると、23年度の国公私立大学の入学者総数は62万4615人。このうち一般選抜による入学者数は29万9050人で、入学者総数の半分にも満たない約47.9%となっている。これは私立大学ではさらに顕著で、入学者総数49万1706人に対し、一般選抜による入学者数が19万5049人で、入学者総数の約39.7%と4割以下になっている。
§2 推薦入試
文部科学省の「大学入学者選抜実施要項」において推薦入学制度が公認されたのは、かなり古く1967年である。同年の推薦入学実施大学数は38校にとどまっていたが、その後93年には481校、2011年には722校へと急増している。
大きく3つのPatternsがある。一つは指定校推薦と呼ばれるもので、大学側から指定を受けた高校に枠が与えられ、その枠に入ることができれば、高校の代表として大学に出願することができ、推薦されれば合格率は非常に高く、ほぼ落ちない。逆に言うと、高校としても変な生徒を推薦できない。そんなことをすれば、指定校を取り消されるからである。
さらに特別推薦というものもある。成績なんかはどうでもよく、部活動の実績や課題活動などを重視した推薦制度のことである。スポーツ推薦などが該当する。種目にかかわらず、国体で優勝したことがあるとか、オリンピックに出場したことがあるとかといった若者を釣り上げ、大学の広告塔として活躍してもらうという目論見である。
それから公募型推薦と言われるものもある。在学中に高校から推薦があって、さらに大学が出している条件もクリアできれば出願できる。東大は推薦入試には永く及び腰であったが、2016年度入試から導入されている。
ただし、悠仁君、あんなインチキ論文で東大に推薦で入ろうなんてしないほうがいい。そのくらいの分別は持ってもらいたい。東大もあんなインチキ論文で入学させるべきではない。ヤクザの世界では親分が「鴉は白い」と言えば子分は「鴉は白い」と合わせなければいけないのであろうが、学問の世界では親王であろうが、インチキ論文はインチキ論文なのである。そのくらいの矜持のあるところを見せてほしい。
§3 AO入試
総合型選抜の前身である「AO入試」は1990年、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスの発足にあたって全国で初めて導入された。AO(Admissions Office)入試とは、学力試験の代わりに高校での成績や小論文、面接などで志願者を評価し、「どのような学生に入学してほしいか」という大学のアドミッション・ポリシーに合致する人物を選抜する方法を指す。平たくいうと、学力よりも人間性に重きをおいて選抜するという話である。
かなり前のこと、「ゆとり教育」というのが一世を風靡したが、あれの入試版だと思えばいい。多くの大学生は、卒業後はどこかの一般企業の入社試験を受けて入社することになるが、あの入社試験に近いと思ってもらっていいだろう。ただし、90年代以降、このAO入試が多くの大学・学部に拡大する中で、「学力を問われない入試」というイメージや批判が広がったことを受けて、学力も含めて総合的に見ていこうと2021年度入試から総合型選抜という名称に変更されている。
AO入試はユニークな人材を採ることを目指しているようで、STAP細胞論文の研究不正事件を引き起こした小保方晴子氏は、早稲田大学のAO入試合格1期生だったし、悠仁君の義兄の小室圭はAO入試で書類選考と面接だけで国際基督教大学(ICU)に9月入学している。
誰でも知っている東国原英夫さんは社会人AO入試で早稲田大学政治経済学部に合格なさっている。ただし中退されているが。AO入試の発祥の地、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスには最初総合政策学部と環境情報学部が置かれたが、なにかと有名な「自称社会学者」の古市 憲寿氏は、環境情報学部にAO入試で入学されている。ごく最近も鈴木福さんが2023年に慶應義塾大学環境情報学部(SFC)に、AO入試で合格なさっている。総合政策学部のほうも色々あるようだ。
悠仁君もAO入試狙いでいいのではないだろか?これであれば悠仁君を採った大学も世間の批判に晒されなくて済む。AO入試というのは、もともとそういうものだからである。先程も言ったように、もともと入社試験と同類なので、ゴチャゴチャ言うほうがおかしいのである。
AO入試を実施している大学をあげておこう。残念ながら、東京大学にはまだない。
