<元外資系CAその世界を語る>Vol.29 ひどい乱気流でわかる揺れやすい席 万が一の際、少しでも安全な席は!? 

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オフでスロベニアのブレッド湖へ「聖マリア教会」が素敵! (Photo by 佐藤めぐみ)
オフでスロベニアのブレッド湖へ「聖マリア教会」が素敵! (Photo by 佐藤めぐみ)

~外資系エアラインのCAとして世界81都市に飛んだ日々~

空の旅は「できれば揺れの少ない席に座りたい」と誰もが思うものです。飛行機の重心は前方にあるため、座席は前ほど揺れない、揺れやすいのは後方の席、これはその通りだと断言できます。最近はほとんどのエアラインがインターネットで事前に座席を指定できるようになっており、やはり前の方から順に埋まっていきます。目的地に到着したら早く降機できるというのが一番の利点で、トイレのことを考えると長距離路線では窓側が人気というわけでもないようです。



エコノミークラスを担当していた頃、ものすごい乱気流に巻き込まれたことがありました。食後すべてのトレイを回収し終えたところで、キャプテンの機内アナウンスに従ってクルーは作業を中断し、自分たちの席に座ってシートベルトを着用したところ、ギャレーでは揺れにより様々なものが落下し、あの重いカートが倒れ、周辺一帯が残飯や食器でめちゃくちゃになりました。ご存知の通り何が起きても私たちは絶対に動いてはなりません。お客様に熱いものなどが引っかからないか本当にヤキモキしたものです。

数分後、揺れが落ち着いた頃にチーフパーサーが前方から「大丈夫だった?」と駆け付けてくれましたが、地獄絵図のようになったギャレーに驚いて「うわっ、これはひどい。こんなに揺れたの?」と言っていました。前方はそこまで揺れなかったそうです。

■万が一の際にも安全な席はあるのか

「安全な席ってどこなの?」と尋ねられることがよくありました。そんな時は、「生存率はわずかなものですから事故の際はもうどこも危ないのですが、遺体損傷のひどさを基準に考えると、10パーセントくらいの差で前方より後方の席を選んだ方が良いとの調査結果がアメリカでは出ているようです」とだけお話するようにしていました。

ただし墜落に至るまでもトラブルが起きた箇所により急降下、蛇行など様々で、落ちた場所が地面か水面でも状況は異なります。また墜落ではなく衝突の場合、お客様は遺書を残される余裕すらなく一瞬にして命を奪われてしまいます。「万が一の際は機内アナウンスやクルーの指示に従って、とにかく安全な体勢(体を前に丸めて倒し、頭部を手で抱える)を取ること、最も近い出口、非常出口をあらかじめ確認しておくことが大事になります」とお話しますが、シートベルトゆえに体が、座席ゆえに頭部が切断されたと思われる遺体が多数あることから、そうはお話するものの常にこちらの心境は複雑でした。



■目を暗さに慣らしておく必要がある

夜の空港に着陸する時、キャビンの照明が消されて薄暗くなってしまうことに「なぜ? 怖いんだけれど」とおっしゃるお客様がありました。しかし、それにもちゃんとした意味があるのです。人の目は“暗さ”に慣れるまでに少しの時間を要するもので、万が一の事態が発生してもすぐに避難体制に入れるよう、あらかじめ暗さに慣れておく必要があるのです。

■緊急脱出用のスライド

万が一の水面着陸の際には、扉から垂らされてシューーーーーッと開かれる緊急脱出用のスライドがあります。あれを使用して外に避難しなければならなくなった際は、カバンはもちろん、パスポートや財布といった貴重品や携帯電話など何一つ持たない。これを誰もが徹底して守る必要があります。なぜなら、もしもバッグや財布の金具、ハイヒールなどがスライドを傷つけて空気が漏れてしまったら、後の人たちはどうなるでしょうか。全員がすみやかに脱出するには、誰一人として決してスライドを傷つけてはならないのです。

