【皇室、徒然なるままに】第92話:男系男子論は緩やかな天皇制廃止論である     西村 泰一

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◆§1 天皇制廃止論の系譜 

天皇制廃止論の系譜をWikipediaの『天皇制廃止』に従って見てみましょう。

幸徳秋水は、無政府主義から共産主義に至る思想を独自に再構成するなかで、天皇制廃止論に傾いていっている。

第一次世界大戦後における天皇制廃止論の原点というべきものは、日本共産党や講座派による二段階革命論である。これは天皇制をロシアの絶対君主制ツァーリズムになぞらえ、封建勢力である寄生地主とブルジョアジーの結合が天皇制を形作っているとし、ブルジョア革命の後に社会主義革命を起こすという理論であった。

戦後の1945年10月4日、GHQは日本政府へ「政治的民事的及宗教的自由に対する制限の撤廃」という覚書(いわゆる「自由の指令」)を発した。この覚書は主要命題のひとつとして「皇室問題特にその存廃問題に関する自由なる討議」を含み、治安維持法など弾圧法令の撤廃、特別高等警察の廃止、また天皇制批判者を共産主義者と断じ処罰を明言した山崎巌内務大臣の罷免などを指令している。

10月20日、トルーマン米国大統領が「天皇制の存廃は日本人民の民意によって決定されるべき」と発言すると、日本国内の大手新聞はこれを紹介するとともに、以後天皇制の存廃についての記事や投書を多く掲載するようになった。なお、この問題について当時の『朝日新聞』の報道姿勢は中立、『読売新聞』は左派、『毎日新聞』は右派であった。1946年、日本共産党は日本人民共和国憲法草案を発表し、共和制を主張した。

終戦直後、日本に対する諸外国の視線は厳しく、オーストラリアやアメリカの国民世論が天皇制廃止を支持していたほか、中華民国の蔣介石や孫科(孫文の息子)、イギリスのチャーチル、ソ連なども天皇制廃止を求めた。アメリカの上院は昭和天皇を裁判に掛けることを決議、中華民国は国民政府海外の雑誌に「ミカド去るべし」の論文を発表、フィリピンの弁護士会はアメリカ大統領に昭和天皇を裁判に掛けるよう要請、オーストラリアは国家元首たる天皇は一兵卒より罪が大きいと天皇を戦争犯罪人として裁くよう公式に要求していた。

第二次世界大戦中からアメリカ国内では「天皇戦犯論」が高揚した。1945年9月には上院で「天皇を戦争裁判にかけよ」と決議されるに至った。これに対し、知日家のボナー・フェラーズ准将の調査報告とマッカーサーの進言により「天皇制によって日本国民を統合し、間接統治をした方がアメリカの国益に適う」と、アメリカ政府は判断したため、天皇制はGHQによって存置された。昭和天皇の国内巡幸が大歓迎を受けたことも影響している。ただし、天皇制に関して民主化を行う必要はあると判断し、皇室財産の凍結、不敬罪の廃止などを日本政府に求めたほか、新憲法によって天皇から統治権を剥奪し、天皇の権限を大幅に縮小することを求めた。

日本共産党は「一個人・特定一家が国民統合の象徴となる現制度は民主主義及び人間の平等と両立し得ない」とする立場だが、2004年の綱領では「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべき」として、当面目指すとする「民主主義革命」(民主連合政府)では天皇制を事実上容認した。

日本の新左翼の大半は天皇制の打倒や廃止を主張し、反皇室闘争を行っている。天皇や皇室を対象とした主な事件には、1971年 第1次坂下門乱入事件、1972年 日光皇太子夫妻襲撃事件、1974年 昭和天皇暗殺未遂事件である虹作戦、1975年 第2次坂下門乱入事件、同年 皇太子明仁親王および同妃美智子の沖縄県行啓時のひめゆりの塔事件、同年 東宮御所前爆弾所持事件、1989年 昭和天皇崩御時の143件のテロ・ゲリラ事件(中央自動車道切り通し爆破事件など)がある。



◆§2 疾風怒濤(しっぷうどとう、ドイツ語のSturm und Drangに由来)の少子化の波

人口の維持には、合計特殊出生率は、2.06~2.07が必要です。日本は終戦直後には4.0を超えていましたが、1947~49年生まれの「団塊世代」が20代後半になった1975年に2を切ってきて、現在(2023年)では1.20という驚異的に低い数値を記録しています。

2023年10月1日現在の日本の総人口は、1億2,435万2千人です。日本の人口は、2048年頃に1億人を割り込み、2060年には8,674万人まで減少すると見込まれています。財務省の推計では、2100年には総人口が現状の半分程度に減少すると見込まれています。2100年と言えば、皆さんの多くは、もう生きていないかもしれませんが、皆さんが最近授かられた赤ん坊は、その人口が半減した日本を見ることになります。人口が半分になると、色々なものが大きく変わると思います。マンションでも入居率が50%を切ると、運営は困難を極めてきます。日本の人口がゼロになるのは、3300年頃になると考えられています。