北海道・東北
北海道大学(理学部、医学部、歯学部、工学部、水産学部)
岩手大学(人文社会科学部、理工学部)
秋田大学(国際資源学部、理工学部)
東北大学(文学部、理学部、歯学部、工学部、農学部、法学部、経済学部)
弘前大学(人文社会科学学部、理工学部、農学生命科学、医学部、教育学部)
山形大学(人文社会科学部、地域教育文化科学部、理学部、医学部、工学部、農学部)
福島大学(人文社会学群、理工学群、農学群)
関東
埼玉大学(工学部)
東京海洋大学(海洋生命科学部、海洋工学部)
東京農工大学(農学部)
東京工業大学(工学院、物資理工学院、情報理工学院、生命理工学院、環境・社会理工学院)
お茶の水女子大学(文教育学部、理工学部、生活科学部)
筑波大学(人文・文化学群、社会・国際学群、人間学群、生命環境学群、理工学群、情報学群、医学群、体育専門学群、芸術専門学群)
電気通信大学(情報理工学域)
千葉大学(国際教養学部、文学部、教育学部、法政経学部、理工学部、医学部、薬学部、看護学部、工学部、園芸学部)
横浜国立大学(教育学部、経営学部、理工学部、都市科学部)
中部
金沢大学(医薬保険学域)
福井大学(工学部、国際地域学部)
山梨大学(工学部)
名古屋工業大学(工学部)
近畿
滋賀大学(データサイエンス学部)
京都工芸繊維大学(工芸科学部)
大阪大学(文学部、人間科学部、外国語学部、法学部、経済学部、理学部)
奈良女子大学(文学部)
和歌山大学(観光学部)
中国・四国
鳥取大学(地域学部、工学部、農学部)
島根大学(教育学部、人間科学部、総合理工学部、生物資源科学部)
山口大学(人文学部、教育学部、経済学部、理学部、工学部、国際総合科学部、
徳島大学(医学部、薬学部)
香川大学(医学部、農学部)
高知大学(人文社会科学部 、教育学部、理工学部、医学部、農林海洋科学部、地域協働学部)
九州・沖縄
九州大学(文学部、教育学部、法学部、理学部、医学部、歯学部、芸術工学部、農学部、共創学部)
琉球大学(人文社会学部、国際地域創造学部 、教育学部、理学部、医学部、工学部、農学部)
§4 Concluding Music
随分と硬い話に付き合わせたので、私の好きな”Nobody”でも聴いてリラックスしてください。
(理学博士:西村泰一)
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【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月 洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月 京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月 筑波大学(数学)
画像および参考:
・『J-Stage』体育学研究 ― わが国における大学のスポーツ推薦入学試験制度の形成過程に関する研究
・『Wikipedia』ゆとり教育
・『Wikipedia』古市憲寿
・『小論文のトリセツ』[現役SFC生が暴く!] 慶應SFCは慶応じゃない・ゴミ・偏差値がおかしい?行かないほうがいい?
・『YouTube』コバショー【CASTDICE塾長】 ― AO入試で難関大学に受かった有名人を一挙紹介
・『YouTube』Wonder Girls ”Nobody ~(あなたしか見えない ~) (Japanese ver.)” M/V
・『お笑いナタリー』「志村けんのバカ殿様 秋・笑いの大漁祭(06.9.27)」より。(c)イザワオフィス
・『imidas』「一般選抜」入試が縮小している!? ~大学入試の多様化がはらむ危険性とは
・『Polaris Academia』多様化する大学入試:9つの方式を解説!
・『Thinkキャンパス』知っておきたい! 多様化する受験方法とスケジュール
「ただし、悠仁君、あんなインチキ論文で東大に推薦で入ろうなんてしないほうがいい。そのくらいの分別は持ってもらいたい。」
彼が作文を剽窃したにもかかわらず「ご指摘に感謝」という、人を舐めくさったコメントを出した時から思っていたが、彼にはまともな倫理観はないと私は断言する。
そして、今この年齢になっても年齢相応の分別は、ない。
高校3年にもなれば、倫理観や誠実さなどの人間性はもう本人の責任だ。
なのに、周囲がおぜん立てするのが当然で自分はそれに乗って楽しさえすればいい、という感覚だろう。