<元外資系CAその世界を語る>Vol.30 飛行機に乗ることが「どうしても怖い」という方へ

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ブダペスト「ドナウ川ナイトクルーズ/夜の国会議事堂」です(Photo by 佐藤めぐみ)(Photo by 佐藤めぐみ)
ブダペスト「ドナウ川ナイトクルーズ/夜の国会議事堂」です(Photo by 佐藤めぐみ)

~外資系エアラインのCAとして世界81都市に飛んだ日々~

怖かろうが、大嫌いだろうが、長い人生「どうしても飛行機に乗らないわけにはいかなくなった」ということは誰にも1度はあるように思います。今回は「飛行機はどうしても怖い」とおっしゃる方のためのお話を少しばかりさせていただきたいと思います。



私の周りには、飛行機に乗ること自体が怖いので海外には行けない、国内のどこへ行くにも必ず新幹線でという人が3人もいます。「あんなに重たいものがなぜ空を飛べるのか、そこからして信用できない」「墜落事故のニュースはとにかく悲惨なものばかり」と言う人もいれば、「だって酸素マスクは15分しかもたないと聞いた」となかなか詳しい人もいます。また、ひどい揺れを経験して以降ダメになったとは本当によく聞く話です。

皆さんのお気持ち、とてもよくわかります。離着陸の際、CAは皆さんの方を向いて座りますから、やや青ざめていらっしゃる固い表情の女性、こぶしを強く握り締め、額が薄っすらと汗ばんでおられる男性の方をたくさんお見掛けしました。やはり誰にも飛行機に対する恐怖はあるのだと思います。それでも是非ともその恐怖心を克服していただきたい、どなたにも空の旅の醍醐味を楽しんでいただきたいと私は強く思います。

■飛行機恐怖症 克服のためのアドバイス

クルーは訓練のなかで、飛行機がどういう仕組みで飛び立ち、どのように安全な飛行を続けて目的地に到着するのかを座学で理解します。そのあたりの難しい話は避け、私は「怖いんだよ」という方にいつもこうお話ししてきました。

「キッチンにあるアルミホイルを少しちぎり、それをつまんで目の前から落としてみて下さい。軽いのでヒラヒラと揺れ、舞いながら落ちるでしょう?高度1万メーターというはるか上空で飛行機とはその程度のもの、と表現するパイロットさんもいるんですよ。多少揺れたぐらい、シートベルトさえしていれば何ともないんです。」

「酸素マスクなど15分間ではあっという間という印象でしょうが、それくらいあれば高度も十分に下がり、近隣の空港も緊急着陸を受け入れてくれる体制が整っているのです。」

「驚かれるかもしれませんが、昔とは異なりフライトにおいてはほとんどのことがコンピューターにより管理されていますから、パイロットが仮に眠っていても大丈夫という時間も多いのです。」

そして、実はとても効果があるように思えたのがこの言葉です。

「周囲の安全を確認の上、車をある程度のスピードで走らせながら翼のつもりで腕を窓の外に大きく横に伸ばしてみて下さい。強い風を受けてブレませんか? 飛行機はそもそも揺れて当然なのです。それでも怖くてたまらない時は、機内を歩いている私たちクルーの表情を見て下さい。どんなに揺れていてもケロッとして作業を続けているでしょう? 私たちの顔を見る、それだけでも安心できると思いますよ。」



■雷はまず心配いらない

また、よく心配されるのが「落雷」です。通信機器やアンテナにダメージをくらう大きな原因でもあります。胴体先端に搭載された気象レーダーがその警戒に当たっていますが、それでも避けられないことが多々あるそうです。稲妻とは天から地に向かって落ちるというイメージがありますが、雷雲を見下ろしていてわかるのは、稲妻は雲の中を縦横無尽に駆け巡っているということです。しかし飛行にはまず影響が出ません。

■エンジントラブルでもたいがいの飛行機は緊急着陸に成功

「離陸後間もない旅客機がエンジントラブルを起こして空港に引き返した」、「付近の空港に緊急着陸した」といったニュースがたまにあります。左右どちらのエンジンがと示されない場合は「ひょっとして2つとも?」と心配になります。それでもまずはご安心を。エンジンが仮に左右ふたつともトラブルに見舞われて停止したとしても、その時点で最低1.5kmの高度があればそこから約10kmは飛行できると学びました。高度が上がれば上がるほど機体の重量が軽くなるわけですから、さらに長く飛べるはずです。



