今月6日、18歳の成年皇族になられた秋篠宮家の長男・悠仁さまについて、マスコミはどこも大きく報じていたが、社説にまでお祝いの言葉を綴るとなると、産経新聞一社のみだったことがわかった。

成績不振が報じられるなかで、東大農学部に推薦型選抜で進学かと波紋を広げている悠仁さま。そんな状況とはいえ、ショラテンがご成年とあれば各紙とも社説でも扱うことが予想されただけに、一体どうしたことだろう。

◆産経新聞は社説で…

『＜主張＞悠仁親王殿下　ご成年を挙って寿ぎたい』と社説のタイトルを打った産経新聞。内容は以下の通りである。

秋篠宮皇嗣同妃両殿下の長男で、皇位継承順位第2位の悠仁親王殿下が、18歳の成年を迎えられた。

 

連綿と続く日本の皇室の未来を照らす慶事である。国民挙（こぞ）って寿（ことほ）ぎ、成長された悠仁親王殿下にお祝いを申し上げたい。

 

親王殿下は平成18年9月6日にお生まれになった。その時の喜びは、いまなお鮮明だ。
それまで男性皇族の誕生は40年以上なかった。親王殿下ご誕生で列島に喜びの声があがり、提灯（ちょうちん）行列をはじめさまざまな奉祝行事が開かれた。

 

親王殿下は健やかに成長された。平成31年にはお茶の水女子大附属小学校を、令和4年には同附属中学校を卒業し、筑波大附属高校に進学された。幼少の頃から自然や生物に高い関心を持ち、昨年には外部の研究者と共同でトンボに関する学術論文も発表されている。

 

日本の別名に秋津洲（あきつしま）（秋津島）がある。「あきつ」はトンボの古名で、日本は多くのトンボが舞い飛ぶ国である。将来皇位を継ぎ、日本国と日本国民統合の象徴になる親王殿下が、トンボに関心を寄せられたことにめでたさを感じる。

 

学業と並行し、未来の天皇としての見識を深められていることは頼もしい限りだ。伊勢神宮を参拝されたり、秋篠宮皇嗣同妃両殿下のご活動に同行して外国の王族との交流にも努められたりしている。

 

今上（きんじょう）陛下は令和2年11月、国事行為を含む立皇嗣の礼を挙行された。陛下が、次の天皇は秋篠宮皇嗣殿下だと日本国で最も重い儀式で示されたことを意味する。今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下へと続く、男系による正統は確立している。政府が4年1月に国会へ提出した報告書に明記した通り、この継承の流れを「ゆるがせにしてはならない」のである。

 

一方、SNSを中心に秋篠宮家や悠仁親王殿下に関する事実無根の中傷が最近見受けられるのは誠に残念だ。皇室の方々は立場上、直接反論されることができない。内閣や宮内庁はいったい何をしているのか。全力でお守りしなければならない。

 

成年を迎えられた親王殿下は高校3年生でいらっしゃるため、「成年式」は高校ご卒業後の来春以降となる。さまざまな行事で凜々（りり）しいお姿を拝するのを楽しみに待ちたい。

相変わらず男系男子による皇位継承を強調し、これは天皇陛下のお墨付きだから、無駄な抵抗はやめろと国民に説得しているかのようだ。

だが終盤にきて、お祝いムードが一転。「SNSを中心に秋篠宮家や悠仁親王殿下に関する事実無根の中傷が最近見受けられるのは誠に残念だ。皇室の方々は立場上、直接反論されることができない。内閣や宮内庁はいったい何をしているのか。全力でお守りしなければならない。」とある。

何を以て事実無根だ中傷だと決めつけるのか、どうにも理解できない。

「『赤坂御用地のトンボ相』論文の画像66番アキアカネについて、腹の先端に穴が開いているなどと訴えるのは事実無根の中傷だ」などと具体的に指摘するなら、議論はより建設的なものになると思うが…。

◆言論機関が書くべきことなのか

新聞大手各社の社説を片っ端から読まれた上で、「産経新聞だけでしたよ。正統派保守を自認する同紙ならではです。例によって突っ込みどころ満載ですね」と教えてくださったのは、埼玉県在住のSさん。メールには、こんな風に感想を綴っておられる。

“今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下へと続く、男系による正統は確立している。政府が4年1月に国会へ提出した報告書に明記した通り、この継承の流れを「ゆるがせにしてはならない」のである。” とあります。

 

