世界的指揮者も今上陛下を大絶賛 「ヴィオラも大変お上手、そしてとにく人間性がすばらしいです」

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今上陛下は皇太子だった2007年、ある演奏会で世界的指揮者であるチョン・ミョンフン氏のピアノに合わせヴィオラを演奏(画像は『YouTube』のスクリーンショット)
今上陛下は皇太子だった2007年、ある演奏会で世界的指揮者であるチョン・ミョンフン氏のピアノに合わせヴィオラを演奏(画像は『YouTube』のスクリーンショット)

先日ある記事の最後に、音楽好きな今上陛下のご様子を伝える1本の動画を紹介したところ、Twitterで相互フォローをしている方から実に興味深いメッセージをいただいた。2007年のある演奏会で、陛下の心のこもった演奏が、世界的指揮者の表情や気持ちを変えてしまったというのだ。さっそく確認し、その後の報道なども追ってみたところ…。



2007年1月下旬、「日韓中友好特別記念『友情の架け橋』コンサート2007」が東京のサントリー・リサイタルホールで開催された。音楽を通じて日韓中の友情、平和と繁栄を築こうと2004年から行われるようになったといい、韓国生まれの世界的指揮者であるチョン・ミョンフン(鄭明勲)氏の下に、各国の若手演奏家が集まって行われるものだ。

日韓中の子供たちが多数招かれたなか、ヴィオラを手に舞台に上がった今上陛下(当時は皇太子殿下)。チョン氏のピアノ、樫本大進氏のヴァイオリン、趙 静(チョウ・チン)氏のチェロ、アン・ドンヒョク氏のコントラバスに合わせ、シューベルトのピアノ五重奏曲『鱒』を演奏された。

 

■ヴィオラ演奏の実力を過小評価か…

「友情の架け橋音楽国際親善協会Friendship Bridge」YouTubeチャンネルから、残念ながらその演奏会の動画は見つからなかったため、どうかこちらの動画をご覧いただきたい。

「こんばんは。今日は本当にようこそいらっしゃいました。私たちの演奏を、お楽しみいただければ幸いです。どうも失礼しました」とマイク片手にご挨拶をなさった陛下。軽く頭を下げながら、右後のチョン氏にマイクを渡しておられるが、チョン氏は陛下に視線もくれず、「ありがとう」も言わない。まずは3分50秒目から4分18秒目までご覧いただきたい。

チョン氏は普段、一流の演奏家とばかり仕事をしておられる。正直なところ、陛下のヴィオラの腕前をそう期待していなかったのかもしれない。チョン氏のややぞんざいなマイクの受け取り方に、そのあたりが見て取れる気がするのだ。

ちなみに、樫本大進さんは2010年からベルリン・フィルの第1コンサートマスターを務めており、趙 静さんは2005年に難関のミュンヘンARD国際コンクール・チェロ部門で優勝。アン・ドンヒョクさんは、2005~2015年までチョン氏が首席指揮者・音楽監督を務めた韓国最古のオーケストラ、ソウル市立交響楽団のコントラバス首席奏者だ。

2007年1月、皇太子時代には世界的指揮者のチョン・ミョンフン氏とシューベルトの『鱒』を演奏(画像は『友情の架け橋音楽国際親善協会』のスクリーンショット)
2007年1月、皇太子時代には世界的指揮者のチョン・ミョンフン氏とシューベルトの『鱒』を演奏(画像は『友情の架け橋音楽国際親善協会』のスクリーンショット)

 

錚々たるメンバーがそろい緊張されただろうが、陛下には昭和天皇が重んじた帝王学とタフな精神力が備わっている。『鱒』の演奏は見事なものとなり、演奏が終わるとチョン氏は顔をほころばせ、陛下と力強く握手を交わすと手を取って並び、会場からの割れんばかりの拍手に応え、お辞儀した。

演奏後、満面の笑みに変わったチョン・ミョンフン氏。ヴィオラを演奏した今上陛下と(画像は『YouTube』のスクリーンショット)
演奏後、満面の笑みに変わったチョン・ミョンフン氏。ヴィオラを演奏した今上陛下と(画像は『YouTube』のスクリーンショット)

何事においても勤勉で努力家でいらっしゃる陛下の心のこもったヴィオラ演奏は、チョン氏の期待をはるかに超える大きな感動があったのだろう。



■2019年の天皇陛下御即位に祝福のメッセージ 

欧州の有名な交響楽団の首席指揮者や音楽監督をいくつも経験した後、東京フィルハーモニー交響楽団に迎えられ、指揮者として、名誉音楽監督として活躍しておられるチョン氏。産経新聞・電子版は2019年9月、『世界的指揮者、チョン・ミョンフンさん 音楽、人生、天皇陛下について語る』というインタビュー記事を掲載した。

チョン氏は「ご楽友」の皇太子殿下が天皇陛下に御即位されると知り、いち早く祝福のメッセージを東京フィルハーモニー交響楽団のHPから贈っていたといい、そのインタビュー記事ではこんな温かい言葉も紹介されている。

私個人の信条について言いますと、第一に人間であり、次に音楽家であり、3番目に韓国人であると考えています。もちろん皇族の方や有名な方々に面会できることは光栄ではありますが、肝心なのは「人間」だと考えています。

 

肩書に人間性が追い付いていない人には残念ながら興味がわきません。また、地位が上がったり、有名になったりすればするほど、善良であり純粋、かつ謙虚な人間であり続けることは困難になります。これらのことは陛下の場合、まったくあてはまりません。

陛下は練習なさる時間が限られているにもかかわらず非常にお上手なばかりか、その人間性によって、ともに演奏すること、またともにその場にいることにお喜びを与えることができる室内楽奏者だと感じています。

 

陛下にお会いでき、一緒に室内楽を演奏する機会が何度もあったことを光栄に思っています。陛下は人間的に本当に素晴らしい方だと感じています。

 

■まとめ 

韓国が誇るマエストロで、世界の著名人と多々交流があるチョン氏が、「日本の天皇陛下はとにかく人間性がすばらしい」と称えておられるという事実。私たちが今上陛下を慕い、敬愛する理由を、深く理解して下さっているに違いない。チョン氏がタクトを握り、愛子さまがチェロを演奏する日がとにかく待ち遠しい。

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◎チョン・ミョンフン氏について

チョン・ミョンフン(鄭 明勳/Myung-Whun Chung)氏は1953年ソウル生まれの満70歳。小学生のとき家族でシアトルに移住し、アメリカ国籍を取得しているものの、韓国人としての誇りを常に意識していると話す。姉に著名ヴァイオリニストのチョン・キョンファ、そしてチェリストのチョン・ミョンファがいる。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)



参考および画像:
『NPO 友情の架け橋音楽国際親善協会』友情の架け橋コンサート2007

『YouTube』 kata62kima ― 皇太子さまと音楽

『産経新聞/THE SANKEI NEWS』世界的指揮者、チョン・ミョンフンさん 音楽、人生、天皇陛下について語る