<元外資系CAその世界を語る>Vol.31 世界の危険な国々 ~不安の払しょくには知識と警戒心を

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バッキンガム宮殿の夕暮れ(Photo by 佐藤めぐみ)

~外資系エアラインのCAとして世界81都市に飛んだ日々~

中東のエアラインの客室乗務員を目指してみたい ― 娘にそう言われて「いいわね!」と言ってくれる親などなかなかいません。ドバイ(アラブ首長国連邦)やドーハ(カタール)の驚くような発展をご存知ない方や、中東全体がイスラム過激派組織の影響を受けていると誤解していらっしゃる方も、残念ながら大勢いらっしゃるように思います。でも中東のCAたちが特に気を付けなければならないのは、むしろ海外に飛んだ時なのです。今回はそのあたりについて触れてみたいと思います。



■イスラム過激派組織、タリバン、アルカイダなどの脅威を感じたことはない

アフガニスタン、リビア、シリア、トルコ、エジプトなど、イスラム過激派の武装組織や反政府ゲリラが暗躍し、深刻な内紛やテロ事件について報じられている国が、中東からアフリカにかけては確かにいくつもあります。中東に暮らすということで私自身も家族もそれを1番に心配していました。9.11同時多発テロ事件の影響もあり、ハイジャックによるテロ事件が起きないか、それももちろん心配でした。

どのエアラインも常にその手の最新情報収集には努めています。危険な情報のある地域には旅客機をそもそも飛ばしません。例えば長期にわたり紛争が続いているリビアやシリア路線は、エアラインとしても運休の状態がずっと続いています。

また中東でなくとも、たとえば東ヨーロッパやタイなどで反政府デモや軍事衝突が繰り広げられるという情報があれば、飛行機を飛ばさないか、仮に飛んだとしてもクルーのステイ先は変更になります。空港直結のホテルあるいは安全が確保できる地域のホテルに泊まることになり、ホテルの外には決して出ないよう命じられます。

また暮らしている寮の周辺はもちろん、街は平和そのものです。私自身1度も危ない目に遭ったことはなく、同僚からそうした情報を聞いたこともありませんでした。いわゆる“万が一のこと”がまず発生しないからこそ、欧米から多数の優れたパイロットが転職先として選び、家族も連れてきて一緒に暮らしているのだと思います。

■近隣同士でありながら敵対する国家

就航先には、近隣でありながら国家も国民も共に敵対関係にある、そういう国々も含まれています。具体的には台湾と中国、インドとパキスタン。そして中国と香港も実は「強いわだかまりがある二国」とみなされていました。

たとえばインド国籍のCAはパキスタンへのフライトには乗務できません。逆にパキスタン国籍のCAがインド線に乗務することもありません。それぞれの出身であるクルーには、たとえ望んでも相手の国に飛ぶフライトには決して乗務できない、そういう決まりがあります。クルーのシフトを組む部署がありますが、こうしたことに細心の注意を払いながらの作業だそうです。



■さすがに危険だと思った国々

私が実際にステイした先で「ここはかなり危険」と感じたのは、南アのヨハネスブルクとケニアのナイロビでした。ヨハネスブルクは現地人ですらスリ、強盗、レイプに日常的に遭うのですから、夜に道を歩いている外国人の女性などあっという間に被害にあうと聞きました。歩くのは厳禁です。

ヨハネスブルク空港でさえ、チップをもらえなければウソ偽りを教えるスタッフがいっぱいいます。空港に大きなカウンターを持つシャトルバン・サービスですら、お客様がどのホテル名を言っても「10kmの距離だから~~ランド(金額)だよ」と吹っ掛けてきます。その中で「おかしい。ホテルまで2kmのはずだが」と言うような方がいると、ヘラヘラと笑って「じゃ半額でいいよ」と提案するそうです。そんなわけですから、万が一のことがあっても空港のスタッフや警察官さえもがグルだったりするため、自分以外誰の事も信じてはならないというのは本当だと思います。

ヨハネスブルクの大きなショッピングモールにも危険が潜んでいます。同僚CAがATMでお金を降ろそうとした所、1人のごく普通の男性に「自分もさっき使ったけれど、このATMは壊れている。あっちのATMを使った方がいいよ」と声を掛けられたそうです。彼女は「ありがとう」と言って指示されたATMを使いました。

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