この「ゆるがせにしてはならない」は、たった数人の有識者会議の結論にすぎず、国民全体に強要するには無理があります。むしろ、国民大多数の意に反しています。

 

さらに、“SNSを中心に秋篠宮家や悠仁親王殿下に関する事実無根の中傷が最近見受けられるのは誠に残念だ。皇室の方々は立場上、直接反論されることができない。内閣や宮内庁はいったい何をしているのか。全力でお守りしなければならない。” とあります。

 

「事実無根の中傷」などではなく、大半は根拠のある正当な批判です。我々は批判する際、きちんと調査し、問合せをし、根拠を明確にして批判しています。紀子さんや眞子さんが「いわれのない物語」「誹謗中傷です」などと言うのならまだしも、言論機関が言うべきことではありません。

 

真っ当な言論機関なら「内閣や宮内庁はいったい何をしているのか。全力でお守りしなければならない。」ではなく、「内閣や宮内庁はいったい何をしているのか。きちんと説明しなければならない。」と書かなければなりません。「お守りせよ」では、国民の言論を封殺せよと言っているようなものです。

◆悠仁さまの放虫疑惑は産経新聞の記事が発端

そもそも産経新聞は、悠仁さまがメダカを餌に、ヤゴの飼育～放虫を行っているという事実を暴露したメディアである。

放虫をされると、環境問題も含めたトンボの生態を調べる調査で正確なデータを得られなくなるため、専門家は “厳に慎むべき行為” と批判しているようだ。

あるとき、産経新聞による2016年9月6日付の『悠仁さま１０歳　田んぼ作りで生物にご関心』という記事に気付いたというＳさん。同新聞の甘さについて、こう指摘しておられる。

赤坂御用地に田んぼを作って、トンボの幼虫であるヤゴを放ち、餌となるメダカを放えて成虫にさせていた放虫行為は、『赤坂御用地のトンボ相』論文にはいっさい記載されていません。

 

それはなぜなのか。産経新聞はそこを筆頭著者に取材し、かつての自分たちの報道が正しかったのか否かを含め、確認する義務があるのではないでしょうか。

◆旧・統一教会を叩くメディアを厳しく批判

「誹謗中傷やバッシングから秋篠宮家を守るため、内閣や宮内庁は何とかせよ」と力説する産経新聞について、筆者は約2年前のある記事を思い出してしまった。

それは『花田紀凱の週刊誌ウォッチング （８８６）情けない『文春』の統一教会叩き』。「統一教会の大罪　安倍晋三元首相と統一教会全内幕」という特集記事を出した文春に対し、彼らは「統一教会叩きに夢中になるなんて、ああ情けない」などと批判したのだ。

教会のために信者が失ってしまった財産と、それゆえにボロボロに壊れてしまった家族の被害を考えれば、そんな無責任なことをよく書けるなと感じたものだ。

今回もそれとほぼ同じである。東大に入ることを目標に幼い頃から塾に通い、懸命に勉強を続けてきた少年少女や、彼らを見守ってきた（塾の費用も相当する）保護者の方々の気持ちを考えたら、「皇族なら難関大学への進学も超ラクラク」といった秋篠宮家の姿勢を、よく諸手を挙げて称賛できるものだと呆れてしまう。

また産経新聞は、男系男子による継承にこだわるあまり旧宮家の男性皇族の皇籍復帰をも主張する「神道政治連盟（神政連）」および安倍氏が主導した「神道政治連盟国会議員懇談会」ともベッタリである。

神政連は、全国の神社を統括する神社本庁（公的機関ではなく民間の団体）の関係団体であり、「女性天皇にノーを」と謳うパンフレットを作ったのもこの組織である。

そして神政連の公式ホームページは、男系男子派に都合の良い産経新聞の皇室記事ばかりを引用している。

産経新聞の市販価格は他社より安く、オンライン版も記事を文章の最後まで無料で配信しているが、神政連の思想に適う記事をどんどん書くことで大きな支援を受けているということはないだろうか。

（朝比奈ゆかり／エトセトラ）

画像および参考：
・『産経新聞』＜主張＞悠仁親王殿下　ご成年を挙って寿ぎたい　社説

・『産経新聞』悠仁さま１０歳　田んぼ作りで生物にご関心 2016/9/6

・『神道政治連盟』神道政治連盟（略称・神政連）TOPページ

・『エトセトラ・ジャパン』安倍氏亡き後も神道政治連盟とズブズブな産経新聞　統一教会叩きを批判する記事を掲載