<元外資系CAその世界を語る>Vol.22 イスラム教徒の国に暮らすことの真実

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有名なドバイのブルジュ・カリファ(Photo by 佐藤めぐみ)
有名なドバイのブルジュ・カリファ(Photo by 佐藤めぐみ)

~外資系エアラインのCAとして世界81都市に飛んだ日々~

イスラム教徒の国に暮らす人々の朝は、「お祈りの時間ですよ」と呼びかける“アザーン”の歌が町内放送のごとく大きな音量で流れることからスタートします。一方、CAは昼夜を問わない不規則な生活をしている上、ムスリムではないので「ゆっくりと寝かせてよ~~」という感じです。ちなみに宗教の勧誘を受けることは決してありません。見るからに私たちはよそ者、相手にもされていないのでしょうね。アラブの国に暮らす上で気を付けたこと、意外にも便利だったことをご紹介します。



■黄砂に気をつけて!

砂漠の豪快なドライブ「デザート・サファリ」は楽しいのですが…(Photo by 佐藤めぐみ)
砂漠の豪快なドライブ「デザート・サファリ」は楽しいのですが…(Photo by 佐藤めぐみ)

強風が砂漠を巻き上げる中東で気をつけなければならないのは、肺炎のような呼吸器系の疾患やアレルギーの疾患を招きかねない「砂塵」です。寮の部屋の窓は1年中常に閉めっぱなしにしますが、それでも換気扇やエアコンの隙間から砂ぼこりが微粒子になって室内に入ってきます。掃除をしてから4日間のフライトに出かけても、家に戻ればデスクやキッチンテーブルにうっすらと…これには毎度ガッカリさせられました。中東での生活にはマスクの着用が必要だったように感じられます。

■リッチなショッピングやレストラン

私が住んでいたところには巨大なショッピングセンターがいくつかあり、これからもどんどん増えていくことでしょう。モール内に水族館があったり、ベネチア風のゴンドラがあって、実際にモール内の運河をボートでこいでくれたり、アイススケートや小さな遊園地もあります。モール内にあるレストランの物価は日本とあまり変わりません。例えばマックのセットは500~600円で、イタリアン、タイ、日本食、カフェ、どこで食事をしても最低1,000円はします。ただしウェイトレスの態度やお店の雰囲気はよく、客層もちょっとリッチ。ヨーロッパ系の駐在員さんやその家族がとても多いので1人で食事していても全く安心です。

ちなみに街中の安い食堂は味が美味しく、1人500円以下で食事ができるそうです。ところが店構えは古く衛生面もおそらく怪しいため、クルーの女の子同士で行くという話もあまり聞きませんでした。



■日常の食品や日用品の買い物

世界展開の有名スーパーマーケットチェーン「Carrefour(カルフール)」がありました。どの大型ショッピングモールにも、必ずお手頃な値段のスーパーマーケットが併設されているのです。必要な食材や調味料は全てそうしたお店で揃います。生肉や鮮魚も売っており、野菜はキャベツ一玉150円程度。高いと感じたことはありませんでした。ただしイスラム教の国ですから、豚肉、そして豚肉エキスなどを原料に使った調味料やスープなどは売られていません。禁じられると人間はむしろそれへの欲求を強く意識するようになるのでしょう。それまではどうでも良かった豚肉がとてつもなく食べたくなってしまったのは予想外でした。豚肉中毒になったかと思うくらい、フライトでイスラム圏の外にステイできる日は必ず豚肉料理をオーダーし、日本線では毎回のようにトンカツと豚の生姜焼きを食べたものです。

最初の頃はこうして地元のスーパーで食材を買っていたのですが、私は徐々に日本の食材が恋しくなりました。毎月のフライトについては“Bidding System”といって行き先の希望をだいたい10本まで申請することが出来るのですが、私の最後の一年間は「日本線を」というリクエストばかりとなりました。スーパーに出掛けては乾物、日本の調味料、お酒、時にはお肉、野菜、お豆腐、納豆といったものまで買い込み、保冷剤を敷き詰めたスーツケースをパンパンにして持ち帰っていました。外国人クルーに、「そのスーツケースは君の体重より重いんじゃない?」とからかわれるくらいでした。

