<命の輝き/Inspiring Stories> がんステージ3を克服した青年 苦悩を乗り越え執筆、実業家へ

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ザック「ガン闘病は良い経験になったと思えるんだ」
ザック「ガン闘病は良い経験になったと思えるんだ」

私の友達に、心から「すごい人だ」と尊敬できるアメリカ人の青年がいる。その人の名前はザック・フェアー。幼少期からの夢を見事に叶えて軍に入り、「人生これから」という時に悪性黒色腫(メラノーマ)のステージ3であると宣告された。彼は周囲の「生きて」という願いを顧みず、「このままであれば先は短い。ならば好きな仕事を最期まで続けて死にたい」と“短くも濃い人生”を望んだという。

そしてぎりぎりまで積極的治療を拒否し、人生につき、そして死につき、「答えのない質問」で自分を追い詰めたものの、ついには杖なしでは歩けぬほど病状が悪化。そこでようやくザックは仕事ではなく「生きること」を選択し、辛い治療を経てなんとかガンを克服した。そして、その後に再び別の仕事に就くも、彼はこう思い至ったのだという。

「老人になった時、ああしていれば良かった。いや、こうしていれば良かったと思う人は多いはずだ。でも俺はそんな人生はごめんだ。限りある人生、好きなことを仕事にして夢を追って生きていきたい。」

「手術を受けて」「生きてほしい」という家族の願いを受け入れ手術を受けたザックは、こうして回復後に得た仕事も「よし、辞める!」と手放し、夢を追うことを決意。自己啓発本(『Step One』)を出版し、現在は実業家として活動している。

「自分の命を最大限に生かし、夢を実現させたい。」

たとえ人とは違う生き方であろうが、自分の決断を信じて毎日を誰よりも明るく生きているエネルギッシュな彼に、このたびインタビューさせていただいた。

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■ ザック、今日は『エトセトラ』のインタビューに応じてくれてありかどう。で、最近調子どう?

- バッチリさ! ソーシャルメディアのマーケティングエージェンシーを立ち上げて、成功させるべく頑張っているところでね。クライアントも増えてきたよ。ビジネスはもっともっと展開していきたいと思う。リチャード・ブランソン(ヴァージン・グループの創設者でもあるイギリスの有名な実業家)のように、バリバリ働くんだ。すごく楽しいよ。人生を謳歌している―まさにそんな感じだね。

 

■ ガンを乗り越えたんだよね。ずいぶん辛い思いをしたのは知っているの。でもザックはすごく楽しい人だよね。それにエネルギッシュで、誰もあなたがこんなに辛い闘病を経たなんて想像もつかないと思うよ。

- 病気をする前から、僕はものすごくエネルギッシュなタイプだったんだ。それに変に聞こえるかもしれないけれど、ガンを患った経験は自分にとってプラスになったと思うし、感謝しているんだ。あの経験があったから、僕は命の大切さを学べた。そしてこうも学んだんだよ。死ぬことを恐れる必要はないんだって。つまり物の見方が変わったってこと。人生の見方がガラリと変化したんだ。

 

■ ステージ3だったんだよね? 実はうちの父も同じ病気でね。手術を受けて回復したものの、私も家族もすごく不安で怖かった。でも父に寄り添いながら、私はずっとザックのことを考えていたんだ。「ザックも元気。だから父さんも負けっこないわ」って。でも最初に病名を知った時は、泣いてばかりで食事も喉を通らなくなったの。痩せ細って暗い私の様子がどんなに父を苦しめたかと思うと、今もやるせない気分になってしまう。ザックはご家族のどんな言葉に励まされた? それと、どんな言葉や態度が逆に嫌だった?

