コンクール常勝校のトンボ研究ポスター発表はここまですごい! 真に優秀な高校生たちをご紹介

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昆虫好きな高校生たちの「非常に優れている」と評価される研究は、まさにプロ顔負けの緻密さだそうだ。今回は、コンクール常勝校の生物部にもなると、トンボ研究もここまで高レベルになるという事実を皆さんに知っていただきたいと思う。



実は少し前、中日新聞が「愛知県に本物のトンボ博士が現る!」として、浅野想大さんという9歳の少年を紹介する記事を出した。生物をこよなく愛する少年の姿がそのままで、しかもとても賢そうな浅野さん。深く感心しながら記事を読んでいたところ、また別の珍しいトンボを発見した少年の記事が。そちらを読み進めると、ある有名な研究者さんのお名前に遭遇した。そして…。

 

◆希少種のトンボを見逃さなかった8歳の少年

中日新聞のその記事は、『希少種のトンボ「キイロサナエ」、菊川でゲット 静岡県中西部で40年ぶり』というもので、静岡県菊川市加茂の長坂義郎さんというお宅の裏庭の草むらに見慣れないトンボが飛来し、それを孫の輝翔(きらと)君(8)が素手で捕まえたそうだ。

普段から昆虫が大好きな輝翔くんは黄色掛かったトンボに驚き、すぐに図鑑で調べたが分からなかった。そこで、近くに暮らす日本トンボ学会の福井順治(もとはる)さんに相談し、そこで県内では希少なキイロサナエであることがわかったそうだ。



 

◆トンボ博士・福井順治さん

静岡県文化奨励賞・受賞者の会である『SACULA懇話会』の公式ウェブサイトによると、輝翔くんにトンボの種類を教えた福井さんはこんなすごい方であった。

経歴:
静岡県菊川市に生まれる。
静岡大学理学部生物学科卒業
昭和47年~平成21年 静岡県立高校教員
平成9年~環境省・希少野生動植物保存推進員
平成22年~磐田市桶ヶ谷沼ビジターセンター勤務

活動歴:
日本トンボ学会 蜻蛉研究会 静岡昆虫同好会等に所属
静岡県とその周辺地域のトンボ類の学術研究を推進
NPO法人桶ヶ谷沼を考える会 役員として環境教室や環境保全活動を実施
高校生を指導してベッコウトンボの種の保全・保護活動に取り組む
静岡県版レッドデータブックのトンボ類を担当

 

◆ただ者ではなかった福井さん

『トンボ自然史研究所』を主宰される、昆虫生態学・自然環境教育がご専門の北海道教育大学名誉教授の生方 秀紀(うぶかた ひでのり)博士は、2019年11月20日にご自身のブログで、福井さんが行っておられたトンボの研究をこのように称賛しておられた。

 

生方先生は2019年度日本トンボ学会大会で福井順治氏によるポスター発表を高く評価(画像は『トンボ自然史研究所』のスクリーンショット)
生方先生は2019年度日本トンボ学会大会で福井順治氏によるポスター発表を高く評価(画像は『トンボ自然史研究所』のスクリーンショット)

 

3)一般講演(ポスター)

 

一般講演(ポスター)はいずれも粘り強い観察・調査の結果を取りまとめたものでしたが、中でも福井順治さんの「チョウトンボの翅色と斑紋変異の分析」は、膨大なサンプルについての観察を綺麗に整理されていて、問題点が浮き彫りにされるものでした。

 

チョウトンボ Rhyothemis fuliginosa Selys, 1883 ♀には金緑色型の翅の個体と、♂の翅色と同じ青紫色型の翅の個体があることが知られていますが、その比率が比較的一定であることが明らかにされていたのが私の興味を惹きました。

 

一般に、翅あるいは体表が「♂色型」の♀は、♂の色彩に擬態することで過度な産卵妨害を回避するという利益を得ますが、地域個体群の中で「♂色型」♀の比率が増えすぎると、婚活中の♂が慣れにより実は♀だと見破る確率が高まると考えられます。

 

すると産卵妨害回避というリスク低減の効果は減少し、♂と同様、天敵に見つかりやすいというリスクを帳消しできなくなるでしょう。

 

一方、「♂色型」♀の比率がぐーんと下がると、婚活中の♂は「♀色型」♀を追い求めやすくなり、「♂色型」♀は産卵妨害回避というリスク低減効果は大きくなり、確率的により多くの子孫を残す結果につながります。

 

このように、負のフィードバックと同様の型の比率の「振り戻し」が必然的に生起することで、両型の比率が一定レベルを保つことが予測されます(平衡多型)。

 

私はこのような考えを念頭に、福井さんのポスターの前でのディスカッションに参加していました。

 

◆静岡県立掛川西高等学校・自然科学部の快挙

福井さんは昭和47年~平成21年まで静岡の県立高校の教員をされる傍ら、ベッコウトンボの種の保全・保護活動に取り組み、静岡県版レッドデータブックのトンボ類の作成にも当たっておられた。