今だから白状しますが、豚肉とお酒を外国から持ち込むことは本当にマズイことで、もしもバレたら刑務所に数日監禁され、日本に強制送還されることになるそうです。ではなぜ私の持ち込みはバレなかったのか…。これは商品名がすべて日本語で表記されているためでした。税関職員が私のスーツケースを開けたとしても商品名を読めず、「これは牛肉でこれはジュース、これは牛乳です」という私の説明を信用するしかない、それだけが頼りでした。



■イスラム過激派組織に関する不安

皆さんが最も気になるのは、やはり治安の面でしょうか。私が勤めていたごく平和だった頃、そしてすっかり落ち着きを取り戻した今はもちろんですが、過激派組織「イスラム国」が著しい台頭を見せていた頃ですら、現役CAから「不安で仕方がない」といった言葉を聞いたことが実はありませんでした。タリバン、アルカイダ、イスラム国などの過激派組織が敵視するのはキリスト教を重んじる西洋の国、そしてイスラム教の国でありながら西洋文化に迎合しているような中途半端な国ですから、熱心なイスラム教徒がほとんどという国にいる方がむしろ安全なのだと思います。ただし「家族が心配して仕方がない」という話は聞こえてきました。そういう時は、自分達の周辺や日常は至って穏やかで平和であることを、写真などできちんと説明することで理解を得るしかないと思います。

>>> Vol.23 「日本人CAの結束は固い」に続きます >>>

(佐藤めぐみ/エトセトラ)

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<目 次>

Vol.1 子供の頃から“スチュワーデスのお姉さん”になりたかった私

Vol.2 こんな皆さんに読んで頂きたいです!

Vol.3 なぜ米国のエアラインを選ばず、中東のエアラインに狙いを定めたのか

Vol.4 地獄の訓練

Vol.5 初めての乗務 泣いて笑って

Vol.6 お客様も色々な方が…王族の乗務、そして男性客のセクハラ

Vol.7 クレームはやっぱり怖い

Vol.8 ロングフライト中のクルー交代制度

Vol.9 整容検査(グルーミングチェック)は厳しい 美容整形はOK?

Vol.10 CAは美の競い合いの世界 人気のコスメはやっぱり…

Vol.11 空飛ぶ美しいオカマちゃんたち

Vol.12 緊張感みなぎる空の仕事 フライト前のブリーフィング

Vol.13 緊張感みなぎる空の仕事 ファーストエイド=救命救急

Vol.14 緊張感みなぎる空の仕事 実は多い各種のトラブル

Vol.15 CAの仕事は危険と健康不安がつきもの

Vol.16 CAになるとイイ思いをすることも多いの? もちろんイエス!

Vol.17 CAになるとイイ思いをすることも多いの? 航空券ほかの優遇制度

Vol.18 大好きなアノ方たちとの極秘2ショットは私の宝物

Vol.19 若い女性だもの恋はしていたい! パイロットとの恋愛は? まさかの不倫は?

Vol.20 若い女性だもの、恋はしていたい! ゼネコンや商社の男性たちとの合コンは?

Vol.21 素晴らしい社員寮! でもインターネット環境は…!?

Vol.22 イスラム教徒の国に暮らすことの真実

Vol.23 日本人CAの結束は固い

Vol.24 クルーの出身は世界各国 ビジネス・ファーストクラスへの昇格は?

Vol.25 クルーの出身は世界各国 やがて見えてくるそれぞれの国民性と苛立ち

Vol.26 お客様から学んだこと カルチャーショックの連続

Vol.27 お客様から学んだこと 日本人旅行客にみるオバチャンたちのたくましさ

Vol.28 UFOに遭遇するって本当? 見た場合はどう対処するの?

Vol.29 乱気流でわかる揺れやすい席 万が一の時に安全な席

Vol.30 飛行機に乗ること自体が「とても怖い」という方へ

Vol.31 世界の危険な国々

Vol.32 雇用は3年ごとに更新。最初の3年を満了しただけで退職した理由

Vol.33 家族に万が一のことがあった場合は!? 緊急時に帰国は許されるのか

Vol.34 中東の二強エアラインを簡単に比較

Vol.35 CA受験合格に王道なし 学歴は?留学は?スクールは?

Vol.36 CA受験合格に王道なし 留学、そして専門学校の必要性は?

Vol.37 実際の試験はどのように行われたのか

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