- そうか…それは大変だったね。辛かっただろう? 僕のガンはステージ3のメラノーマだ。バッサリ切り取ったから、かなりデカい傷が残ってるよ。「ライオンと喧嘩して、僕が勝った」って言ってもおかしくないような傷さ。あと、僕はガンになったことでむしろ家族を遠ざけてしまったんだ。家族が僕の病気を受け入れられるような精神状態じゃなかったからね。だって、死に向かいつつあるような状態とか「ガンです」って言われたときに、どう反応するべきかを教えてくれるマニュアルもないわけだし。でも僕には分かっていた。大丈夫、必ず治るって気がしていたんだ。それに闘病を経た今は、ここで死んでも心残りはないと思えるような気がしてる。一番支えになってくれたのは父だ。父は弱い姿を決して僕には見せなかった。泣いたのだとしたら、そっとひとりで泣いたんだろうね。父には分かっていたんだ。僕本人がシッカリしなきゃダメってこともね。そして前向きになること。声を出して笑うこと。強い気持ちを失わないことの大切さもだよ。あとはきちんとした食生活の重要さもね。父にはずっと感謝していかなければと思っているよ。母も素晴らしいサポートはしてくれた。でも僕に付き添っていると何人もの医師から「息子さんは死にかけています」なんて言われることになる。その気分を想像してみてよ。だから辛すぎて母のことは遠ざけておきたかった。僕は死なないっていう自信があったしね。それにほら、今の僕はこの通りさ!

 

■ 結局、どういう治療でここまで元気になったの?

- 手術さ。化学療法はメラノーマには効果があまり期待できないって言われてね。で、切除してもらったってわけ。術後に立ち上がれるようになるのに、3か月もかかったよ。でも立ち上がれた瞬間に分かったんだ。自分がしなくちゃならないのは、人助けだって。特にビジネスを立ち上げたい人の手伝いがしたいと思ったのも、その瞬間だ。そして今は最高の自分になることを目指しているよ。(病気を経て)今はまさに怖い物なし、どんと来いって感じだ。

 

■ 友達としばらく同居してたよね。あれって手術の後だっけ? その友達もガンだったんだよね。今はどうされてるの?

- フロリダから引っ越した僕は、ビルという名の友達の家に身を寄せたんだ。すごく良い奴で、尊敬してた。でも亡くなったんだ、去年。ビルの旅立ちを僕はずっと見守ったんだ。会えなくなって寂しいよ。でもいつか再会するよ、天国でね。

 

■ ザックはビルからどんなことを学んだと思う?

- 謙虚であることの大切さだね。あと、より良い人間にならなきゃダメってこと。僕はね、ビルをすごく尊敬してた。臨終の時…僕は胸が張り裂けるほど泣いてしまって…。彼に2度と会えなくなると思うとすごく悲しかったんだ。でも分かってた。いつか再び彼と会えるとね。でもその日はまだ来ないよ、ずっと先の話だ。

 

■ 病院で手術を受けて回復するまでの間、ザックはどんな思いでいたの? 励みになるような歌とか映画はあった?

- 僕は、歌を聴いたり映画を観るんじゃなくて、YouTubeでモチベーションがあがるような動画をよくみていたね。ガンにかかっても生還してみせる ― そんなモチベーションや強い意志を僕に与えてくれる動画を求めていたんだ。でも当時、僕が望むような動画は多くなかったね。

 

■ 回復した後には、どんな仕事をしたの? でも、確かそれも辞めてしまったんだよね?

- 闘病生活を終えた僕は、救急救命士にもなったんだよ。人を助けたいと思ったから。でも、それよりも多くの人を助けたくなって、あの本『Step One』を書いたんだ。仕事に不満を抱えたまま何十年も無駄にせず、自分の好きな分野で活躍したい ― そんな人に勇気をもって一歩踏み出してほしいという思いからね。

ザックが執筆した書籍『Step One』
ザックが執筆した書籍『Step One』

 

■ どうして起業すると決めたの? ものすごく嬉しそうに見えたけれど、内心「大丈夫なの? うまく行くのかな」って私は少し心配したんだよ? ザックには不安はなかった? 緻密な計画はあったの?

