新型コロナ・ワクチン開発で米製薬会社が大きく前進 来月にも3万人規模の最終臨床試験

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開発進む新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチン(画像はイメージです)
開発進む新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチン(画像はイメージです)

アメリカのバイオ医薬品メーカーであるモデルナが、新型コロナウイルスの有力候補となっているワクチンについて、最終段階となる臨床試験(治験)を来月に始めることを発表した。年内は難しいといわれたワクチンの実現だが、米国政府の強力なバックアップもあり、研究は急ピッチで進められている。



新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の予防ワクチンについては、早期の実用化を目指し、世界各地の研究所が競って開発を進めているが、大きくリードしているのは米国の製薬会社モデルナ、ジョンソン・アンド・ジョンソン、そしてアストラゼネカ×英オックスフォード大学などだ。

特に注目が集まっているのは、モデルナ(本拠地:マサチューセッツ州ケンブリッジ)が開発中の新型コロナワクチン「mRNA-1273」。これが7月にも最終段階となる大規模な臨床試験(第3相/フェーズⅢ)を迎えるという。

モデルナが11日に発表したところによれば、臨床試験には約3万人のボランティアが協力する予定。承認が下りれば、スイスの製薬会社ロンザとの提携により来年にも10億回分のワクチンを製造するといい、並行して米国食品医薬品局(FDA)の正式な承認を待つことになるという。

今年3月、モデルナとアメリカ国立衛生研究所(NIH)がシアトルの研究所で行った初期段階の小規模治験には、45人が参加し、結果は「有望」と示された。また約600人が参加した中間(第二)段階も順調に推移したことを5月18日に発表。副作用を含めた安全性に関しては、「おおむね良好」としていた。

トランプ米大統領は、政府・民間企業・NIHが三位一体となる「ワープ・スピード作戦(Operation Warp Speed)」と名付けた戦略を発表。今年じゅうに1億回分のワクチン供給が可能になることを目標に、開発を進める組織への援助を続けてきた。欧米・中国など世界で有力候補は10を超えているが、研究や治験の進捗状況が株価を高騰させるなど、どこも大きな注目を集めている。



mRNA-1273ワクチンは、中国が解明して広く公開していたメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる遺伝子を元に、最新の遺伝子工学を駆使して作られた。簡単に言えば、ウイルスの外郭にあるスパイクと呼ばれる突起を形成させる遺伝子のmRNAを培養により人工的に大量に作り、そこに脂質ナノ粒子を組み入れ、「ウイルスベクター」と呼ばれる無害な疑似ウイルスを作り上げる。

ワクチン接種によりその疑似ウイルスがヒトの細胞に侵入すると、体内で免疫システムが反応。撃退のためキラーT細胞などが働き、免疫はその撃退法を学び、記憶する。その後、本物の新型コロナウイルスが侵入してきた際にもその撃退法が速やかに機能し、病気の発症を防いでくれるという。

6月13日午後2時現在、世界中の773万人以上が感染し、42万人を超える死者を出している新型コロナウイルス。211万人を超える感染者と116,000人の死者が出ているだけに、米国の各研究施設に寄せられている期待の大きさはハンパではあるまい。最終の治験で、高齢者にも安全で副作用が報告されず、ワクチンとしての効果がはっきりと示されることを期待したい。



画像提供:National Institute of Allergy and Infectious Diseases

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

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