その福井さんのご指導を受けながら、絶滅危惧種の「ベッコウトンボ」について研究を進めてきたのが、今回ご注目いただきたい静岡県立掛川西高等学校の自然科学部であった。

2年生の部員3名は、2021年11月20 日に行われた「環境・DNA学会第4回大会」でポスター発表を行い、「静岡県学生科学賞」に輝いていらっしゃる。

(その際に発表された資料、『桶ヶ谷沼の保全とベッコウトンボの環境 DNA の検出』はこちらをご覧ください。)

トレイルカメラなるツールにもびっくり(画像は『静岡県立掛川西高等学校』のスクリーンショット)
トレイルカメラなるツールにもびっくり(画像は『静岡県立掛川西高等学校』のスクリーンショット)

 

PCR法を用いたDNAの研究を行っていた静岡県立掛川西高等学校の自然科学部(画像は『静岡県教育委員会』のスクリーンショット)
PCR法を用いてDNA解析も行っていた静岡県立掛川西高等学校の自然科学部(画像は『静岡県教育委員会』のスクリーンショット)

 

この高校の自然科学部のXのプロフィールには、こう書かれている。きわめて優秀で研究熱心な生徒さんばかりであるようだ。

高文連全国大会3年連続出場/筑波Edge英語発表受賞/バイオサミット文部科学大臣賞,優秀賞/進化学会最優秀賞,優秀賞/学生科学賞受賞/JSEC文部科学大臣賞/intel ISEF2019動物部門2等賞,アリゾナ大学賞/総文祭文化庁賞

 

また昨年3月11日には、全国野生動物保護活動発表大会で「文部科学大臣賞」を受賞したことの報告会を行い、やはりトンボ班が発表をしたという。

ちなみに「静岡県学生科学賞」は、あの「日本学生科学賞」の静岡県地方審査会で優勝したことを意味する。



 

◆まとめ

日本学生科学賞の地方審査会を勝ち抜く静岡県立掛川西高等学校の自然科学部の部員たちは、こんなにも真剣に昆虫を研究し、専門的な知識を身につけ、論文を発表することに青春をかけていらっしゃる。

コンクール常勝校というのは、福井さんのような優れた師に恵まれるのはもちろん、そのプライドをかけ、先輩が後輩をしっかりと指導するのも特徴である。

「静岡県学生 科学賞」を勝ちとった皆さんは、すでに大学生であろう、高校時代の研究活動を通じて得たコミュニケーション能力はこの後の人生の大きな武器になる。宝物のような思い出を胸に、研究者として思い切り羽ばたいていただきたいと思う。

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

画像および参考:
『中日新聞』希少種のトンボ「キイロサナエ」、菊川でゲット 静岡県中西部で40年ぶり 2023年5月28日

『ヤフーニュース』悠仁さま「東大進学」にトランプ米前大統領の狙撃事件が影響…東京23区内で圧倒的な敷地内の警備問題

『SACULA懇話会』福井 順治

『あすなろ学習室』第 66 回静岡県学生科学賞 県科学教育振興委員会賞〉 桶ヶ谷沼の保全とベッコウトンボの環境 DNA の検出

『静岡県立掛川西高等学校』自然科学部 文部科学大臣賞 受賞報告会

『トンボ自然史研究所』日本トンボ学会大会印象記(1):特別講演、一般講演からの学び2019-11-20

『wikipedia』ベッコウトンボ

2件のコメント

  • 本物の高校生や中学生の発想は、大人が「この年齢ならこのくらい」と考えるものをはるかに超えてきます。
    悠仁さんの論文は、いかにも大人が「このくらいで良いだろう」と書いたものに思えます。新しいトンボは発見して^_^も、新しい発想やそのトンボを見つけるためにどのような創意工夫がされたかが何も書いていないからです。

    私は読売学生科学賞の授賞式に出たことがあります。あまり詳しく書くと身バレしてしまうので書けませんが、皆様ご存知のように読売科学賞は生物だけではありません。正直言って、秋篠宮ご夫妻に何の研究なのかわかるのかなと思っていました。また、賞をいただいた作品は、「この年齢には無理だろう、親が手伝ったのでは」と学校の先生方は思われたそうで、ずいぶん突っ込まれた質問をされたようです。その質疑応答に全て答えた上での応募でした。もちろん応募した後にも、質疑応答はありました。

    この記事のような素晴らしい研究をする若者はたくさんいるのです。あの論文が悠仁さんが推薦されるほど素晴らしいとはとても思えないのです。

  • 本当に悠仁さまはトンボが好きなのでしょうか。
    昨年行かれた鹿児島の総文祭で目の前をトンボが飛んでても目で追うこともなく。
    小学生の頃に網を持ってトンボを追いかけてた姿は見ましたしカメラで撮影してるのも見ましたけど
    この高校生のようにトンボの生態に詳しくノートなどに書かれているのか。
    提出したトンボ論文の写真も説明文もおかしいとのこと。
    なぜ、不正と疑われるような論文を出したのか。
    共著の研究者もなぜ気付かないのか。とても不思議に思います。
    自然に恵まれた所におられる特権で本当の意味で称賛される論文を書いていただきたかったですね。

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