【皇室、徒然なるままに】第2話 インターナショナルスクールを通して小室圭を読み解く・前編 西村泰一
このたびの第2話は、小室圭君が6年間通ったというインターナショナルスクールについての《前編》となる。
(中編はこちらをどうぞ。)
私が筑波大学理工学群の数学類で教鞭をとっていた頃、教え子にインターナショナルスクールを出た学生がいた。卒業後はそうした学校の教師になったが、当時は色々と考えさせられたことがあった。小室君の人間形成にも大きな影響を与えたであろう、インターナショナル・スクールを理解することで、彼を語る上で示唆に富む情報を提供できればと思っている。
長いこと、筑波大学数学類のホームページ委員長をしていた私は、技術的なことは下にいる院生あたりにしてもらい、代わりに他のところのHPを沢山見て学んだ。背後にある組織についてまで、HPからかなり多くの情報が得られることもわかった。そこで、小室圭君が中高の6年間を過ごしたという、カナディアン・インターナショナルスクール(Canadian International School 略称:CIS)のHPを確認することにしたが、その前にWikipediaも見てみよう。
すると、校舎とか施設について興味深い事実がわかった。
・校舎:複数のオフィスビルに分散して入居している。(2022年10月現在、ビルディングA、B、Cの3つがある。)
・運動場・グラウンド:隣の公園(小関公園)の運動場や近くのスポーツ施設(品川スポーツヒルズ)等を用いる。
この学校は、校舎がない代わりに3つのオフィスビルに間借りさせてもらい、体育館や運動場もなく、代わりに隣の公園や近くのスポーツ施設を利用させてもらっているという。
そうとなると「理科の実験なんか、どうするのだろう」という思いが頭に浮かぶ。普通、学校には理科室があって、塩酸とか硫酸とかが蓄えてあって、そこで色々な実験をさせられるはずだが、その理科室がこの学校にはあるのだろうか。
理科室で実験をした後、それを洗浄した水を、そのまま下水に流すことは許されない。これは大げさなようだが、工業排水とみなされるべき代物であり、下水に流す前に適切な処置が必要になる。学校の理科室には、そのための設備が施されているのだが、スペース的に、そんなものに割く余力はないだろう。
この学校の開設科目に物理、化学や生物はあるようだが、実験については強い制約があると思われる。これは体育についても同様で、ああいう間借りした形だと、授業内容にかなり強い制約がかかると思われる。
続いて、この学校の公式HPへ。英語のものと日本語のものの2本立てで、とりあえず日本語のものを見てみよう。メニューの「入学について」をクリックすると出てきたのは…。
∙ 準備中 ― 英語サイトをご参照ください。
おいおい、初っ端からこれかよ~? 一体このHPはいつ作ったんだい? これは駄目なHP。翻っては駄目な組織に典型的に見られるものである。とりあえずHPは作らなくっちゃと作り、ただし完全なものをつくる余力はなく、いくつかの項目を”準備中”にして、何年、何十年とそのまま放ったらかしに…?
それから、カナディアン・インターナショナルスクールには制服もあるようだ。制服・体操着の規則はやや厳しいという。
・制服:あり(学校指定:三越)
ブレザー(紺色)、スラックス・プリーツ吊りスカート(グレー)、シャツ・ポロシャツ(白)、ネクタイ(高学年:紺・ 朱のレジメンタルストライプ、低学年:エンジ)・クロスリボンタイ(低学年・女児:エンジ)、靴下(白、紺)、革靴(黒)、セーター・ベスト・カーディガン等のニットウェア(紺色)、内履き・運動シューズ(白基調)、等
・体操着:あり(学校指定)
長袖・長ズボン・半ズボン(青)、半袖シャツ(白)
制服は学校指定が三越と書いてある。なんかお高そう。しかも成長期の子供だから、何回か買い替える必要があると思われる。
学期は2学期制(Semester)をとっており、1学期(First Semester)と2学期(Second Semester)に分かれている。冬休みはやや短く、夏休みはたっぷり2か月間あるようだ。
∙ 始業 – 終業: 9月 – 翌年6月
∙ 1学期:9月 – 翌年1月(約5ヶ月間)
∙ 2学期:翌年2月 – 6月末(約5ヶ月間)
∙ 夏休み:7 – 8月(約2ヶ月間)
∙ 冬休み:12月末 – 1月初旬(約2週間)
∙ 春休み:3月中(約1週間)
つぎに「学費」はいくらくらいかかるのかを見てみよう。
∙ (入学年度のみ)入学金 300,000円
∙ 授業料(年額)1,900,000円
∙ 教育充実費(年額)200,000円
∙ 施設メンテナンス費等(年額)250,000円
∙ イングリッシュ・イマージョン・コース授業料(4月~6月)700,000円