- 正直言っちゃうと、仕事を辞めた時には当然収入もゼロになった。だから頼りは僕自身の労働倫理だけ。でも飛び出せば、パラシュートは開く。そう分かっていたんだ。稼ぐために必死に働く―それも覚悟していたしね。それで僕は自分でビジネスを立ち上げることにしたんだ。僕には、自分の仕事をしっかりこなさない人間は我慢できない。怠けた態度に我慢ならないんだ。そういう態度の人間を見て放置できる男でもない。上司の仕事ぶりが酷すぎて、CEOに手紙を書いたこともあるんだ。その時はそれでクビになったけど、ちっとも気にならなかった。いつかは自分のビジネスを展開するってもう決めていたから、心配もしていなかったよ。

 

■ ザックに、生きていく上でのモットーってある?

- すごくたくさんあるよ。その中でも心に刻んでいるのは、これ。「死が目前に迫って後悔するのは、自分が“やらなかった”こと。思い切ってトライした事なら後悔なんてしない」ってことさ。僕はありとあらゆる事に挑戦したい。自分の命が尽きるとき、自分自身にこう言ってあげたいんだ。「僕はしっかりと生きたんだ」って。

 

■ ザックにとって、人生で一番大事な物って何? 最大の目標とか定めてるの?

- 一番大事に思っているのは、人だね。自分の人生を生かして、人のためになることがしたい。そうすれば人生は無駄にならないから。一番でっかい夢? それは今やっているマーケティングの仕事を大きくすることだね。そして自分の家を持ちたいな。小さい家をあちこちにね。

 

■ ガンを患う家族がいる人には、どんな言葉をかけたいと思う?

- 僕の場合、家族には「とにかく強くいてほしい」と感じた。精神力や強さ―これに尽きるね。患者の家族という立場の人も本当に辛いと思う。でも患者である人を前に、どうか泣かないであげてほしい。一緒にいるときは、ハッピーな顔で過ごしてあげるのが一番だと思うんだ。一緒に笑って、愛情を注いであげてほしい。もし末期で手の施しようがないのなら、どうか最高の時間が過ごせるようにしてあげて。

 

■ ガンと闘っている人たちに言いたいことはある?

- うん、僕の話をしっかり聞いて。僕は読者の皆さんのことは知らないし、今後、出会う機会はないのかもしれない。でも今後起こるかもしれないこと、起こらないかもしれないことに、どうか怯えないで。今、その瞬間を思い切り楽しんでほしい。あらゆる物、それに周りの人たちを大事にね。もしガンを克服したら、自分より恵まれない人にどうか手をさしのばしてあげてほしい。もし末期と宣告されていても、どうか恐れないで。もし君がガンを克服した人であれば、覚えておいて。人生を絶対に無駄にしちゃダメだよ。

 

■ ガンを患っていた頃の自分に声をかけられるとしたら、なんて言う?

- 「この経験すらも楽しめ! 良い人生が待ってる。お前はたくさんの人を助けんるんだ! 死ぬ事なんて心配するな。人間はいつか死んでしまうけれど、そんなのはまだ先の話さ!」こんな感じかな。

 

■ ザックは多分気づいていないと思うけど、ザックが笑うとみんなが笑っちゃうよね。もうザックのハッピーな状態は「伝染する」って感じだよ。子供時代からそういう明るい性格だったの? 一番ザックに影響を与えたのって、誰?

- 子どものときから、いっつもニコニコ笑ってたね。これといったお手本になるような人は多くはいなかったけどね。だから色んな映画を観て、素晴らしいキャラクターに憧れてお手本にしたものさ。

 

■ あとザックの本、すごく良かったよ。特に「ネガティブな失敗なんてない。失敗を経て前に進むんだ」って部分に勇気を貰えたな。ザックのような模範がいることに感謝している人、絶対に多いと思うよ。ザックはひょうきんだし、仕事漬けじゃなく楽しむ時はしっかり楽しむタイプだもんね。私もすごくザックにインスパイアされて、前の仕事は辞めちゃった。本当に尊敬できる人とだけ働きたいと思ったから。有難う、ザック。

