生理が来たら嫁ぐベドウィン族 「50頭のヒツジと引き換え」に苦悩する父親

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この無垢な少女を児童婚から救いたいとイワンさん
この無垢な少女を児童婚から救いたいとイワンさん

娘に生理が来たら嫁に出す。しかも良い条件の先に ― 思春期もまだという7歳の可愛い娘について、こんなことを話す父親は正気なのであろうか。それとも民族の習わしとして仕方がないことなのであろうか。ロシアの映画監督イワン・ヴドヴィン氏は今、ベドウィン族の1組の親子についてドキュメンタリー映画を完成させようと必死である。



イワンさんは2016年の夏、映画撮影のためにクルーを伴い、エルサレムから車で1時間というイスラエルのワディ・ケルト(Wadi Qelt)という砂漠地帯に1か月ほど入り、ベドウィン族の暮らしぶりに向き合った。アラファトさんという男性はかつて自分のガイドを務めてくれたことがあるが、その映画制作においてはクルーとしても活動してくれた。危険な山道であっても1984年製のトヨタ車でどこまでも進み、出演してくれる子供たちを探し、動物を撮影できるスポットも探してくれたという。

徐々に関係が打ち解けてきたなか、イワンさんはアラファトさんの家族に紹介された。彼には2人の妻がおり、10歳の息子を筆頭に3人の子供がいた。そして人懐こい、愛くるしい笑顔が魅力の活発な少女が5歳のザクラちゃんであった。当時25歳だったイワンさんに「私の娘のこと好きですか?」と尋ねたアラファトさん。「好きですよ」とイワンさんが答えると、「では、あなたがモスクワにザクラを連れて行くとよい。あなたは良い人だし、娘にも普通の教育と生活を与えてくれるのかもしれない。あなたがザクラを育てて、望むなら娘が12歳になったら結婚すればよいのです」と真剣な表情で話を持ち掛けてきた。

アラファトさんによれば、ベドウィン族では「初潮が来て間もない女の子を11〜12歳の頃に家畜と引き換えで嫁に出す」という忌まわしい習慣があるという。アラファトさんは「ザクラなら50頭のヒツジを得られますね」と目論んでいた。高齢の男ならより良い取引が叶うそうだ。しかし結婚したらザクラちゃんはいきなり子作りと子育てに追われ、外界とのコミュニケーションを一切断たれることに。女の子は一生涯狭い社会で生きることを余儀なくされ、喋る相手は夫、夫の母親と姉妹、わが子のみに限られてしまうというのだ。

ザクラちゃんをモスクワに連れていき、12歳になったら結婚をという父親からの申し出を丁寧に断ったイワンさん。不憫なこの親子を助けてあげたい気持ちは山ほどあれど、12歳の少女を妻に迎える気持ちは彼にはない。しかし、なんとしてもこの映画を成功させ、それにより不憫な児童婚からザクラちゃんを救いたいとイワンさんに決心させたのは、アラファトさんのこの一言であった。

「私だって父親としてザクラのことは本当に可愛く、愛しているのです。でもこのあたりの伝統を打ち破ることはどうしてもできないのです。」

もしもベドウィン族でなく別の世界で生きていたとしたら、アラファトさんもきっと違う子育てをしていたであろう。好奇心の強い活発なザクラちゃんは何の心配もなく高い教育を目指して勉強を続け、自分にふさわしい仕事を見つけ、好きな男性と出会って結婚することであろう。幼い子供と中年や高年の男の結婚がいかに残酷なものか、ベドウィン族に必要なのは世界の真実を知ること、そして正しい教育であろう。イワンさんはそんな強い信念とともにこの映画の制作に臨んでいる。

来年の上映を予定しているそのドキュメンタリー映画のタイトルは『Zakura, bedouin girl』となる予定だ。制作の総費用はおそらく日本円で162万円ほどになり、うち49万円はクラウドファンディングで集まったお金を充てたが、残りはイワンさんが自腹を切るという。



参照および画像引用:『METRO』Girl, 7, faces being forced to marry in exchange for 50 sheep when she starts having periods((Picture: Ivan Vdovin/ east2west news)

(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

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