■ドスンという衝撃のある着陸はパイロットが下手なのか

飛行機は離陸より着陸の方が怖いという人が多い気がします。横風も手ごわい敵で、とても滑らかに滑走路に着地すると拍手すら起きますよね。そうなると、「ドスン」とか「ズドン」という衝撃とともにジャンプしながら着陸させたパイロットは下手くそということになってしまうのでしょうか。その答えはNoです。雨などで路面が湿っていると車輪を水が覆うことでハイドロプレーニング現象が起きやすく、これを避けるためにドスンといったん強めの摩擦を起こし、かつジャンプさせて水を切る、そんな目的でやっている場合もあるそうです。それでもすべてのパイロットが、静かに着地してまっすぐに滑走路を進むこと、これを一番に心がけていたように思います。

いかがでしたしょうか。今まではただ手に汗を握り締めながら「早く無事に着陸して」と祈るだけだったという方も、これからはどうか気持ちに余裕を持って空の旅を味わってみてください。勇気が出てきた、と言っていただければ何より嬉しく思います。宝石のように美しく輝く夜の街、地図帳で見た通りの海岸線、雲海、美しい朝日や夕日など、飛行機から外の景色を見るのはとても楽しいものです。

(佐藤めぐみ/エトセトラ)

<目 次>

Vol.1 子供の頃から“スチュワーデスのお姉さん”になりたかった私

Vol.2 こんな皆さんに読んで頂きたいです!

Vol.3 なぜ米国のエアラインを選ばず、中東のエアラインに狙いを定めたのか

Vol.4 地獄の訓練

Vol.5 初めての乗務 泣いて笑って

Vol.6 お客様も色々な方が…王族の乗務、そして男性客のセクハラ

Vol.7 クレームはやっぱり怖い

Vol.8 ロングフライト中のクルー交代制度

Vol.9 整容検査(グルーミングチェック)は厳しい 美容整形はOK?

Vol.10 CAは美の競い合いの世界 人気のコスメはやっぱり…

Vol.11 空飛ぶ美しいオカマちゃんたち

Vol.12 緊張感みなぎる空の仕事 フライト前のブリーフィング

Vol.13 緊張感みなぎる空の仕事 ファーストエイド=救命救急

Vol.14 緊張感みなぎる空の仕事 実は多い各種のトラブル

Vol.15 CAの仕事は危険と健康不安がつきもの

Vol.16 CAになるとイイ思いをすることも多いの? もちろんイエス!

Vol.17 CAになるとイイ思いをすることも多いの? 航空券ほかの優遇制度

Vol.18 大好きなアノ方たちとの極秘2ショットは私の宝物

Vol.19 若い女性だもの恋はしていたい! パイロットとの恋愛は? まさかの不倫は?

Vol.20 若い女性だもの、恋はしていたい! ゼネコンや商社の男性たちとの合コンは?

Vol.21 素晴らしい社員寮! でもインターネット環境は…!?

Vol.22 イスラム教徒の国に暮らすことの真実

Vol.23 日本人CA同士の絆と結束 外出時に利用する交通機関、実は…。

Vol.24 クルーの出身は世界各国 ビジネス・ファーストクラスへの昇格は?

Vol.25 クルーの出身は世界各国 やがて見えてくるそれぞれの国民性と苛立ち

Vol.26 お客様から学んだこと カルチャーショックの連続【その1】

Vol.26 お客様から学んだこと カルチャーショックの連続【その2】

Vol.27 お客様から学んだこと 日本人旅行客にみるオバチャンたちのたくましさ

Vol.28 UFOに遭遇するって本当? 見た場合はどう対処するの?

Vol.29 ひどい乱気流でわかる揺れやすい席 万が一の際、少しでも安全な席は!? 

Vol.30 飛行機に乗ることが「どうしても怖い」という方へ

Vol.31 世界の危険な国々 ~不安の払しょくには知識と警戒心をVol.31 世界の危険な国々

Vol.32 雇用は3年ごとに更新。最初の3年を満了しただけで退職した理由

Vol.33 家族に万が一のことがあった場合は!? 緊急時に帰国は許されるのか

Vol.34 中東の二強エアラインを簡単に比較

Vol.35 CA受験合格に王道なし 学歴は?留学は?スクールは?

Vol.36 CA受験合格に王道なし 留学、そして専門学校の必要性は?

Vol.37 実際の試験はどのように行われたのか