ちなみに私がいたエアラインでは、非常時でもないのにクルーがあれを間違って出してしまったら「即刻クビになる」と言い渡されていました。他社においても2度と乗務には就けない、あるいはクビだと聞いています。理由は、そんな単純なミスを犯すクルーに何百人もの尊い命を預けられないから。しかも機材の変更を余儀なくされるため、乗客乗員は別の機材が準備されるまで異なるゲートに移動して待機し、貨物室のすべてのものが大移動となりますから数時間の遅延は避けられません。また、固い地面の上に開くことでスライドの表面には多数の傷がつくため、確認作業の末に修繕・交換となり、それにまつわる人件費などで被害は日本円にして200〜300万円におよぶそうです。そのためイタズラでそれをやってしまった場合、たとえそれが乗客であっても損害賠償金を要求するというエアラインが多いと聞いています。

(佐藤めぐみ/エトセトラ)



<目 次>

Vol.1 子供の頃から“スチュワーデスのお姉さん”になりたかった私

Vol.2 こんな皆さんに読んで頂きたいです!

Vol.3 なぜ米国のエアラインを選ばず、中東のエアラインに狙いを定めたのか

Vol.4 地獄の訓練

Vol.5 初めての乗務 泣いて笑って

Vol.6 お客様も色々な方が…王族の乗務、そして男性客のセクハラ

Vol.7 クレームはやっぱり怖い

Vol.8 ロングフライト中のクルー交代制度

Vol.9 整容検査(グルーミングチェック)は厳しい 美容整形はOK?

Vol.10 CAは美の競い合いの世界 人気のコスメはやっぱり…

Vol.11 空飛ぶ美しいオカマちゃんたち

Vol.12 緊張感みなぎる空の仕事 フライト前のブリーフィング

Vol.13 緊張感みなぎる空の仕事 ファーストエイド=救命救急

Vol.14 緊張感みなぎる空の仕事 実は多い各種のトラブル

Vol.15 CAの仕事は危険と健康不安がつきもの

Vol.16 CAになるとイイ思いをすることも多いの? もちろんイエス!

Vol.17 CAになるとイイ思いをすることも多いの? 航空券ほかの優遇制度

Vol.18 大好きなアノ方たちとの極秘2ショットは私の宝物

Vol.19 若い女性だもの恋はしていたい! パイロットとの恋愛は? まさかの不倫は?

Vol.20 若い女性だもの、恋はしていたい! ゼネコンや商社の男性たちとの合コンは?

Vol.21 素晴らしい社員寮! でもインターネット環境は…!?

Vol.22 イスラム教徒の国に暮らすことの真実

Vol.23 日本人CA同士の絆と結束 外出時に利用する交通機関、実は…。

Vol.24 クルーの出身は世界各国 ビジネス・ファーストクラスへの昇格は?

Vol.25 クルーの出身は世界各国 やがて見えてくるそれぞれの国民性と苛立ち

Vol.26 お客様から学んだこと カルチャーショックの連続【その1】

Vol.26 お客様から学んだこと カルチャーショックの連続【その2】

Vol.27 お客様から学んだこと 日本人旅行客にみるオバチャンたちのたくましさ

Vol.28 UFOに遭遇するって本当? 見た場合はどう対処するの?

Vol.29 ひどい乱気流でわかる揺れやすい席 万が一の際、少しでも安全な席は!? 

Vol.30 飛行機に乗ることが「どうしても怖い」という方へ

Vol.31 世界の危険な国々 ~不安の払しょくには知識と警戒心をVol.31 世界の危険な国々

Vol.32 雇用は3年ごとに更新。最初の3年を満了しただけで退職した理由

Vol.33 家族に万が一のことがあった場合は!? 緊急時に帰国は許されるのか

Vol.34 中東の二強エアラインを簡単に比較

Vol.35 CA受験合格に王道なし 学歴は?留学は?スクールは?

Vol.36 CA受験合格に王道なし 留学、そして専門学校の必要性は?

Vol.37 実際の試験はどのように行われたのか