ハートウォーミングな映画に涙したい 『きみに読む物語(原題:The Notebook)』前半

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画像:2012/07/17公開YouTube『Stef Bauwens/ The Notebook - Trailer』のサムネイル
画像:2012/07/17公開YouTube『Stef Bauwens/ The Notebook – Trailer』のサムネイル

『きみに読む物語(原題:The Notebook)』2005年日本公開
監督:ニック・カサヴェテス
主演:ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、ジーナ・ローランズ

 

~ハートウォーミングな映画で涙してみたいアナタのために~

決して忘れたくないことも徐々に記憶からかき消されていく「アルツハイマー病」。同じ話を何度もしてしまうのはまだ序の口に過ぎない。やがて自分は今どこにいるのだろう、どこが自分の家なのだろう、今は何月だろうかなどと見当識があやしくなり、金額の高低がよくわからなくなるため100円の買い物でも1万円札を出すようになり、同じものを何度も買ってしまう、食事、排せつ、入浴、着替え、洗濯や掃除など、健常者なら問題なくできることが徐々に出来なくなっていき、家族がフォローしきれなくなると患者はグループホームなどに入所せざるを得なくなる。住み慣れた町、自宅から引き離されることも辛いであろうに、時おりわずかの時間であっても正しい記憶がふと蘇ることがあり、そうした時は本人も深い悲しみと絶望感におそわれるといわれている。

 

ニコラス・スパークスによる1996年の小説を映画化したこの作品。この高齢社会ではもはや避けて通れなくなっている「認知症」がテーマであり、本人、そして周囲の苦悩と悲しみが手に取れるようにわかる作品となっている。大好きだったおじいちゃん(おばあちゃん)が年齢を重ねるごとに変わってしまい、あれこれたくさんのトラブルが起きて、いつの間にか天に召されていった、そんな風に思って祖父母を見てきた人々にとっては大きな“気づき”があるかもしれない。老いとはこんなにも悲しく切ないもの。そして愛の力、尊さを強く思い知らされる素晴らしい作品である。美しい湖がたびたび登場するシーブルックの景色もだが、優しい男と見てすぐにわかる俳優ライアン・ゴズリングの演技にも心が和む。

 

(あらすじ:ネタバレ度・高)

 

この作品の舞台はノース・カロライナ州のシーブルックという片田舎。湖に沈む真っ赤な夕陽の温かさと仲間とともに天に向かって飛び立つ白い渡り鳥の姿から、この作品が死が迫る高齢者を扱ったものであることに重なる。あるグループホームで、アリーという高齢女性の部屋を連日訪ねては読み聞かせをしているやはり高齢の男性“デューク”。手にしているのは一冊の分厚いノート。そこにはある男女の出会いと破局、再会と熱愛、愛あふれる幸せな結婚生活の物語がぎっしりと書き留めてあった。アリーが物語を楽しそうに聞いてくれた日は満足感を得るノアだが、彼女は時々不安そうな顔で「あなたは誰?」と尋ねてくる。ノアのその時の切ない表情には見ているこちらの胸も熱くなる。

 

1940年のあるお祭りの夜、材木工場で働く貧しくも美しい青年ノア(ライアン・ゴズリング)はアリー(レイチェル・マクアダムス)という裕福な家庭のご令嬢と出会い、一目惚れしてデートを迫る。ホイットマンの詩を愛し、情熱的な手紙を書いてくれるロマンチックで優しいノア。アリーも彼に夢中になり、アリーの両親の激しい反対にあいながら、また意見の食い違いや激しい喧嘩を多々しながらも2人はとにかく深く愛しあっていた。

 

ドイツとの戦争がはじまり徴兵されたノア。アリーはその間に裕福な青年ロンと恋に落ち、婚約。バラ色の人生を保証されていた。ノアが気になっていたが彼からの手紙も途絶え、すでに忘れられていると思っていたのだ。ある日、外出先でロンとアリーがデートしている様子をふと目にしてしまったノアは、父が遺してくれた家の改築工事に狂ったように没頭し、アリーが夢にみると言っていた白壁の美しい邸宅に生まれ変わらせる。しかし彼女をほかの男に奪われた虚しさから、ノアはその家で愛を感じない年上の戦争未亡人と半同棲の暮らしを続けてしまった。

 

ウェディングドレス合わせも無事済んだというのに、新聞でノアの広告記事をみかけて卒倒してしまったアリー。意を決してついにシーブルックの彼の家に会いに行く。ボートで湖に繰り出し、雷雨でずぶ濡れになった2人はノアの自宅に戻ると激しく求めあう。離れ離れの1年間、毎日欠かさず365通もの手紙を送っていたと聞かされ、またその手紙がアリーの手に渡らぬよう母親が阻止していたことを知り、アリーの中で7年間の孤独とわだかまりは吹っ飛び、そんな2人の純愛を両親も認めざるを得なかくなった。戦争未亡人マーサとの肉体関係にも終止符を打ち、アリーと2人だけの甘い日々がスタートしたノア。絵を描くことが大好きな彼女のために、自宅に素晴らしいアトリエすら用意してあったのだ。

 

アリーのいるグループホームにはたまに子供たちが可愛い孫を連れて訪れる。しかし、それぞれの名前を聞いて堅苦しい挨拶を交わすことしかできなくなっていた老いた母アリー。“デューク”と名乗り同じ施設に入所していた父ノアに、「認知症はもう治らない。そんな母にいつまでも付き合わず自宅に戻ったらいい」と説得するが、彼は「ママこそが僕のマイホームさ。最愛の女性なんだ。決して彼女のそばを離れたくない」と拒むのであった。いずれ訪れるであろう妻の死。いや、心臓に持病がある自分が先であろうか。若いころ何度も引き離されていたアリーとやっと結婚した彼が「最期まで彼女と一緒にいたい」と言い張るのも無理はなかった。

動画:『YouTube』The Notebook – Trailer

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(朝比奈ゆかり/エトセトラ)

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