- どういたしまして! でもマジでウケるな。実は君だけじゃないんだ。すごく多くの人から連絡を貰って、「ザックの本を読んで仕事を辞めた!」って言われたんだ。あと、親友である君にはこう言いたい。失敗する価値はあるってこと。だから僕は失敗なんてちっともこわくない。成功につながるプロセスだと思っているからさ。人生から学べることは実に多いけれど、失敗から学べる事だって多いんだ。トップにのしあがるまで、失敗は繰り返したらいいってことだよ。

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~インタビューを終えて~

「今、アメリカは午前4時。車の中でドーナツ食ってるんだぜ、良いだろ、わははは! じゃあな~!」

それだけを言うために、ザックは電話をかけてくることがある。これは筆者が甘党だと知っているからで、小学生のようなザックに呆れつつ思わずプッと噴出してしまう。ザックは筆者が知る誰とも違う。いきなりのガン宣告、それに続き死を意識し落ち込み、悩み、苦しみ、それでも這い上がった彼は「怖いモノ」なしで大胆極まりない。常に忙しすぎる彼の様子に時々ふと「生き急いでいるんじゃないか」と不安になるが、若くしてガンを患い、友人の生と死に向き合い、命がいかに尊くもはかないものかを思い知ったザックだけに、それは仕方ないことなのかもしれない。好きなことをして稼ぎ、豪快に笑って、後悔のない生き方をしたい。それが「亡くなった友のため」でもある事も筆者はよく分かっている。難治とされる病気から見事に回復したザックは、今日も一度しかない人生で勝者になるべく懸命に働いている。午前4時―車を停め薄暗い中でドーナツを頬張っていたザックは、仕事帰りだったに違いない。

 

ザックが今から1年ほど前にYouTubeに投稿したこのメッセージムービー。極めて静かな語調ではあるが、20代前半にしてたちの悪いガンを宣告されてしまった若者の苦悩が、本音そのままにぶつけられている。「悪性黒色腫(メラノーマ)」という診断名にどれほど打ちのめされ、人生の計画が根本から狂い、途方に暮れてしまったことか。なんで俺はそんな不運なクジを引いてしまったのだろう、そう落ち込むことも多々あったに違いない。ザックの不安、恐怖、そして悲しみは想像するだけで目頭が熱くなる。

 

所どころ胸で大きく息をし、丁寧にひとつずつ言葉を選びながら語るザック。ガンの再発の可能性もゼロではないのだろう。普段とてもユーモラスな彼だけに、長い沈黙と思わず涙がこぼれそうになる表情は見ていて本当に辛い。「軍で活躍したい。死ぬ日までずっと」と願う一方で、股のリンパ節にガンが転移してもはや歩けなくなるほど病状が進行し、ザックはなぜか突然「生きたい」という強い望みにかられるようになったという。なぜもっと小さなうちにガンを切除してもらわなかったのか。治療がかなり回り道となったことをどれほど悔いたであろうか。迷うことなく最初から切除手術をお願いしておけばよかったものを…。メラノーマを克服しながらも、いまだ苦悩に満ちた表情をみせるザックにあなたは何を思うであろうか。

 

難治の病と闘う患者が、やはり深刻な病と闘う人々を励ましたいとして投稿するこうした動画。ザック自身もそれを見て大きく励まされてきたといい、「今度は自分が誰かに生きるモチベーションを与えてみたい」という思いからこの動画を投稿したそうだ。しかし友人のビル・マーフィーさんがそうであったように、ガンが進行して全身ががんに侵され、ついに力尽きてしまう方もいる。ガン患者にとって同胞の死ほど怖い、辛いものはないはずだ。だがザックは希望を捨てることなく、ポジティブな気持ちを維持するためにも日々仕事に没頭する。時が経つのを忘れるほど何かに夢中になっていたい、そんな気持ちが強いようだ。誰よりも1分、1時間という時間の貴重さを理解しているザックはまだ20代半ばである。ザックのような素晴らしい人間に、神様はこの先何十年も生きる時間を必ずや与えてあげてほしい。そうでなければ、この世の中はあまりにも不公平である。

動画:『YouTube』Zack Fair

(Kayla星谷/エトセトラ)

*なおザックの書籍『Step One』は日本のAmazonからも注文可能である。