合法のゾウ狩りでもWWF名誉総裁を解任されたスペイン国王 日本でも関係当局に苦情殺到なのでは…?

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WWFジャパンにこうした動きはまだ見られない(画像は『WWFジャパン』のスクリーンショット)
「問題視」「嫌悪感」という言葉も。WWFジャパンにこうした動きはまだ見られない(画像は『WWFジャパン』のスクリーンショット)

1月8日、NHKが『“動物の福祉“の観点で 全国の動物園などの飼育環境調査へ』と報じ、大きな話題となっている。日本動物園水族館協会が全国約140ヶ所の動物園・水族館などを調査し、飼育環境を改善する取り組みが始まると伝えたものだ。



そのような取り組みはもっと早くから行われるべきだったと思うが、組織のトップは一体誰なのかと「日本動物園水族館協会」の公式ホームページをみてみたところ、総裁の欄に「秋篠宮皇嗣殿下」とある。静岡県の伊豆シャボテン動物公園を通じ、展示を目的に輸入したはずのカピバラを食べたという驚きの内部告発がなされただけに、現時点で秋篠宮さまが総裁というのは適任なのか。

また、同じことは宮さまが名誉総裁を務める「WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)」にも言えるのではないだろうか。そこで筆者は、いやでもスペインで起きたWWFトップの交代劇を思い出してしまった。

 

■WWFスペインでは苦情を受け国王が退任

WWFスペインでは2012年4月、名誉総裁であったフアン・カルロス国王のボツワナ・ゾウ狩り旅行が発覚し、動物保護活動家ら数万人がデモを起こすなど猛烈に抗議し、国王の名誉総裁辞任を強く求めた。

これを受け、WWFスペイン事務局長は王室に「説明を求めたい」とする書簡を送付したが、ゾウの保護活動にあたって50年というWWFの信頼を失墜させた責任は重く、ついに同年7月、臨時総会にて国王の名誉総裁解任が圧倒的多数で決まったという。

当時のスペインは失業者も多く、経済状況は悪化の一途。そんな中でバカンス旅行や税金の無駄遣いを続けていたカルロス国王だけに、メディアや政治家からも批判が噴出していた。人々に愛されてきたゾウの殺生に、さらに世論の不満と批判が重なったと言えるだろう。

 

■WWFジャパンも「大変残念かつ遺憾」

WWFスペイン事務局長が国王に国民の苦情を伝える手紙を書き、国王も名誉会長の辞任を決意した(画像は『WWFジャパン』のスクリーンショット)
WWFスペイン事務局長が国王に国民の苦情を伝える手紙を書き、国王も名誉会長の辞任を覚悟した(画像は『WWFジャパン』のスクリーンショット)

 

WWFジャパンも2012年7月、そのスペイン国王の名誉総裁職解任に関して声明を発表しており、同団体の自然保護活動を支えてくれている支援者たちにまずは謝罪した。さらに中盤からは「参考情報:WWFスペイン事務局長がスペイン王室に送付した手紙(仮訳)」として、実際に国王に宛てられた手紙の内容を日本語で紹介している。

日本のWWFジャパンも、同様に私たちの不快感を汲み取ってくれればいいのに…(画像は『WWFジャパン』のスクリーンショット)
日本のWWFジャパンも、同様に私たちの不快感を汲み取ってくれればいいのに…(画像は『WWFジャパン』のスクリーンショット)

要点を抜粋すると…。

「ゾウを狩ることは、たとえ合法で、管理された環境下で行なわれているものであっても、WWFのパートナーおよび一般の市民は、これを明らかに問題視しています。

 

今回のことに嫌悪感を持つ多くの会員が、WWFスペインから離れようとしています。そして、何万人もの人々が、さまざまな電子媒体を通じて、国王陛下にWWFスペインの名誉総裁の職を辞していただくよう求めております。」

 

この残念な出来事は、すでに国際的にも広く知られるところとなっています。」

問題視、嫌悪感、WWF離れ…。これだけの言葉で批判されながら、なおもその座に居座り続けるべきだろうか。国王の退任は正しかったに違いない。

 

■倫理的行動を大切にとWWF

ここで、WWFジャパンの「公正な保全活動を推進するための行動方針」にも注目してみた。そこには、WWFネットワークは世界のどの国・地域においても不正行為の防止に全力を尽くし、公正な活動をおこなうとして『WWF Code of Ethics』なる倫理行動規範が挙げられていた。

職員が最高レベルの倫理的行動を取ること、また、立場や影響力を悪用したり、悪用したと誤解されることを防ぐ

 

違法行為やこの法人の資産の濫用について通報するメカニズムをもち、報告者を守る

上はその倫理行動規範の一部だが、いかなる不正行為も許容しない「ゼロ容認原則の徹底」に努めているといい、防止のために定められたすべての手続きと指針をいかなる時も全面的に遵守し、贈収賄を糾弾していくそうだ。

 

■まとめ

動物が研究や展示といった本来の目的と異なる扱いを受けたり、不測な事態で怪我したり命を奪われたりすると、絶滅危惧種を含む貴重な動物たちを日本に輸出しようとする国はますます減り、繁殖への協力も得られなくなるという。

そんな中で、ついに立ち上がった日本動物園水族館協会。彼らの意気込みは真剣そのものだろう、誰にも足を引っ張られたくないはずだ。

ちなみに、秋篠宮さまの日本動物園水族館協会・総裁就任は昭和63年(1988年)、そしてWWFジャパン・名誉総裁就任は1997年のことだというから、今年でなんと35年、26年にもなるそうだ。



(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

参考および画像:
『WWFジャパン』 ファン・カルロス国王のゾウ狩りに関する報道について(2012/07/23)

『WWFジャパン』公正な保全活動を推進するための行動方針

『REUTERS』
スペイン国王がアフリカでゾウ狩り=厳しい批判噴出(2012年4月17日)

『NHK NEWS WEB』 “動物の福祉“の観点で 全国の動物園などの飼育環境調査へ

『WWFジャパン』公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)役員等名簿

『日本動物園水族館協会』公益社団法人日本動物園水族館協会/組織票