メキシコの出生率が近年大幅に低下して、人々を驚かせています。2022年で1.80、2023年で1.60です。人口はまだ増加中ですが、出生率がここまで下がってくると、人口も減少に転じるのは、時間の問題だと思います。

そうなってくると、メキシコからアメリカへの不法移民の流入圧力は大幅に減少すると思います。Trumpは自分がメキシコとの国境に作った壁のおかげと言うんでしょうが、そんなものは無用です。経済も快調に成長しています。日本からも多くの企業が進出しています。経済も好調で人口も減少に転じるとあれば、なにも無理してアメリカに行く理由もありません。

それから人口の予測というのは、あくまで統計的な予測であることを忘れないでください。

原発の事故なんかがあると、よく「放射性元素の半減期」ということが言われますね。ラジウムなどの放射性元素は、原子核が不安定で、自発的に放射線を出して崩壊します。半減期というのは放射性元素の集団が崩壊して半分になるのにかかる時間を指しています。すべての原子が一様に崩壊していくわけではありません。単一の原子をもってきて、それがいつ崩壊するかと聞かれても、そんなことは神のみぞ知るという話です。しかし大量の原子の集団が崩壊して半分になるのにどのくらいの時間がかかるかは正確にわかります。これが統計的予測ということです。

保険会社は平均寿命が何歳とかいう統計的Dataにもとづいて保険商品を利益がでるように設計します。あくまで統計的な話ですから、その商品に契約してくれるお客さんが非常に少ないと、保険会社はGambleをやっているのと同じことになります。



◆§3 表から見た男系男子論 

皇位継承について検討する委員会なんかが政府によって色々と作られているようですが、私が遺憾に思うのは人口予測の専門家が入っていないことです。伝統重視か男女同権かという哲学的議論も結構ですが、そもそも男系男子による皇位継承が、現在の出生率が維持された場合、どのくらい維持できるのかという科学的な議論は不可欠です。

将来の人口を予測する折に、一番重要な数値は出生率です。男系男子を主張するということは、女子は皇位継承可能者とは見做さないということで、皇位継承可能者数を予測する折には、現状でも相当低い出生率1.20を、その半分の0.6に設定して計算することを意味します。

この出生率0.6はとても低いと思われるでしょうが、お隣の韓国では2,023年に過去最低の0.72を記録しています。これは世界最低です。韓国統計庁は、2072年までの推計人口を試算しており、合計特殊出生率が0.6から0.8程度で推移した場合、人口は4割以上減少すると予測しています。

人口予測は、コーホート要因法という人口学的手法を用いて行われます。男系男子論者の方は、ここにコーホート要因法をご案内しておきますので、もしも日本人であるためには男系男子でなければならないと仮定して(つまり出生率を0.6と仮定して)、§2でご案内した人口予測がどう変化するか、計算してみてください。恐ろしいことになります。

■『厚生労働省』将来人口推計の方法と平成9年推計の基本的な考え方国立社会保障・人口問題研究所

 

私は、皇室をこよなく愛していますので、今後永遠にとまでは申しませんが、すくなくとも日本人がゼロになる3,300年までは、天皇制が続いて欲しいと願っています。

男系男子を厳格に守れば、3,300年どころか、今世紀末まで天皇制を維持することは極めて難しいことを申し述べておきます。山本周五郎の歴史小説に「樅ノ木は残った」がありますが、我々は「皇居は残った」ということで、誰も住んでいない皇居を見ることになるのは、そう遠い話ではありません。

稿を改めて、天皇制を3,300年まで維持する方法を提案するつもりです。

 

◆§4 裏から見た男系男子論 

男系男子論に忠実であれば、天皇制は極めて脆弱であることは、男系男子論者の方もよくわかっておられる話で、そのために安西文仁君を上皇御夫妻の養子に迎えて、親王としました。でも皇室典範で養子は禁じられているので、恰も上皇御夫妻に文仁君を授かったかのような猿芝居を上皇御夫妻は演じられることとなります。勿論こういう猿芝居で世間は欺けても、皇室の方々のように、頻繁に上皇御夫妻に接しておられる方々を欺くことは不可能なので、当然事前に根回しが必要になります。

だから昭和天皇は晩年に「浩宮の次は浩宮の子」とあたかも遺言のごとく何度も仰ることになります。男系男子どころか皇統にまったく連なっていない文仁君を立てて、あたかも男系男子論が維持されているかのように装うことに、何の意味があるのでしょうか?悠仁君の裏口入学で有名大学を卒業しましたという話となんら変わることはないと思います。

私自身は養子もありと思っていますが、養子をとりたいのであれば、皇室典範を改正したうえで迎えられるのが、筋だと思います。違法行為で維持される男系男子の金科玉条って、一体何なんですか? 男系男子を守るために、男女産み分けで人工的に作り出したポンコツ男子の悠仁君って、一体何なんですか?今後も男女産み分けを駆使して、男系男子を維持していかれるつもりですか?ただ、そうであれば、国民の承認を得る必要があると思います。

 