これらを合計すると335万円。小室圭君…じゃなかった、小室佳代さんはこれを初年度に一括で支払ったんだ、偉いなあ。私は京都大学にいたんだけれど、当時の授業料は年間1万円ちょっとだったと思う。今は50万円を超えているけれど。それでもカナディアン・インターナショナルスクールの足元にも及ばない。
ところで、イングリッシュ・イマージョン・コースとは何なのか。
英語力のレベルが当該学年の期待されるレベルに若干満たないと判断された生徒は、学年開始の9月からの入学に備えて、4月から6月までの3ヶ月間、イングリッシュ・イマージョン・コースに入り、7月8月のサマースクール受講後、正規クラスに編入可能なプログラムを設けております。
インターナショナルスクールは、欧米に倣って学年度は9月に始まり、翌年の6月で終わる。入学の前に3ヶ月間、英語の特訓をしてあげましょう、という話のようだ。
なぜ授業料がこんなに高いのかというと、それはこの学校の歳入が「保護者からいただくお金しかない」からだ。一般的な公立中学や高校の半分以上は、公的な補助金で運営されている。近年、ごく一部のインターナショナルスクールで、学費の負担軽減措置や補助金制度が適用されるようになったそうだが、CISはその対象に選ばれているのだろうか。もしも、補助金をもらっていて授業料等が昔のまま据え置きなら、「凄い組織ですね」という話になるだろう。
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念のため、英語版のページで「Fees(学費)」を確認してみたところ、なんと20万円も金額が異なっていることがわかった。
∙ (入学年度のみ)入学金300,000円、施設開発費 600,000円
∙ 授業料(年額)2,250,000円
∙ 施設メンテナンス費等(年額)250,000円
∙ 教育充実費(年額)150,000円
英語力に問題がなく、イングリッシュ・イマージョン・コースを受講しない子供たちは学費が安くなるのかと思ったら、そうではなかった。むしろ授業料が高く、合計で355万円を収める必要があるようだ。なお英語のページにだけ「2回・3回の分割払いは手数料35,000円で受け付ける」とあった。
入学についてのページが準備中だったり、学費の案内が日本語と英語で異なったりと、この学校の公式HPには気になる点がいくつかある。だが、英語のページの方がはるかによく出来ており、カナダからやってきた多くのスタッフと、少数の日本人スタッフの間でうまくコミュニケーションが図れていない…そんな組織像も浮かび上がってくる。
学校には校舎があって、運動場があって、そして体育館があってという、そんなありふれたイメージをお持ちの方には、刺激の強すぎる話になったかもしれない。いずれにせよ、これが小室圭さんが中学から高校まで6年間学んだという、カナディアン・インターナショナルスクールの実態だ。
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【皇室、徒然なるままに】第3話 中編では、CISで働いていた人の声を紹介しながら、小室圭君の日本語ならびに英語、それから彼の日本史に関する知識等について論じてみたいと思っている。(中編はこちらをどうぞ。)
(理学博士:西村泰一/編集:エトセトラ)
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★ここでちょっと西村先生のデザイン画を紹介★
【解説】このタイトルで少なくとも3人の著名な作家が作品を著している。正宗 白鳥は83歳まで生きて20世紀の半ばに逝去されているが、その代表作が ”何処へ” で日露戦争後の青年像を描き、1908年に発表されている。もうひとつは石坂 洋次郎の同名の作品で、彼が文壇にDebutする前に送った10年以上の東北での教員生活が下敷きになっている。この作品は日本テレビ系列でドラマ化され、ジャッキー吉川とブルーコメッツが主題歌を歌っていた。最後の同名の作品は渡辺淳一によるもので、彼が北海道から上京してきた頃の物語である。この作品は日本人が古来より好む花鳥風月風に、これをモチーフとして美術作品にまとめてみた。
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【西村先生のご経歴】
1966年4月ー1972年3月 洛星中高等学校
1972年4月ー1976年3月 京都大学理学部
1976年4月ー1979年10月 京都大学大学院数理解析専攻
1979年11月ー1986年3月 京都大学附置数理解析研究所
1986年4月ー2019年3月 筑波大学(数学)
画像および参考:
・『文部科学省』我が国において、高等学校相当として指定した外国人学校一覧(令和4年2月15日現在)
・『カナディアン・インターナショナルスクール』Junior High School,募集要項
・『Canadian International School』School Fees 2023-2024 School Year