◆§5 Concluding Music 

それではクリスマスが近いので、それに因んだ音楽を聴きながら、サヨナラしましょう。

https://youtu.be/k01cQjzbGzk?si=Ot3iQXKnBBOZeFwV

(理学博士:西村泰一)

【皇室、徒然なるままに】のバックナンバーはこちらから。



【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月  洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月  京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月  筑波大学(数学)

参考:
『Wikipedia』天皇制廃止論

『厚生労働省』将来人口推計の方法と平成9年推計の基本的な考え方国立社会保障・人口問題研究所

『YouTube』【首都高】クリスマスキャロルの頃には[英語] YM TV

6件のコメント

  • 「男系男子派」って「神武天皇のYがー」などと狂信カルトなことを言いながら「万策着きたら女系もOK」と言ういい加減な人達ですよね。根本的に信用なりません。

    皇室典範の性差別を正面から批判して「ただちに典範改正」と主張する方がはるかに誠実だと思います。

  • 時折、悠仁様までは皇位継承を揺るがせにしてはいけない、と仰る方がいらっしゃいますが、悠仁様まではゆるがせにしてはならず、悠仁様以降のゆるがせはありうる、その判断基準の違いを論理的に説明してほしいです。

  • 悠仁さんも皮肉なことに、西村先生のお勤めだった筑波大に進学されそうなので、びっくりです。

    東大や京大、学習院大と比較しても、学生生活が全く違うようなので、西村氏や吉田氏も経験的にわからない未知の世界になるからです。皇室との伝統的パイプもなく、教授と霞ヶ関のつながりも強くないと思われますので、ますます宮内庁は永田氏支配に頼るようになり、結果的に強権的トップダウン方式の大学運営に傾くのではないかと懸念します。

    受験手続も、推薦の場合、東大はネット完結型でしたが、筑波大は合否発表まですべて郵送です。受信漏れがないのはいいと思いますが、敢えて自己推薦書や内申書などをデータセンターに上げない方式をとりたいからではないか、とも思われます。

    ネットを経由すると、悠仁さんの成績表などはエシュロン(Echelon)で海外勢に必ず通信傍受されるので、アナログ管理を徹底しているのだ、とも読めるのです。そういう意味でも、東大はあり得なかったのかも知れませんね。

  • 宮内庁広報室は、いまだに安西文仁天皇実現を至上命題としているのは、滑稽至極です。
    安西文仁天皇になった瞬間、「偽天皇は要らない」とデモやネット上の大騒ぎとなるでしょう。

    仮想敵国からは、過去にひそかに実施してきた安西氏とのDNA鑑定結果が暴露されるかも知れません。日本の天皇制を、DNA鑑定により”失格退場”に追い込めるなら、これほど強力な時限爆弾もないわけで、長期にわたって日本の国政を大混乱に陥れられるだけでも、仮想敵国にすれば大戦果です。同盟国からも、安西文仁天皇時代になると、言論弾圧が強化されるので、日本とは友好国でいられなくなるとの懸念から、CIAやMI6から鑑定結果がリークされることへも覚悟が必要になります。

    そればかりか、このまま典範第一条を削除しないで放置しておくと、皇統簒奪後は、文仁天皇、悠仁皇太子体制になるので、鑑定結果が暴露されるや否や、父子共に非皇族同時確定となって皇室は瞬時に瓦解、世界中が日本を自滅行為だとして嘲笑することにもなります。

    日本会議の面々は、いまだに統一教会と共に文仁氏を次の天皇に担ぐことに熱心ですが、仮想敵国からの鑑定結果暴露という危機を想定していないのが、何とも脳天気な話としか映らないのです。文仁氏の会見が毎回しどろもどろになるのも、「どうせ自分は偽皇族なんだから」との不安が頭にもたげるからで、「努力しても俺は砂上の楼閣だからすべて無駄だ」と分かっているからなのでしょう。

    DNA鑑定結果暴露という悪夢のギロチンが、常に彼の目の前にはちらつくので、早くから酒とクスリに逃避してしまい、健康を害し、家族関係も崩壊して、タイの本妻とタイ人息子以外にも、あちこちに妾と庶子がいるという火宅の人になってしまったと理解するしかありません。

  • 西村先生、悠仁サマの進学先に筑波大学マレーシア分校が候補に挙がってきました。三笠宮家騒動も浮かび上がって苦慮しますね。
     
    ニューズは途切れ途切れで俯瞰性がなく、事の重要性も解り難いです。本当に日本や世界を考慮してんのかと憤懣な想いです。
    「天皇制廃止」が掲載されているのですね。多岐に亘るから見逃さないように気をつけなくちゃ。
    「女性天皇」についても掲載されていたので、皆様御覧ください。否定的な表現が気に入らぬ。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%B3%E6%80%A7%E5%A4%A9%E7%9A%87
     
    それから署名期限がせまっているので何卒御協力ください。多数の意見は強力な後押しになります。皆様御一緒に頑張りましょう!
    https://voice.charity/events/2707

  •  西村先生、有り難うございます。いつも勉強になります。そして西村先生のご投稿により、このサイトは一段とレベルアップされるように思います。感謝です!

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